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二章 休息とそれぞれの出会い
真夜中の密会
しおりを挟むその日の真夜中。イーヴルは主人が寝たのを確認して、そっとその場を離れた。
目指したのは寮の裏庭。そこにはすでに呼び出した人物がいた。
「御無沙汰しておりますイオ様」
「やだなぁ、この間会ったばっかりじゃない」
「あの時は一目見ただけでしたので……それにお互い人間の姿になって会うのは久しぶりでございましょう?」
「そういえば……そうだね。君と昔、父様に内緒で人間界に遊びに行った時以来だ」
イーヴルが指摘するとイオは笑って肯定した。
竜であるイーヴルは今180cmくらいの美青年に姿を変えていた。人間と結ばれて人間界にいる精霊の殆どは、この姿で暮らしている。
イーヴルはまだアレンの前でこの姿を見せた事はない。今回、イーヴルが姿を変えたのは本来の姿だと誰かに見られる可能性があったからだ。
大きい竜の身体より、人の身体の方が闇に隠れやすい。イーヴルがわざわざ主人に内緒でイオに会いに来たのには当然、それなりの理由があった。
「話したいことは山ほどあるけれど、君がわざわざ僕を呼び出したのは理由があるんでしょ?」
「はい……実は昼間。寮長のディーンと名乗る男に会いました」
「え!? あの人に?」
「やはりご存知でしたか……」
「う……うん。まぁ、一瞬しか会ってないけどね」
曖昧に返事をするイオに、イーヴルは険しい顔をして訊ねた。
「その人の前で、ウンディーネを召喚しましたか?」
「ううん。していないよ」
「しかし、あの者はウンディーネ使いを探していました。私の知る限りウンディーネを使役する者がイオ様しか思いつかなかった故に、今回お越しいただいたのですが……」
「あー……確かにウンディーネを召喚したのは僕だよ。でもおかしいな。風紀でないあの人が、なんでウンディーネの事を知っているんだろう?」
「詳しい事情を教えてくださいますか?」
イオはアーサーやトシキの事は内緒にして、これまでのことをイーヴルに話した。
「……そういう事でしたか。イオ様、昼間の時、寮長の隣には風紀委員長の姿もございました。情報を共有した可能性があります」
「風紀と寮はあまり仲が良くないと聞いた事があるけど……」
「普段はライバル同士でも、この緊急事態です。一時的に手を組んだと見るのが妥当かと」
「犯人像がまったく掴めないから、先に何か事情を知ってそうな僕を探してるってことかな?」
「恐らくは」
「でも、僕らだってオディアおじいちゃんの教えてくれた情報以外の事は知らないのに……」
「でも、それをあの者達は知りません。犯人とイオ様との関係を探るつもりなのでしょう」
「はぁ……やっぱり嫌な予感って当たるんだなぁ。どうしよう」
「全く魔力の無いあなたが、ウンディーネを召喚したとは誰も思わないでしょう。ですが油断は禁物です。今後目立つ行動は慎むようにしてください」
「注意する。どうもありがとう、イーヴル」
イオは忠告しに来てくれたイーヴルに感謝を述べた。
「ところで、竜族って一途なんだって?」
「は?」
それまで険しい表情を浮かべていたイーヴルの目が点になった。
「君の将来の伴侶、今度紹介してね?」
「なっ!? あ、あれはまだ子どもでして……っ!」
「ってことは、大人になったら貰う予定なの?」
「っ~……! 誰じゃぁ!? イオ様に余計な事を吹き込んだのは!」
動揺した後、顔を真っ赤にして怒声を響かしたイーヴルに、盗み聞きしていた森の妖精達は逃げるやら笑うやら。
一人、イオだけが首を傾げて『なんだ? 違ったの?』と戸惑ったようにイーヴル達を見ていた。
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