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6章 リサイア大会 パートナー決め編
光からの誘い
それにしても、本当に不思議な男だった。闇属性の自分が、こんなに誰かと会話が続いたのは初めてだった。
しかし、その原因をフェンはすぐに気づいてしまった。きっとこの少年は知らないのだ。
フェンが闇属性であることを――――。
「……お前、一年だよな」
「そうだけど、よくわかったな」
「……やはりそうか。知らないようだから言っておく。おれは―――闇属性だ」
属性を自ら伝えたのは、早い方が良いと思った。その方がこの少年も……そして恐らく自分にとっても、良いはずだと思っての選択だった。
きっと嫌悪に満ちた目でこちらを睨みつけて来るはず……そう身構えていたフェンだったが、しかし、その少年の反応は、フェンの予想を遥かに裏切った。
「あぁ、あんたのことは知ってるぜ。何せこの学校で一人しかいない闇属性なんだろ? それにほら、あんたの相棒の風紀委員ってあの金髪の鞭使いじゃん? あの人超目立つからなー。この学校で知らない人なんていないんじゃないか?」
あっけらかんとそう言う彼に、フェンはとても驚いた。フェンが闇属性だと知っていたと言う。なら何故彼は―――自分に嫌悪しないのだろう。
「……お前はおれが恐くないのか?」
「は?」
「闇属性だぞ? 普通は―――普通なら……憎み、嫌悪し、蔑みの目を向けるはずだ。それなのに……」
相棒のコウ以外の人間は、誰しもが自分に負の感情を向けて来た。打ち解けて来たと思っていた風紀委員達すら、時折り冷たい目をしてフェンを見る。全ての生徒が、いや、生徒だけじゃない……世界の全ての人間が。
皆が皆、闇属性を――――憎んでいる。しかし、この少年は違った。
「あー……そういやなんか色々大変らしいなお前。まっ、おれはそういうの、全然気にしないから。闇属性への興味はあるけど」
「興味?」
「うん。その魔物憑きっていうの。確か狼だったよな。フェンリルってアレだろ!? 邪神から産まれた怪物! かっけーよなぁ。Aランクの魔物なんて、どうやって手懐けたんだよ?」
「…………」
「な、なんだよ……もしかして怒ってる?」
「お前……変な奴だな」
「え? どこらへんが?」
誰も――――誰もそんな事は言わなかった。フェンの姿を見て『なんか色々大変らしいな』の一言で済ませる奴も。
誰もが畏怖し、憎悪する魔物憑きという現象に、興味を持つ人間も。
そして恐怖の対象でしかないはずの魔物を『かっこいい』なんて言う人間も。
「ふっ……あははははっ!! 本当に変わっているなお前」
突然笑いだしたフェンに、彼は怒るでも戸惑うでも無く驚いたように言った。
「……笑った顔初めて見た。あんたってそんな風に声を出して笑うんだな」
「あ、いや……こんなに笑ったのは初めてだ」
「ははっ、そっか」
フェンにつられるように笑顔を浮かべた少年。フェンは笑いすぎて流れた涙を拭いた。そして、人間とは笑いすぎると涙が出ると言う事も、今日初めて知った。
「あ、そういえば、あんたって先輩だったよな? もし、まだパートナー決まってなかったら、おれとペア戦出てくれない?」
「ペア戦に?」
思いがけない提案にフェンは吃驚して聞き返す。
「おれさー。この学校で友達って、三人しかいないのよ。でも、三人とも一年生なの。だから困ってたんだよね」
「いいのか?……おれとペアを組めば悪目立ちするぞ」
「元々おれクラスでも浮いてるし、おれのダチは、そういうの全然気にしないから。ただ、おれってE組でも底辺の落ちこぼれだからさ。あんたの足引っ張りまくっちゃうと思うんだけど、それでよければ」
「こちらとしても有り難い。おれも困っていたから」
闇属性のフェンとペアになりたいなんていう希有な人間は、この学校ではコウか彼しかいないだろう。差し出された手を握り、二人は握手を交わした。
「おれ、一年E組のトシキって言うんだ。よろしくな」
「二年のフェンだ。よろしく」
『みゃっみゃっ!』
笑顔で自己紹介をする二人に『仲間外れにしないで』とばかりにすり寄ってくるミュウ。
それは、闇属性と光属性の前代未聞のペアが成立した瞬間であった――――。
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