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初デート編
②
しおりを挟む紬の言葉に励まされた波留斗は早速、連に連絡を取ってみることにした。
『バイトお疲れ様。次の土曜日、映画行かね?』
五分程待つと、ポンッと通知音が届いて波留斗はすぐさまスマホを手に取る。
『めっちゃ疲れた。波留斗不足』
『なにそれ』
『そのまんまの意味……なぁ、この後波留斗の部屋行っていい?』
『今何時だと思ってんだよ……襲わないんだったらいいぞ』
『約束出来ない』
『じゃあダメ』
『ケチ』
(何が『ケチ』だ…………いやいやいや、そうじゃない。また連のペースに流されるとこだった)
『それで、映画どう?』
『それって恐竜のやつ?』
『うん』
『俺、前作見てない』
『前作確か配信されていたと思うから、先に見てから行く?』
返信に間があった。やがて戻ってきた返信は予想内の答えだった。
『そういや、それ紬も好きなやつじゃね? 紬と一緒に行った方が盛り上がると思う』
(俺はお前と行きたいんだよバカ!…………まぁ、でも興味がない映画に付き合わせるのは申し訳ないよな)
『そうだな……紬の予定聞いてみるわ』
「ふぅー……駄目だったかぁー……」
(こうなると予想してて、紬は事前にチケット取れって言ったんだろうなぁ……)
そもそも連はあまり映画を自分からは見ないタイプだ。紬と波留斗は好きでよく映画館に行くが、連は映画館で見ることにこだわりはなく、配信で自宅観賞タイプである。
映画館にも偶に行くが、それは紬が強引にチケットを取った時か、珍しく連が見たいと思った気まぐれの時しかない。
(このシリーズのやつは、何作か一緒に観たことあるし、連も子どもの頃は好きだった記憶があるからイケると思ったんだけどなぁ……)
でも趣味の合わない映画に無理矢理付き合わせるのは躊躇われた。脳裏に『偶には我儘言って振り回しちゃえ』っていう紬の声がリフレインしたが、結局波留斗は土曜日のデートを諦めて、この日のやり取りは終了した。
事態が急変したのは、翌日の事だった。
それは授業が終わった中休みのとこだった。
「映画観に行きたいわー」
「わかるー……めっちゃCM流れてるもんな」
「今度の土曜日行っちゃう?」
「いいね! 波留斗もどう?」
席が近い友人達が二人で盛り上がっていたと思ったら、すぐそばの波留斗も誘ってくれた。
「俺も?」
「そーそー! 最近、波留斗土日遊んでくんねーじゃん。偶には一緒に遊ぼうぜ」
平日はずっと連がバイトを入れている為、事前に会う約束をしていなくても、土日の予定は開けるようにしていた。
(でも、別に必ず連と会うって決めている訳じゃないし、映画断られちゃったし、丁度いいかな)
「いいよ。俺もその映画観たいと思っていたところだし」
「おーー!! 波留斗が釣れた!」
「じゃあ駅前集合でいい?」
「うん。だいじょ……」
「波留斗」
名前を呼ばれて振り返ると、先ほどまで窓際の席にいたはずの連が何故か波留斗の背後に立っていた。
「なに?」
「……土曜日、俺と会う約束だったろ」
「え」
(いや、約束していませんけど?)
「お前から映画誘ったんじゃねーか」
「いや、それ昨日連が断……」
「10時に玄関前な。遅れるなよ」
「ちょっ……連!!」
名前を呼んだものの、連はそのまま会話を一方的に終了させて自分の席に戻って行ってしまう。
(なんなんだよ一体……趣味が合う奴と一緒に観ればって感じで断ったの連の方なのに……)
連に対しての不満は色々あったが、とりあえずは友人たちに謝らなければならない。
「あー……ごめん、ふたりとも。実は連に映画観ないかって誘っていたのは本当で……断れたと思ってたんだけど、どうも俺の勘違いだったっぽい? せっかく誘ってくれたのにごめんな」
手を合わせて謝ると、連と波留斗のやり取りを普段から見ているクラスメイトの二人は苦笑いしながら許してくれた。
「いいよいいよ。多分波留斗のせいじゃねーし」
「今度また遊びに行こうや。ってか、今日の放課後ヒマならカラオケ行っちゃう?」
「あ、そういや俺割引券持ってたわ。誕生日の月に一回だけ使える半額クーポン」
「マジ!? 波留斗神ぃ~!」
「じゃあ行きますか」
「行きますか~」
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