勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

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第27話 ユリジウム鉱石

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「あ、まいったな……」

俺はギルドを出てすぐに立ち止まる。

大魔法導士の称号を受け取った時に着ていたスーツをジョパン城での面接に着ていこうと思っていたのだが、よく考えるとその時のスーツは故郷の村に置いてあるのだった。

親にも親戚にも会わす顔がないっていうのに故郷の村になんて帰れるわけがない。
かといってスーツを買おうにもお金はまったくない。

「うーん……もう一つの方の依頼を先にこなしてスーツの代金を稼ぐしかないか」

俺はギルドに逆戻りすると、ゴビ地区のユバール山脈にあるユリジウム鉱石を三キログラムとってきてほしいという依頼を引き受けることにした。


「頑張ってくださいね~」
手を振るコロンに見送られながらギルドをあとにすると早速ヘブンズドアでユバール山脈へと飛んだ。

ヘブンズドアは訪れたことのある土地にしかワープ出来ないがユバール山脈には魔王退治の旅の道中リックの剣を強化するために立ち寄ったことがある。
こういう時はリックたちと世界中を旅していてよかったと心から思う。

「到着っと」
大きい扉を通り過ぎた先は赤土が広がるユバール山脈の中腹だった。
木々は少なく山肌があらわになっているのがユバール山脈の特徴だが前に来た時よりも山肌がさらに露出している気がする。

「ユリジウム鉱石だったな。真っ黒だからわかるってコロンは言ってたけど……」
辺りを見回すがユバール山脈は一面赤褐色で覆われていた。

「真っ黒、真っ黒……」
俺は真っ黒というヒントをもとにユリジウム鉱石を探す。

しかし一時間ほどあちこち歩きまわってみたもののそれらしい鉱石をみつけることが出来ないでいた。
さすがにちょっと疲れたので、
「スカイハイ!」
と唱えて俺はふわっと空に舞い上がった。
今度は上空から探してみようということだ。

心地いい風を体に感じつつ地上を空から見下ろす。
ユバール山脈は広いので時間をかけて丁寧に探した。

すると山肌に一軒の小屋を発見した。

「あ。あれって確か……」

俺はひゅーんと小屋に向かっていき入り口の前で下りる。

「やっぱりだ」

見覚えのある建物を眺める。
ここは二、三年前にリックの剣を鍛えてくれたエスカンゼさんという鍛冶職人の家だ。
前に見た時より多少ぼろくなってはいるが間違いない。

鍛冶職人なら鉱石のことにも詳しいかな……?
俺は訪ねてみることにした。

「すいませーん! エスカンゼさん、いますかー!」
ドアをノックしながら名前を呼ぶ。
俺のこと覚えててくれてるといいけど。

その時、ガチャリと音がした。
そしてゆっくりとドアが開くとほんの少しの隙間からいかつい顔を覗かせる中年男性。
「……何の用だ?」
低い声で訊いてくる。
警戒心の強いところは相変わらずだな。

「あのう、俺のこと覚えてますか? 何年か前に勇者の剣を鍛えてもらった……リックの仲間のスタンスです。あ、じゃなくてクロードです」
「……クロード。ああ、覚えてるよ」
ぎょろっとした目を俺に向けるエスカンゼさん。

「本当ですか? よかった」
「……こんなところに滅多に人は来ないからな。それでおれに用か?」
「悪いんですけどとりあえずもうちょっとドア開けてもらえませんか? 話しづらいんで……」
俺がそう言うとエスカンゼさんは無言でドアを開けてくれた。

「……」
エスカンゼさんが家の中に入っていく。
俺も入っていいのかな?

少し躊躇したがエスカンゼさんの後に続いて俺も家に上がらせてもらった。


「……飲め」
「あ、どうも」
エスカンゼさんに出されたお茶を俺は一口飲んだ。めちゃくちゃ熱い。

「……また剣を鍛えに来たのか?」
独り言のような小さな声でぼそっと話すエスカンゼさん。

「いえ、そうではないんです」

俺は湯飲みをテーブルに置き、
「実はこの辺りにあるユリジウム鉱石というものを探しに来たんですけどなかなかみつからなくて……」
エスカンゼさんの顔を見た。

「……ユリジウムか。そんなもんいくらでもあるだろう」
「いや、どこを見ても赤一色で真っ黒い鉱石なんてないんですけど……」
「……何言ってるんだお前。赤土の下は全部ユリジウムだぞ」
「え?」


俺はエスカンゼさんと家の外に出ると地面をみつめた。
指を差し、
「この下にユリジウム鉱石があるんですか?」
確認する。
「……ああ」

地面の中か……。
だったらアースクエイクが使えそうだな。

俺は地面にしゃがみ込むと手を押し当てた。
そして呪文を唱えようとしたその時、
「……おい待て」
エスカンゼさんに止められる。

「はい? なんですか?」
「……お前は確か魔法使いだったな」
「そうですけど」
それも覚えていてくれたのか。
まあパーティーメンバー四人中三人が魔法使いだったからな。当然と言えば当然か。

「……今、魔法を使おうとしただろう」
「ええまあ」
「……ここら一帯は地盤が弱い。だから魔法は使うな、こいつを使え」
そう言うと持っていたスコップを差し出してきた。

「あ……はい。わかりました」
俺は素直にそれを受け取った。
エスカンゼさんが言うのだから魔法は使わない方がいいのだろう。


それからエスカンゼさんが見守る前で俺は懸命に土を掘った。
三十センチほど掘るとガン! という音と同時に手に強い衝撃が伝わる。

「……今度はこれを使え」
いつの間に持っていたのかエスカンゼさんはつるはしを俺に渡してきた。

俺はスコップからつるはしに持ち替えさらに掘り進めた。

そして――

「……そいつがユリジウムだ。やったな」
「は、はい」

くたくたになりながらも俺は見事ユリジウム鉱石を掘り出したのだった。
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