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第52話 プルセラ王女の好きな人
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朝ご飯を済ませると、
「フローラ、後片付けは俺がやっておくからいいぞ」
「本当ですか、ありがとうございます。じゃあ私行ってきますね」
パン屋に働きに行くフローラを見送ってから皿洗いをする。
スライムがその様子をうきうきしながら横でみつめている。
やはりジョパン城に行けるのがかなり嬉しいらしい。
スライムの視線を感じながら後片付けを終えた俺はジュエル王女とスライムを連れ家を出る。
「ヘブンズドア!」
出現した大きな扉をくぐりジョパン城の中庭へと移動した。
「ありがとうございました、スタンス様」
『うわあ、ここがジョパン城なんだね』
スライムはジョパン城を見上げる。その大きさと豪華さに圧倒されていた。
「記念式典は一時間後からですのでわたくしはお城でドレスに着替えてきたいと思います」
「そうですか。記念式典て何時ごろ終わりますか? 迎えに来ますよ」
「すみません、スタンス様。大変ありがたいのですが式典の後パーティーが開かれるのでそちらにも顔を出そうと思っていますから何時になるかわからないのです。ですからわたくしは馬車で戻りますのでスタンス様はご自分のしたいことをなさってください」
ジュエルは申し訳なさそうに言った。
そっか、迎えに来なくていいなら今日は一日家で寝てるかなぁ……なんてたるんだことを考えていると、
「おーい姉さん、スタンス!」
遠くから俺たちを呼ぶ声がした。
声のした方を振り向くとプルセラ王女が大きく手を振りながらこっちに走ってくる。
ヒールの高い靴を履いているので少しぎこちない様子だ。
目の前まで来ると、
「久しぶりだなスタンス。なんだ姉さん、まだドレスに着替えてないのか?」
プルセラ王女は口を開いた。
当のプルセラ王女は真っ赤なドレスを身に纏っている。
「これから着替えようと思っていたところよ。プルセラは赤いドレスにしたのね、よく似合ってるわ。これなら男性が放っておかないわね」
「へ、変なこと言うなよ姉さん。わ、私は別にそんな……」
と頬を赤く染めるプルセラ王女。
「なんかプルセラ王女、女性っぽいですね」
俺は何気なく口にした。
「それはどういう意味だ、スタンス。私は正真正銘女だぞっ。それともお前の目には私が男に見えるのか? うん?」
プルセラ王女はぐっと距離を詰めてきた。
「いや、そういうことではなく――」
『スタンスはきみのことをほめたんだよっ』
その時ジュエル王女に抱きかかえられていたスライムが声を上げた。
「わっ、びっくりした……なんなんだこいつ?」
『やめてったら、くすぐったいよ』
眉をひそめながらもスライムをつんつんつつくプルセラ王女。
『ぼくはスライムだよっ。今はジュエルたちと一緒に暮らしてるんだ、よろしくねプルセラ』
「スライムって喋るのか?」
「いえ、こいつが特別なだけです」
普通のスライムはもちろん喋れたりはしない。
「こいつ名前はなんていうんだ?」
「? スライムさんはスライムさんよ」
「それは種族の名前だろ姉さん。そうじゃなくってこいつ自身の名前はなんていうんだよ」
プルセラ王女はスライムを指差す。
『ぼくの名前はスライムだよ』
「そうよ。何言ってるのプルセラ」
「そうなのか? まあ私には関係ないからどうでもいいけどさ。それにしても姉さんも変わった生き物飼ってるんだな」
「プルセラそれは違うわ。スライムさんはわたくしのお友達よ。ね? スライムさん」
『うんっ。ぼくたち友達。プルセラもぼくと仲良くしてね』
「わかったわかった」
とその時、
「ごきげんよう、ジュエル王女、プルセラ王女」
甘いマスクの爽やかな男が近づいてきた。
白い歯をきらっと光らせる。
「あら、カルツェッリさん。ごきげんよう」
「……カ、カルツェッリ。よ、よお」
ジュエル王女とプルセラ王女は返事をする。
「プルセラ王女、ドレスがよくお似合いでとてもおきれいですよ。まるで草原に咲く一輪の花のようです」
カルツェッリと呼ばれた男は歯の浮くセリフを恥ずかしげもなく口にする。
俺はお世辞でもそんなこと言えない。言ったら顔が真っ赤になってしまうだろう。
「そ、そ、そうか。ま、まあ私ならどんなドレスでも着こなしてみせるがな」
ほめられてまんざらでもない様子のプルセラ王女。
またも頬が赤く染まる。耳まで赤くなっている。
「プルセラ王女、よければ僕にエスコートさせていただけませんか?」
プルセラ王女に手を差し出すカルツェッリ。
プルセラ王女は「……っ」と逡巡したのちゆっくりとカルツェッリの手に自分の手を添えた。
「それではまいりましょうか。では失礼いたしますジュエル王女」
そう言うとカルツェッリはプルセラ王女を連れて歩いていってしまった。
そこで俺はハッと思い返す。
そういえばプルセラ王女が貴族の男に一目惚れしたって話を前に聞いたぞ、と。
「あの、ジュエル王女。もしかして今の男が……?」
「はい、プルセラが恋をしている殿方です」
やっぱりか。
「カルツェッリさんといって大貴族シュゴール家のご長男でいらっしゃいます」
「へー、そうなんですか」
大貴族か……さぞ裕福な生活をしているんだろうな。
「しかしシュゴール家は……いえ、やはりなんでもありません」
「?」
「スタンス様に話すようなことではありませんでした。お忘れください」
「はあ……」
なんて言おうとしたんだろう。
途中でやめられると気になるじゃないか。
「ではわたくしは着替えてまいりますのでスタンス様は先におかえりになっていてください」
一礼してジュエル王女はスライムを連れてお城の方に向かって歩いていく。
俺は手をかざし、
「ヘブンズ……って帰っても寝るだけなんだよなぁ……」
つぶやきながら周りを見渡した。
お城の中庭には屋台が沢山出ていた。いいにおいが鼻孔をくすぐる。
「お金もあることだしちょっと遊んでいくかな」
俺はそう思い立ち村に帰るのを遅らせ少し楽しんでいくことにした。
「フローラ、後片付けは俺がやっておくからいいぞ」
「本当ですか、ありがとうございます。じゃあ私行ってきますね」
パン屋に働きに行くフローラを見送ってから皿洗いをする。
スライムがその様子をうきうきしながら横でみつめている。
やはりジョパン城に行けるのがかなり嬉しいらしい。
スライムの視線を感じながら後片付けを終えた俺はジュエル王女とスライムを連れ家を出る。
「ヘブンズドア!」
出現した大きな扉をくぐりジョパン城の中庭へと移動した。
「ありがとうございました、スタンス様」
『うわあ、ここがジョパン城なんだね』
スライムはジョパン城を見上げる。その大きさと豪華さに圧倒されていた。
「記念式典は一時間後からですのでわたくしはお城でドレスに着替えてきたいと思います」
「そうですか。記念式典て何時ごろ終わりますか? 迎えに来ますよ」
「すみません、スタンス様。大変ありがたいのですが式典の後パーティーが開かれるのでそちらにも顔を出そうと思っていますから何時になるかわからないのです。ですからわたくしは馬車で戻りますのでスタンス様はご自分のしたいことをなさってください」
ジュエルは申し訳なさそうに言った。
そっか、迎えに来なくていいなら今日は一日家で寝てるかなぁ……なんてたるんだことを考えていると、
「おーい姉さん、スタンス!」
遠くから俺たちを呼ぶ声がした。
声のした方を振り向くとプルセラ王女が大きく手を振りながらこっちに走ってくる。
ヒールの高い靴を履いているので少しぎこちない様子だ。
目の前まで来ると、
「久しぶりだなスタンス。なんだ姉さん、まだドレスに着替えてないのか?」
プルセラ王女は口を開いた。
当のプルセラ王女は真っ赤なドレスを身に纏っている。
「これから着替えようと思っていたところよ。プルセラは赤いドレスにしたのね、よく似合ってるわ。これなら男性が放っておかないわね」
「へ、変なこと言うなよ姉さん。わ、私は別にそんな……」
と頬を赤く染めるプルセラ王女。
「なんかプルセラ王女、女性っぽいですね」
俺は何気なく口にした。
「それはどういう意味だ、スタンス。私は正真正銘女だぞっ。それともお前の目には私が男に見えるのか? うん?」
プルセラ王女はぐっと距離を詰めてきた。
「いや、そういうことではなく――」
『スタンスはきみのことをほめたんだよっ』
その時ジュエル王女に抱きかかえられていたスライムが声を上げた。
「わっ、びっくりした……なんなんだこいつ?」
『やめてったら、くすぐったいよ』
眉をひそめながらもスライムをつんつんつつくプルセラ王女。
『ぼくはスライムだよっ。今はジュエルたちと一緒に暮らしてるんだ、よろしくねプルセラ』
「スライムって喋るのか?」
「いえ、こいつが特別なだけです」
普通のスライムはもちろん喋れたりはしない。
「こいつ名前はなんていうんだ?」
「? スライムさんはスライムさんよ」
「それは種族の名前だろ姉さん。そうじゃなくってこいつ自身の名前はなんていうんだよ」
プルセラ王女はスライムを指差す。
『ぼくの名前はスライムだよ』
「そうよ。何言ってるのプルセラ」
「そうなのか? まあ私には関係ないからどうでもいいけどさ。それにしても姉さんも変わった生き物飼ってるんだな」
「プルセラそれは違うわ。スライムさんはわたくしのお友達よ。ね? スライムさん」
『うんっ。ぼくたち友達。プルセラもぼくと仲良くしてね』
「わかったわかった」
とその時、
「ごきげんよう、ジュエル王女、プルセラ王女」
甘いマスクの爽やかな男が近づいてきた。
白い歯をきらっと光らせる。
「あら、カルツェッリさん。ごきげんよう」
「……カ、カルツェッリ。よ、よお」
ジュエル王女とプルセラ王女は返事をする。
「プルセラ王女、ドレスがよくお似合いでとてもおきれいですよ。まるで草原に咲く一輪の花のようです」
カルツェッリと呼ばれた男は歯の浮くセリフを恥ずかしげもなく口にする。
俺はお世辞でもそんなこと言えない。言ったら顔が真っ赤になってしまうだろう。
「そ、そ、そうか。ま、まあ私ならどんなドレスでも着こなしてみせるがな」
ほめられてまんざらでもない様子のプルセラ王女。
またも頬が赤く染まる。耳まで赤くなっている。
「プルセラ王女、よければ僕にエスコートさせていただけませんか?」
プルセラ王女に手を差し出すカルツェッリ。
プルセラ王女は「……っ」と逡巡したのちゆっくりとカルツェッリの手に自分の手を添えた。
「それではまいりましょうか。では失礼いたしますジュエル王女」
そう言うとカルツェッリはプルセラ王女を連れて歩いていってしまった。
そこで俺はハッと思い返す。
そういえばプルセラ王女が貴族の男に一目惚れしたって話を前に聞いたぞ、と。
「あの、ジュエル王女。もしかして今の男が……?」
「はい、プルセラが恋をしている殿方です」
やっぱりか。
「カルツェッリさんといって大貴族シュゴール家のご長男でいらっしゃいます」
「へー、そうなんですか」
大貴族か……さぞ裕福な生活をしているんだろうな。
「しかしシュゴール家は……いえ、やはりなんでもありません」
「?」
「スタンス様に話すようなことではありませんでした。お忘れください」
「はあ……」
なんて言おうとしたんだろう。
途中でやめられると気になるじゃないか。
「ではわたくしは着替えてまいりますのでスタンス様は先におかえりになっていてください」
一礼してジュエル王女はスライムを連れてお城の方に向かって歩いていく。
俺は手をかざし、
「ヘブンズ……って帰っても寝るだけなんだよなぁ……」
つぶやきながら周りを見渡した。
お城の中庭には屋台が沢山出ていた。いいにおいが鼻孔をくすぐる。
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もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
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