両片思いの幼馴染

kouta

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初デート編

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 電車に揺られて最寄りの駅に着いた時には既に夕暮れ時になっていた。
 未だに暑さが残る道のりを、連と他愛もない話をしながら歩くが、連はどこか上の空だった。

 やがて家から程近い公園の前に通りかかると、連が足を止める。

「……公園寄って行かないか?」
「いいよ」

実は公園の中を通り抜けた方が帰路が短くて済む。波留斗も良く公園内を歩いて帰るので、連の意見に迷いなく同意した。

 そうして二人は公園の敷地内を歩く。住宅街の中にあるこの公園は、意外と広く、遊具の広場があったり、木々の小道があったり、自転車や球技をするのに丁度いい開かれた運動場もあった。幼い頃は毎日のように紬と連と三人で遊んでいたお馴染みの公園である。

 夕方の時間帯ともあって、遊具の広場や運動場のあたりの人々はまばらだった。波留斗達は子ども達のはしゃぐ声を遠くに聞きながら小道をゆっくり進む。
 昼間の時間帯は木陰で涼む老人や昼食を食べる社会人の姿も見えるのだが、この時間帯は波留斗と連以外の人はおらず、広場や運動場と違い、閑散としていた。

 静寂の中、連がベンチの前で足を止める。

「……座れ」
「え? 別に疲れてないけど」
「いいから」

不思議に思いながらも、言葉少ない連の様子が気になった。もしかしたら、連の体調が悪いのかもしれない。波留斗は言われるがままにベンチに座る。その隣に連も腰を下ろしたが、頑なにこちらを向こうとせず、ただそわそわとした様子で、膝を小刻みに揺らしていた。

「連、どうかしたのか?」
「別に……なんでもねぇよ」

(なんでもない人の様子ではないと思うんだが……)

何か言いたいことがあるが、上手く言い出せない。連の態度はそんな感じだった。

波留斗は何も言わずに、連の言葉を待った。じっと波留斗に見つめられた連は、一度大きく深呼吸をした後に自分の鞄の中から小さな箱を取り出した。

「ん」
「うん?」

連は「ん」としか言わず、目を逸らしながら、波留斗の方に小箱を差し出した。一方の波留斗は連の意図が良く分からず首を傾げた。

「え、なに?」
「チッ! 察しろよ! テメェにだよ!!」

波留斗が聞き返すと、連が苛立ったようにそう叫んでこちらを睨みつけてきた。どうやらこの小箱を受け取れと言うことらしい。

 連にすべて説明されてやっと自分に差し出されたと気づいた波留斗は、戸惑いながらもその小箱を手に取った。

 それは手のひらに乗るサイズの黒い箱だった。フェルト生地で出来た箱は案外軽い。戸惑いながら波留斗は連に訊ねる。

「開けていいの」
「ん」

連は相変わらず波留斗の方には顔を向けず、言葉短くそう言っただけだった。

 箱は上の方に開く仕組みだった。ゆっくり開くとそこにはシルバーのピアスが入ってきた。小ぶり黒い石がついているだけのシンプルなタイプである。

「これ……」
「……気に入ったか?」

ピアスをじっと見つめていた波留斗は、顔を上げて連に頷く。

「うん。なんか黒って連の色って感じするしかっこいいね! 連にすっごく似合うと思う」

一瞬、嬉しそうに笑った連が最後の一言を聞いた瞬間目じりを釣り上げた。喜怒哀楽が激しい。

「アホかお前は! なんでこの流れで俺のピアスだと勘違いするんだよ! テメェにだよ!!」
「え……そう、なの?」
「おう。い、一応? お前、今日誕生日じゃん」

(そっか……これ、俺への誕生日プレゼントだったんだ……)

ピアスを再度見ていた波留斗はあることに気づく。

「……もしかして、先週紬と買い物行ったのって、俺のプレゼント探してた?」
「……悔しいけど、あいつの方がセンスいいし……」

露店でアクセサリーを見ていた連を思い出して、波留斗の中のモヤモヤが少しずつなくなっていく。

(俺の誕生日プレゼントを選ぶために、休日一日使ってくれたんだ……)

「ありがと。嬉しい」
「おう……」
「でも、俺穴開けてないよ」
「知ってる。ピアッサーも買ってある」

連の鞄の中から二つのピアッサーを取り出した。用意周到である。たじろぐ波留斗に連がニヤニヤと笑みを浮かべる。

「何、こえーの?」
「う……痛いんだろ」
「一瞬だから大丈夫だ。軟骨のとこは痛いけど」

経験者はそう語りながら、新品のピアッサーを開封し始める。

「え、待って、今開けるの?」
「問題あるか?」
「まだ心の準備が……」
「波留斗」

連が名前を呼ぶ。その声が案外近く聞こえて吃驚して連の方を向くと、すぐ傍に連の顔があった。

「れ……」

連の名前を紡ぐ前に唇が奪われる。外でキスするのはこれが初めてだった。人目がどうしても気になって身動ぎをするが、それを許さないとばかりに連が波留斗の身体を強く抱き寄せる。

「んんっ……」

深くなっていくキスの合間、波留斗は許される限りで周囲に視線を向ける。幸い、人影は見当たらず、このベンチの周辺は波留斗と連以外いなかった。

(でも、誰か通りかかったら見られちゃう……)

「余計なこと考えんな。集中しろ」

一旦、唇が離れて忠告され、再びキスが再開された。波留斗の抵抗を許さない激しいキスに戸惑いながらも目を閉じて受け入れる。

歯列や上顎を舌で舐められるとゾクゾクとした快感が波留斗の背中に走る。キスの合間に声が漏れるのを抑えられなくなってきた頃、それは突然訪れた。

バチンッという音が耳元でした途端、激しい痛みが波留斗を襲った。

「っ~~~~~!! いっ、ったいっ……!!」

予測してなかった痛みに、目尻に涙を溜めながら連を睨み上げると、連は唾液で濡れた唇を舐めながら満足そうに波留斗を見下ろしていた。

「お前の泣き顔ってやっぱいいな」
「ッ! 連のバカ! 意地悪!!」
「普通に開けるよりは意識逸らせただろ?」
「それは、そうだけど……でも、予告なしに開けるなんて酷い!」
「ファーストピアス似合ってるぞ」

連はそう言いながらもう一つのピアッサーを手に取る。

「さぁ、もう一個も一気に開けちまうか」
「え、ちょ、ちょっと待っ……」
「こういうのはいっぺんにやった方がいいんだよ」

「ひっ……! いっだぁああああああああああ!」

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