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第52話 腹の虫
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「新木、どうだった?」
「あたしの方は駄目だったぜ」
「そうか。俺も同じだ」
俺は新木と落ち合い聞き込みの成果を伝え合う。
しかし新木は俺と同様に召喚術師の情報は何も得られなかったようだ。
「ところで二本松はどうしたんだ?」
「さあな、あたしが知るかよ。あんな奴この際ほうっておいてさっさと出発しようぜ」
と新木。
二本松と離れることが出来て嬉しいのだろう、いつもより機嫌がいい。
とそこへ、
「おーい。レイナくん待たせてごめんよー」
遠くの方から二本松の声がした。
振り向くと二本松が若い女性を数人引き連れてこっちに向かってきている。
それを見て新木が途端に顔をしかめた。
「やあ、待たせたね」
二本松は俺たちのもとにやってくると新木に向かってウインクしてみせる。
「全然待ってねぇよ」
「おい二本松、その人たちはなんなんだ? お前ちゃんと聞き込みしてたんだろうな」
「もちろんじゃないか。僕はこの女性たちに話を聞いていたんだよ」
俺の問いに二本松が答えた。
「それで、召喚術師については何か聞けたか?」
「ううん、全然」
「てめぇ、じゃあ一体何してやがったんだこの野郎っ」
新木が怒りをあらわにすると二本松がはべらしていた女性たちが「こわーい」とか「野蛮ねー」とか口々に言う。
それを聞いてさらに新木が激昂した。
「てめぇらどっか行きやがれっ。ぶっ飛ばすぞっ」
「おい新木、お前は少し落ち着け」
「これが落ち着いていられるかってんだっ」
怒りの矛先が俺に向きかけたその時、
『グオオオオオォォォォォーーーーーン!!』
地の底から這い出てくるような低いうめき声が村中に響き渡った。
「な、なんだ、この声っ!?」
「な、なあ、これって板橋区のダンジョンの扉の前で聞いた声と同じじゃないか!?」
「レディたち、この声の正体は一体なんなんだい?」
新木と俺が驚きの表情を浮かべる横で二本松が女性たちに訊ねる。
すると女性たちの内の一人が口を開いた。、
「あなたたち知らないの? これは魔王のお腹が鳴っている音よ」
「「「魔王!?」」」
これにはさすがの二本松も俺と新木とともに声を上げる。
「魔王って数百年前に勇者たちが倒したんじゃなかったのかい?」
問いかける二本松。
それを受け女性たちは、
「最近になって復活したらしいのよ」
「魔王はお腹が鳴るとそれを合図にしたように近隣の町や村を襲って人間を食べるの」
「怖いわ、わたし」
「この村は大丈夫かしら」
とおのおの口にした。
「ふふふ、それは大丈夫だよ。なぜなら魔王が来ても僕が君たちを守ってあげるからね」
キザなセリフを吐く二本松をよそに、
「魔王が復活しただって……」
「マジかよ……」
俺と新木は顔を見合わせつぶやいた。
☆ ☆ ☆
その後、急いで村を出た俺たちは魔王のお腹の音の発生源へと駆け出す。
さすがに魔王が復活しているのを放ったまま、もとの世界に帰るわけにはいかない。
俺たち三人は同じ思いで召喚術師探しを一旦やめて、魔王討伐の旅を再開することにしたのだった。
「あたしの方は駄目だったぜ」
「そうか。俺も同じだ」
俺は新木と落ち合い聞き込みの成果を伝え合う。
しかし新木は俺と同様に召喚術師の情報は何も得られなかったようだ。
「ところで二本松はどうしたんだ?」
「さあな、あたしが知るかよ。あんな奴この際ほうっておいてさっさと出発しようぜ」
と新木。
二本松と離れることが出来て嬉しいのだろう、いつもより機嫌がいい。
とそこへ、
「おーい。レイナくん待たせてごめんよー」
遠くの方から二本松の声がした。
振り向くと二本松が若い女性を数人引き連れてこっちに向かってきている。
それを見て新木が途端に顔をしかめた。
「やあ、待たせたね」
二本松は俺たちのもとにやってくると新木に向かってウインクしてみせる。
「全然待ってねぇよ」
「おい二本松、その人たちはなんなんだ? お前ちゃんと聞き込みしてたんだろうな」
「もちろんじゃないか。僕はこの女性たちに話を聞いていたんだよ」
俺の問いに二本松が答えた。
「それで、召喚術師については何か聞けたか?」
「ううん、全然」
「てめぇ、じゃあ一体何してやがったんだこの野郎っ」
新木が怒りをあらわにすると二本松がはべらしていた女性たちが「こわーい」とか「野蛮ねー」とか口々に言う。
それを聞いてさらに新木が激昂した。
「てめぇらどっか行きやがれっ。ぶっ飛ばすぞっ」
「おい新木、お前は少し落ち着け」
「これが落ち着いていられるかってんだっ」
怒りの矛先が俺に向きかけたその時、
『グオオオオオォォォォォーーーーーン!!』
地の底から這い出てくるような低いうめき声が村中に響き渡った。
「な、なんだ、この声っ!?」
「な、なあ、これって板橋区のダンジョンの扉の前で聞いた声と同じじゃないか!?」
「レディたち、この声の正体は一体なんなんだい?」
新木と俺が驚きの表情を浮かべる横で二本松が女性たちに訊ねる。
すると女性たちの内の一人が口を開いた。、
「あなたたち知らないの? これは魔王のお腹が鳴っている音よ」
「「「魔王!?」」」
これにはさすがの二本松も俺と新木とともに声を上げる。
「魔王って数百年前に勇者たちが倒したんじゃなかったのかい?」
問いかける二本松。
それを受け女性たちは、
「最近になって復活したらしいのよ」
「魔王はお腹が鳴るとそれを合図にしたように近隣の町や村を襲って人間を食べるの」
「怖いわ、わたし」
「この村は大丈夫かしら」
とおのおの口にした。
「ふふふ、それは大丈夫だよ。なぜなら魔王が来ても僕が君たちを守ってあげるからね」
キザなセリフを吐く二本松をよそに、
「魔王が復活しただって……」
「マジかよ……」
俺と新木は顔を見合わせつぶやいた。
☆ ☆ ☆
その後、急いで村を出た俺たちは魔王のお腹の音の発生源へと駆け出す。
さすがに魔王が復活しているのを放ったまま、もとの世界に帰るわけにはいかない。
俺たち三人は同じ思いで召喚術師探しを一旦やめて、魔王討伐の旅を再開することにしたのだった。
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