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6章 リサイア大会 パートナー決め編
失った左腕
夏休みが明けて静かだった校舎は活気に満ち溢れていた。しかし、フェンにとって人の多い場所に居るのは大きなストレスだ。
来月から予選が始まるリサイア大会の話題で盛り上がる生徒達の合間を、目立たぬように通りすぎる。中にはフェンの姿に気づいて不機嫌そうな顔をした者も居たが、殆どの生徒は久々にあった友人達との会話に夢中で、フェンに気づかなかった。
本来なら今日は風紀委員の見廻りの仕事がある日だった。しかし、夏休み中にフェンのパートナーであるコウが大怪我を負ったため、リサイア大会までの一か月間、二人は書類仕事をする事になっていた。
元々身体を動かす事が好きなコウは『ストレス発散が出来なくて苛々する』と散々愚痴を零していたが、身体が本調子ではない事を自身が一番理解していたのだろう。結局、ガーネットの指示に従い毎日書類と睨めっこしている。
後輩のケイの稽古を見てから風紀室に来るというコウと別れて、先に仕事に向かったフェンだったが、部屋の扉を開けようとした時、中から人の話し声が聞こえて手を止めた。
本来なら立ち聞きをする性格ではないが、話しているのがどうも自分の話題のようで、思わず気配を消していた。これがもし、自分だけの話題だったら、避けるように立ち去っていたかもしれない。
しかし、中の人物――声からしてガーネットとシアンだろう。その二人の会話の中には、自分だけでなく、コウの名前まであがっていた。
そこで知らされた事実―――どうやらコウの左腕は、もう戻らないだろうという残酷な現実だった。
コウが夏休み中に負った怪我の原因は自分にある。コウの性格からして、フェンが罪悪感を抱く事は望んでいないだろう。
それでも―――もし、コウが自分と会わなければ、あんな酷い目にあう事は無かったのだと思うと、やるせなかった。
仕事を放り出す事は不本意だったが、あの空気の中、部屋に入る事は出来なかった。フェンは気づけは風紀室どころが校舎からも離れた林の奥に来ていた。
林の中にはとても大きな木がある。二股に分かれて、丁度そこに寝転がれるとても快適な昼寝場所。林の奥の目立たない場所だから、知っている人物は自分しかいなかった。
過去形なのは、半年前からそこを昼寝場所にしている人物がフェンの他にもう一人増えたからだ。
名前は知らない。でも、恐らく一年生だと思う。一人でいることを好むフェンは、学校の敷地内にいくつか自分のお気に入りの場所があった。人気の全くなく、快適な、心地よい場所。
どれも風紀の巡回中に見つけた場所で、フェン以外の人間は知らないと思っていた絶好の穴場だった。ところが、半年前ほどからその生徒に悉くフェンのお気に入りの場所を先取りされてしまう事態が相次いだのだ。
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