勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中

文字の大きさ
54 / 66

第54話 魔力測定マシン

しおりを挟む
「さあ、我こそはという挑戦者いませんか! 魔力を測るだけで金貨十枚ゲットできるチャンスですよ! そこのとんがり帽子をかぶった魔法使いっぽいお姉さんどうですか! やっていきませんか! こんな――」
「はいっ」
「おおーっと挑戦者です……って女の子でした……ねぇお嬢ちゃん、参加料かかるんだけど本当にやるのかな?」
「うん」
アイリーンはぴしっと手を上げている。

俺は「すいません、この子にやらせてあげてください。これ参加料です」と一枚の金貨を差し出した。

「おいおい、あんな小さい子にやらせんのかよ」
「金の無駄だぜ」
「ま、頑張れよ嬢ちゃん!」

マイクを持った男は金貨を受け取ると、
「娘さん想いのお父さんですね~、では早速お嬢ちゃんの魔力を測定しましょう!」
魔力測定マシンを起動させた。

ぐおんぐおんぐおんぐおん……と鳴り出す。

「お嬢ちゃんいいかな~、まずここに手を入れて……」
「うん」
アイリーンは言われた通りに魔力測定マシンに手を差し込んだ。

「それでお嬢ちゃんの今使える最高の魔法を撃ってみてくれるかな」
「いいの? 壊れない?」
「ふふっ大丈夫だよ、なにしろこのマシンは魔力500まで測れる特注品だからね!」

「嬢ちゃん壊すなよー!」
「はっはっは。手加減してやれー」
周りから声が飛ぶ。

次の瞬間空気が変わった。

アイリーンの体の周りを渦巻くように風が吹きすさぶ。
「「「うおっ!?」」」
ギャラリーたちはあまりの強風に目を覆う。

次の瞬間アイリーンは、
「トルネードウインド!」
と唱えた。

直後、魔力測定マシンが揺れる。


そして――
ぐおんぐおんぐおんぐおん……ピピー!

音を立てて魔力測定マシンがとまった。

「っ!?」
横のパネルに表示された数値を見てマイクを持った男が息をのむ。

「おい、いくつだったんだよ!」
「この子の魔力はっ」
「早く言えよっ」

さっきまで笑っていたギャラリーたちも興味津々だ。

「え、えー、こ、このお嬢ちゃんの魔力は274ですっ!」

「「「うおおーっ」」」
歓声が巻き起こる。

「マジかよっ」
「もうちょっとで300じゃねぇか」
「すげぇぞ嬢ちゃん!」

だが当の本人であるアイリーンは首をかしげていた。
そして俺のもとにとことこ戻ってくると一言「加減しすぎたかも」と俺に言った。

「え、お前もしかして手加減したのか?」
「うん。誰かが手加減してやれって言ってたから」
……マジか。
十歳にも満たないようなこいつが手加減して魔力274かよ。
うーん、末恐ろしい奴だ。

そんなことを考えながらアイリーンを見下ろしていると、
「お父さん、娘さんのリベンジをしてみませんか?」
マイクを持った男が俺に言ってきた。

「いや、俺は父親では――」
「いいぞ、やれやれっ」
「娘の仇をうってやれ!」
「逃げるな父ちゃん!」
「頑張れよー」

俺の言葉をかき消してギャラリーたちが勝手に盛り上がっている。

「さあ、皆さんが応援してますよ!」

気付けば周りのギャラリーたちの数はさっきより多くなっていた。

「ここで逃げたら男じゃない! お父さん失格だ! ですよねみなさんっ!」
「「「おおーっ!」」」
マイクを持った男がギャラリーたちをはやし立てる。
アイリーンまでも「やってみて」と俺のズボンのすそを引っ張ってくる始末。

……どうやら逃げ場はないらしい。

「さあ、娘さんのリベンジをしますかっ! それともしっぽを巻いて逃げますかっ!」
マイクを俺の顔に向けてくる男。
あおるのが上手い奴だ。
少しだけだがムカついてきたぞ。

「……やります。やりますけど一つだけいいですか?」
「なんでしょうか!」
「これ壊しても弁償しなくていいですよね?」
「……ぷっ、あっはっはっは! 皆さん聞きましたか? 何を言い出すかと思えば娘さんと同じようなことを言ってますよ!」
周りを囲むギャラリーたちもつられて笑っている。

「それで、まだ答えを聞いてませんけど弁償しなくてもいいんですか?」
「もちろんです! 安心してくださいこれはどうやっても壊れませんからっ!」
俺の胸をぽんぽんと叩いてくる。

よかった。
それを聞けて安心した。

ぐおんぐおんぐおんぐおん……。
マイクを持った男が魔力測定マシンを起動させた。

「では手を中に入れてください! はい、そしてあなたが使える最高の魔法を撃ってください!」

俺は手を入れて、そしてこう唱えた。

「エクスプロージョン!」

その刹那、魔力測定マシンが内部から大爆発を起こした。
粉々に飛び散る魔力測定マシンの破片。
残骸が辺りに散らばる。

「な、な、な、な、なっ……!?」
マイクを持った男は声にならない。
周りのギャラリーたちも開いた口がふさがらずただ唖然としていた。

俺は絶句しているマイクの男から金貨十枚を受け取るとアイリーンを連れ逃げるようにその場を離れたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...