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第45話 ズースへの旅路
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「じゃあ行きましょうか、ジュエル王女」
「はい。お願いいたします」
「ヘブンズドア!」
俺はズースという町には行ったことがないので、とりあえずヘブンズドアでゴッサム城へとワープすることにした。
そこからズースまでは馬車で向かう。
俺だけなら空を飛んでいってもいいのだがジュエル王女がいるためそういうわけにもいかない。
ヘブンズドアで出した大きな扉をくぐると以前訪れたゴッサム城のすぐ近くに出た。
俺はゴッサム城を見上げながら衛兵としてゴッサム城で働くデボラさんの息子のゼットのことを思い出す。
あいつ、元気でやってるかなぁ。
「スタンス様どうかされましたか?」
「いや、なんでもないです。行きましょう」
城下町に移動して馬車に乗り込むと俺たちはズースへと出発した。
馬車の窓から見える景色は辺り一面草原で心地よい風が顔に当たる。
「風が気持ちいいですね、スタンス様」
「そうですね」
ヒヒーン!!
すると突然前を走っていた馬がいなないた。
馬車が急ブレーキをかけて止まる。
「きゃあっ」
「ぅおっと……」
前につんのめりそうになったジュエル王女を手で支える。
「あ、ありがとうございます」
「いえ……それより何があったんだろう?」
俺は馬車の窓から外を確認した。
だが何も見えない。
「ちょっと降りてきます」
そう言うと俺は馬車を降りて前方に回った。
御者さんに話しかける。
「何かありましたか?」
「は、はいっ。い、今そこにモンスターが現れて……」
と御者さんが前を指差した。
「モンスター!?」
俺は前を確認するがそれらしいものはいない。
御者さんを見上げ、
「いませんけど?」
「い、い、いますって。さっき見たんですからっ」
「でもどこにも……」
そう言いながらもう一度見返すと馬の足元に確かにモンスターがいた。
「あっ、いました」
そこには小さくて青い色をした可愛らしいモンスターがいてプルプル体を震わせていた。
「なんだ……スライムか」
御者さんがおびえていたからてっきりもっと凶悪そうなモンスターかと内心ビビッていたが拍子抜けだ。
「何かいたのですか?」
いつの間にか馬車から降りていたジュエル王女が訊いてくる。
「あ、はい。モンスターです、といっても全然怖がる必要ありませんけど。なんせスライムですから」
「まあスライムっ。わたくしも見てもよろしいですか?」
ジュエル王女は珍しく興奮した様子を見せた。
「別にいいですけど……ほら、馬の足元に」
「わあっ、可愛いらしいですねぇ」
言いながらスライムに無警戒に近付いていく。
「いくらスライムでもあまり近付きすぎると攻撃されますよ」と言おうとした時だった。
『い、いじめないでっ』
どこからか中性的な声がした。
俺は辺りを見回すが周りは緑ばかりで人の気配はない。
「スタンス様、スタンス様」
「はい、なんですか?」
ジュエル王女に呼ばれ振り返る。
と、
「さきほどの声はこのスライムさんのようです」
ジュエル王女はスライムを抱きかかえるとそう言った。
「はい。お願いいたします」
「ヘブンズドア!」
俺はズースという町には行ったことがないので、とりあえずヘブンズドアでゴッサム城へとワープすることにした。
そこからズースまでは馬車で向かう。
俺だけなら空を飛んでいってもいいのだがジュエル王女がいるためそういうわけにもいかない。
ヘブンズドアで出した大きな扉をくぐると以前訪れたゴッサム城のすぐ近くに出た。
俺はゴッサム城を見上げながら衛兵としてゴッサム城で働くデボラさんの息子のゼットのことを思い出す。
あいつ、元気でやってるかなぁ。
「スタンス様どうかされましたか?」
「いや、なんでもないです。行きましょう」
城下町に移動して馬車に乗り込むと俺たちはズースへと出発した。
馬車の窓から見える景色は辺り一面草原で心地よい風が顔に当たる。
「風が気持ちいいですね、スタンス様」
「そうですね」
ヒヒーン!!
すると突然前を走っていた馬がいなないた。
馬車が急ブレーキをかけて止まる。
「きゃあっ」
「ぅおっと……」
前につんのめりそうになったジュエル王女を手で支える。
「あ、ありがとうございます」
「いえ……それより何があったんだろう?」
俺は馬車の窓から外を確認した。
だが何も見えない。
「ちょっと降りてきます」
そう言うと俺は馬車を降りて前方に回った。
御者さんに話しかける。
「何かありましたか?」
「は、はいっ。い、今そこにモンスターが現れて……」
と御者さんが前を指差した。
「モンスター!?」
俺は前を確認するがそれらしいものはいない。
御者さんを見上げ、
「いませんけど?」
「い、い、いますって。さっき見たんですからっ」
「でもどこにも……」
そう言いながらもう一度見返すと馬の足元に確かにモンスターがいた。
「あっ、いました」
そこには小さくて青い色をした可愛らしいモンスターがいてプルプル体を震わせていた。
「なんだ……スライムか」
御者さんがおびえていたからてっきりもっと凶悪そうなモンスターかと内心ビビッていたが拍子抜けだ。
「何かいたのですか?」
いつの間にか馬車から降りていたジュエル王女が訊いてくる。
「あ、はい。モンスターです、といっても全然怖がる必要ありませんけど。なんせスライムですから」
「まあスライムっ。わたくしも見てもよろしいですか?」
ジュエル王女は珍しく興奮した様子を見せた。
「別にいいですけど……ほら、馬の足元に」
「わあっ、可愛いらしいですねぇ」
言いながらスライムに無警戒に近付いていく。
「いくらスライムでもあまり近付きすぎると攻撃されますよ」と言おうとした時だった。
『い、いじめないでっ』
どこからか中性的な声がした。
俺は辺りを見回すが周りは緑ばかりで人の気配はない。
「スタンス様、スタンス様」
「はい、なんですか?」
ジュエル王女に呼ばれ振り返る。
と、
「さきほどの声はこのスライムさんのようです」
ジュエル王女はスライムを抱きかかえるとそう言った。
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