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⑰
俺達の関係が偽りじゃなくなった日から一週間経った。
「正式に付き合うことになりました」
「そう。おめでとう」
春斗と二人で真っ先に報告したのは今回とてもお世話になった雪の所である。しかし、雪の反応はやけにあっさりしていた。
「……もっと他にないの? 『えぇー! 意外~』とか」
「いやだって、そもそも最初から両想いだったじゃん」
「え」
「え」
「小学校の頃から夏樹、春斗のことずっと『いい匂いがする』って言ってたし」
「俺、ガキの頃からそんなこと言ってたの!?」
「中学の時に春斗が初ヒート来た時も、うわごとで夏樹の名前呼んでたし」
「初耳なんだけど!?」
自分達ですら覚えていない話を雪から聞かされて、夏樹も春斗も顔が赤くなったり青くなったりと大変だった。
「ストーカーを誤魔化すために恋人のフリをしてるって聞かされた時には正直、腹の底から『ばっかじゃないの』って思ったね。お前ら両想いなんだからそんな遠回りしてないで、とっとと付き合えよって」
鼻で笑いながらそう言った雪だった が、衝撃を受けている二人の顔を見て微笑みを浮かべて言った。
「でもまぁ……おめでとう。二人の長い片思いが実って良かったよ」
『それにしてもさ』と明るいトーンに変えて雪が続けて言った。
「外見のせいで子どもの頃からずっと周囲の人に、『Ωと勘違いされてたαの夏樹』と『αだと勘違いされてたΩの春斗』が付き合うことになったのって、やっぱ面白いよね」
「まぁ、αだと思われていたから、ストーカーされちゃってたし……」
「Ωだと思われていたから集団で襲われたけどな……全員返り討ちにしたけど!」
「……でも、今回の件で、色々と考えさせられたよ。その結論がこれ」
そう言って、春斗は自分の首元に巻かれたチョーカーを指さした。それは、Ωだというのを世間の人に示すものである。
「もうバース性を隠して生きるのはやめることにするよ……最終的にはその……夏樹と番になりたいと思っているし。そうしたら、髪の毛を伸ばしてまで、項を隠そうとは思わないから」
「春斗……」
「最初から、雪みたいに堂々としていれば良かったんだよね。そうしたら雪に迷惑をかけることもなかったし、夏樹に偽りの恋人ごっこなんてさせずに済んだのに」
「……別に。僕はバース性を隠す事が悪い事だとは思わないし、警察沙汰になったことも、迷惑をかけられたと思ってないよ。通報したのは僕がそうするべきだと思ったからだし」
「雪は本当にかっこいいよね。子どもの頃から」
春斗がそういうと、夏樹がむっとした顔で訊ねた。
「俺の方がかっこいいだろ、春斗。主将は俺だぞ」
「そういうところが子どもっぽいんだよ、夏樹は」
「なんだと雪!」
「ふっ、はははっ! やっぱり、二人と一緒にいると楽しいね」
それは、ストーカー事件が起きてからずっと見ていなかった春斗の穏やかな笑顔だった。子どもの頃と変わらないその笑顔に、夏樹は胸が熱くなった。
(この懐かしい気持ち……あぁ、雪の言った通りだ。俺はやっぱ子どもの頃から春斗が好きだったんだ)
初恋の人が、その当時と変わらない笑顔で自分の隣で笑っている。
その幸福感を噛み締めながら、夏樹はこの穏やかな時間がずっと続く事を、心の中で祈っていたのだった。
完
「正式に付き合うことになりました」
「そう。おめでとう」
春斗と二人で真っ先に報告したのは今回とてもお世話になった雪の所である。しかし、雪の反応はやけにあっさりしていた。
「……もっと他にないの? 『えぇー! 意外~』とか」
「いやだって、そもそも最初から両想いだったじゃん」
「え」
「え」
「小学校の頃から夏樹、春斗のことずっと『いい匂いがする』って言ってたし」
「俺、ガキの頃からそんなこと言ってたの!?」
「中学の時に春斗が初ヒート来た時も、うわごとで夏樹の名前呼んでたし」
「初耳なんだけど!?」
自分達ですら覚えていない話を雪から聞かされて、夏樹も春斗も顔が赤くなったり青くなったりと大変だった。
「ストーカーを誤魔化すために恋人のフリをしてるって聞かされた時には正直、腹の底から『ばっかじゃないの』って思ったね。お前ら両想いなんだからそんな遠回りしてないで、とっとと付き合えよって」
鼻で笑いながらそう言った雪だった が、衝撃を受けている二人の顔を見て微笑みを浮かべて言った。
「でもまぁ……おめでとう。二人の長い片思いが実って良かったよ」
『それにしてもさ』と明るいトーンに変えて雪が続けて言った。
「外見のせいで子どもの頃からずっと周囲の人に、『Ωと勘違いされてたαの夏樹』と『αだと勘違いされてたΩの春斗』が付き合うことになったのって、やっぱ面白いよね」
「まぁ、αだと思われていたから、ストーカーされちゃってたし……」
「Ωだと思われていたから集団で襲われたけどな……全員返り討ちにしたけど!」
「……でも、今回の件で、色々と考えさせられたよ。その結論がこれ」
そう言って、春斗は自分の首元に巻かれたチョーカーを指さした。それは、Ωだというのを世間の人に示すものである。
「もうバース性を隠して生きるのはやめることにするよ……最終的にはその……夏樹と番になりたいと思っているし。そうしたら、髪の毛を伸ばしてまで、項を隠そうとは思わないから」
「春斗……」
「最初から、雪みたいに堂々としていれば良かったんだよね。そうしたら雪に迷惑をかけることもなかったし、夏樹に偽りの恋人ごっこなんてさせずに済んだのに」
「……別に。僕はバース性を隠す事が悪い事だとは思わないし、警察沙汰になったことも、迷惑をかけられたと思ってないよ。通報したのは僕がそうするべきだと思ったからだし」
「雪は本当にかっこいいよね。子どもの頃から」
春斗がそういうと、夏樹がむっとした顔で訊ねた。
「俺の方がかっこいいだろ、春斗。主将は俺だぞ」
「そういうところが子どもっぽいんだよ、夏樹は」
「なんだと雪!」
「ふっ、はははっ! やっぱり、二人と一緒にいると楽しいね」
それは、ストーカー事件が起きてからずっと見ていなかった春斗の穏やかな笑顔だった。子どもの頃と変わらないその笑顔に、夏樹は胸が熱くなった。
(この懐かしい気持ち……あぁ、雪の言った通りだ。俺はやっぱ子どもの頃から春斗が好きだったんだ)
初恋の人が、その当時と変わらない笑顔で自分の隣で笑っている。
その幸福感を噛み締めながら、夏樹はこの穏やかな時間がずっと続く事を、心の中で祈っていたのだった。
完
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