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⑮
春斗と再会したのは、事件があった日から五日も経った後だった。
春斗のヒートの症状が収まるまで警察の事情聴取も、家族への説明も、待たなければならなかったし、被害者当人である彼にはヒートから回復した後もやらなければならないことがあまりにも多すぎたのだ。
夏樹ですら、警察に事情を説明しに、何度も何度も警察署に行っていたので、春斗はその何倍も時間がかかった。
そのため、再会した時にはすっかりお互いに疲労し、疲れた顔になっていた。
「久しぶりだね、夏樹。今回は色々と迷惑をかけてごめんね?」
「今更だろ謝んな。今回の件はお前は悪くないし。警察での事情聴取で確かに疲れてるけど」
「何度も同じこと聞かれるもんね……」
「そうそう。何回自分の下着を見たことか」
夏樹がそういうと春斗は小さく笑った。春斗の口元に笑みが浮かんでいることに安堵しながら、夏樹は彼に訊ねる。
「事件のことだけど、結局、どうすることにした?」
「うん。悩んだけど、被害届を出すことにしたよ。雪のアドバイスもあったし……それに、今回のことは俺も頭に来ているから」
『珍しいな』と夏樹は思った。春斗は基本、自分の事ではあまり怒らないからだ。
「彼らは夏樹にも手を出したから」
「……やっぱりか」
「え?」
「お前は本当に、そういう奴だよなぁ」
大きなため息をついた夏樹のことを不思議そうに見つめる春斗。彼には夏樹が嘆いている理由がイマイチよくわかっていないようだった。
「警察に被害届を出すってことは、家族にも話したんだろう?」
「……うん。警察の人からも、俺からも」
「どうだった?」
「何も言われなかったよ」
「何も?」
「うん。良かった」
「良かった?」
「怒られるかと思っていたから……迷惑をかけるなって。でも、思ったよりも、両親は二人とも俺に関心がなかったみたい」
「…………」
「何も、言わないんだね? 夏樹ならまた怒鳴ってくれるかと思ったけど」
「小学生や中学生の俺だったら、多分怒鳴っていただろうな」
「……そっか」
ほんの少しだけ、悲しそうに目を伏せた春斗に夏樹は続けて言う。
「お前の両親には……もう何も期待していないからな」
夏樹は、春斗の手の上に、自分の手を重ねて続けた。
「お前のことは、お前の親よりも俺が大事にするし」
「え……?」
驚いた声をあげる春斗の手を握りしめて、夏樹は唾を呑みこみ、春斗の瞳を見つめる。
「もう『恋人ごっこ』はやめよう春斗」
「……うん」
「偽りの関係は、今日で終わりだ」
「そう、だね。これ以上夏樹に迷惑はかけられな……」
「好きだ春斗。俺と付き合ってくれ」
ヘタクソな笑顔を浮かべようとしていた春斗は、ぽかんと大きな口を開けて、信じられない顔で夏樹を見ている。
(やっぱり、春斗は気づいてなかったか……俺の気持ち)
結構わかりやすかったはずだ。雪には確実に気づかれていた。でも、春斗の様子から見て、彼は一ミリも夏樹の気持ちには気付いていなかったようだ。
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