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番外編1 幼き日の誓い
幼き日の誓い7
「やめろ」
高く澄んだ、それでいて鋭い声だった。その声を発したのは小さな天使。ガーネットに守られていた子どもである。
「それ以上、ガーネットにふれるな。このおろかものが」
「なんですって? どいつもこいつも……生意気なっ!」
「危ないっ!」
女性の標的が、ガーネットからその子に変わった。ガーネットは咄嗟に庇おうとしたが、間に合わない。
女性の手には小さな刃物が握られていた。真っ直ぐ小さな身体に向かって行った凶器。しかし、その刃物は次の瞬間、まるで目に見えない風の刃に斬られたように粉々になった。
「なっ……!?」
ふわりと金色の髪が揺れた。服がはためく。まるで風を纏っているかのように。
「まさかこれは……『ウィング・ソード』!? なぜこんな高度な魔術をガキが使える!? しかも詠唱無しだと……そんなわけ、そんわけがないっ!!」
取り乱した鎧の女が腰にさげていた剣を抜き、本気で斬りかかる。しかし、凶器を向けられたその子に焦りは無かった。ただ静かな声で呟く。
「空をかけるほこり高きゆうしゃよ、われのねがいを聞き入れたまえ。おんそくの力をもって、てきをけちらせ『ジェットストリーム』!」
大きな爆発音と共に物凄い勢いで風が吹いた。あまりの衝撃にガーネットは目を瞑って頭を伏せた。爆発音が止み、目を開けるとそこに女の姿は無く辺りを見渡すと遥か向こうの城壁の前に気絶した女が倒れている。恐らく爆風によって突き飛ばされて壁に叩きつけられ意識を失ったのだろう。
「ガーネット! だいじょうぶ?」
「あ……あぁ。君こそ、平気?」
「うん。ごめんね! 本当にごめんね!」
「なんで君があやまるの?」
ガーネットは訳が解らなかった。寧ろ、ガーネットは助けられた方で、守ると言ったくせになにも出来なかったのだ。
「だ、だって……ガーネット、ひどいけが……っ」
血のついたガーネットの唇を取り出したハンカチで拭きながら、ついにその子は涙を流していた。先程まで毅然として敵に立ち向かっていた姿からは想像出来ないほど弱々しい姿。
『あぁ、泣かせてしまった』と哀しい気持ちになると同時に、『この子は人のために泣ける子なのだ』とガーネットは胸が熱くなった。
「こっちこそごめんね。君を守るつもりが……守られて、泣かして、情けないよな」
「そんなことないよ! とてもうれしかった……ガーネットがいたから初めてえいしょうまほうせいこうしたの。今まで一度もせいこうしたことなかったのに」
ふわりと笑う顔にガーネットは再び見惚れた。そして、ハンカチを持つ手を上から握りしめる。
「ガーネット……?」
「好きだ」
気づけばとても素直に口から出てしまっていた。驚いて目を見開いている相手に構わず、ガーネットは続けてこう言った。
「君が好きだ……一目惚れなんだ」
「わ、私は……っ!」
ガーネットの告白に対して、顔を真っ赤にしたその子が何かを言おうとした時だった。
周りががやがやと煩くなった。薔薇園に雪崩れこんできた兵士達。その中には、父オーランドの姿もあった。
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