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番外編1 幼き日の誓い
幼き日の誓い6
この時、ガーネットは子どもながらに愛の告白をするつもりだった。しかし、その小さく白い手を握った直後の事である。
「あらぁ~? こんなところにとってもいいカモがいたわぁ」
それは大人の女性の声だった。黒い鎧に身を包み、脇腹から血を流し、ガーネット達を視界に捕えて笑っている。
「だ、誰だお前はっ!?」
突如、薔薇園に潜入してきた怪しい女性を前に、ガーネットは初恋の子を守るように背中に隠して、相手を睨みつける。
「可愛い坊やだこと。必死にその子を守ろうとしているのね? ……ふぅん、その装飾からして王族に縁のある姫君かしら?」
「あなたは……もしやアルべインの手の者ですか?」
そう訊ねたのは、ガーネットの背に守られている子どもである。女は肯定するようににやりと笑った。
「頭が良いわねぇお姫様。王とモルドレット王子の暗殺は失敗したけど……あなたを人質にとれば逃げられそうね」
「むだです。私にはそんなかちありません」
「嘘をついても無駄よぉ。その指輪は王家の紋章が入った特注品……王族の証だってことぐらい知っているのよ」
女はそう言って右手を突きだした。
「さぁ、私といっしょにいらっしゃい? 可愛いお姫様」
ガーネットの後ろに立つその子は気丈に女性を睨んでいた。しかし、その体は恐怖から震えていた。ガーネットは安心させるようにその白く小さな手を握りしめた。
「っ……」
「大丈夫……君は必ず守る」
その子にだけ聞こえる小さな声で、ガーネットはそう囁く。本当はガーネットだって恐かった。彼女は敵軍の兵士で、大人だ。子どものガーネットに勝てる相手ではない。
でもガーネットの選択肢に逃げるという項目はなかった。『惚れた女は守れ』――父の言葉と、この子の存在が彼の気持ちを突き動かした。
「やめろ! この子には手を出すな」
「悪いけど坊やには用がないの――死んでもらえる?」
庇うように前に出たガーネットをみて、女性の顔から笑みが消えた。彼女の右脚から放たれた強烈な蹴りで、小さなガーネットの身体は花壇に飛ばされた。
「ガーネット!」
強烈な蹴りだったが、しかし彼は死んでいなかった。それどころか、大した傷も負っていない。彼が咄嗟に受け身をとったからだ。幼い頃より、父に教えてもらった護身術が役に立った。
「……ただのガキじゃなさそうね」
「っ……ガハッ!」
立ちあがろうとしていたガーネットの脇腹を、鎧の女は蹴りあげる。
ガーネットは血を吐き、その場に倒れこむ。女はその頭を容赦なく踏みつけた。
「ガーネット!」
「に……げろ……」
「え?」
「逃げろよ……早く……!」
「で、でも……」
ガーネットを見つめている小さな子は、震えていた。ガーネットは安心させるように笑顔を作る。
「大丈夫……君の事は絶対におれが守るから……」
「っ……!」
その子の瞳が潤んだ気がした。しかし、ガーネットは次の瞬間、激しい痛みに襲われて絶叫した。
「なにが守るよ。何も出来ないガキのくせに生意気な! 死ねっ!!」
ガーネットの胸部を踵で蹴飛ばした女が、トドメの一撃をガーネットに与えようとした時だ。
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