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読書の秋編
①
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季節は暑い時期を過ぎて、秋になろうとしている。波留斗はこの日、連とのデートで図書館を訪れた。友達からは意外だとよく言われるのだが、波留斗は小説をよく好んで読む。それも電子派ではなく、紙でだ。それは、連の母親菜摘の職業が小説家であり、彼女の書斎を時折見学させて貰っていた際に、紙の本に触れる機会が多かった為である。
子どもの頃から両親は仕事で忙しく、波留斗は紬の家で過ごす時間が多かったのだが、時折連の家にも遊びに来ていた。連の家は良心とも在宅仕事なので、逆に休日がわかりづらくて、遊びに行く機会は紬の家ほどは多くなかったのだが、波留斗は菜摘の書斎で本を読む時間が好きだった。
彼女が書いているのは本格的な推理小説なのだが、書斎に置いてある本は多岐に渡った。観光のガイド本や図鑑等、資料に使ったものだとわかるものもあれば、児童書や絵本だの大人があまり読まなそうな本まで置いてある。菜摘いわく、『小説家はいつまで経っても冒険心が抜けない子ども』らしい。彼女の書いている推理小説はわりと救いのない殺伐とした殺人事件が多いのだが、彼女の嗜好はドキドキハラハラするファンタジーものであるらしかった。
母親が小説家であり、常に手の届く場所に本が置いてある環境で育った連であったが、彼はあまり本を好まないし、電子派であるらしい。ちなみに、紬は電子も紙もどちらも読むが、購入している9割が漫画だった。そのため、休日に図書館に行くのは幼馴染とはいえ、波留斗だけであり、それなのに今回立ち寄ったのは、珍しく連も借りたいものが図書館にあったからという理由だった。
連が借りたいと言ったのは資格の本だった。資格を取るとバイトの時給があがるらしく、連はその勉強を始めようと思っているらしい。
波留斗は真剣に資格の本を選んでいる連を邪魔しないようにそっと離れて、自分は小説のコーナーに向かった。
(さて、今日は何を借りようかな……)
せっかく来たので、何かを借りるのは確定していた。後はその中身である。波留斗も菜摘の影響でミステリーが好きなのだが、それならばいくらでも彼女の書斎にあるのでいつでも借りることが出来る。
(出来るなら、普段読まないのにしようかな……ん?)
図書館の一角にとある特集が組まれているコーナーがあった。それは、少し時季外れで恐らく来週になったら別のテーマのものに差し替えられているであろう旬が遅れたものだった。その為に、借りられずに多くの本が表紙をこちらに向けたまま、展示してある。
(怪談かぁ……)
波留斗は別に霊感がある訳じゃない。ホラー映画は時々見るが、ホラーの中でもどちらかといえばサメ映画のようにパニックものを主体とするようなものを選んで観る傾向があるので、こういったいかにもな本格的な怪談は読んだことがなかった。
(懐かしい……小学生の頃は児童書で良く読んでたな……一時トイレやお風呂に一人で入れなかったんだよね)
子どもの頃の懐かしい記憶が甦り、ノスタルジーに浸りながら波留斗は文庫本を手に取った。黒い表紙の文庫本は、いかにもとホラー小説といった装丁で作られていた。
「それ、借りるのか?」
ふと声を掛けられて顔をあげると、目の前に連が立っていた。手には数冊資格の対策本があった。
「あ、うん。読んでみようかな」
別段読みたい訳じゃなく、ただふと手に取ってみただけなのだが、偶にはこういう本の出会いも良いだろうと波留斗はその本を借りて読んでみることにした。
子どもの頃から両親は仕事で忙しく、波留斗は紬の家で過ごす時間が多かったのだが、時折連の家にも遊びに来ていた。連の家は良心とも在宅仕事なので、逆に休日がわかりづらくて、遊びに行く機会は紬の家ほどは多くなかったのだが、波留斗は菜摘の書斎で本を読む時間が好きだった。
彼女が書いているのは本格的な推理小説なのだが、書斎に置いてある本は多岐に渡った。観光のガイド本や図鑑等、資料に使ったものだとわかるものもあれば、児童書や絵本だの大人があまり読まなそうな本まで置いてある。菜摘いわく、『小説家はいつまで経っても冒険心が抜けない子ども』らしい。彼女の書いている推理小説はわりと救いのない殺伐とした殺人事件が多いのだが、彼女の嗜好はドキドキハラハラするファンタジーものであるらしかった。
母親が小説家であり、常に手の届く場所に本が置いてある環境で育った連であったが、彼はあまり本を好まないし、電子派であるらしい。ちなみに、紬は電子も紙もどちらも読むが、購入している9割が漫画だった。そのため、休日に図書館に行くのは幼馴染とはいえ、波留斗だけであり、それなのに今回立ち寄ったのは、珍しく連も借りたいものが図書館にあったからという理由だった。
連が借りたいと言ったのは資格の本だった。資格を取るとバイトの時給があがるらしく、連はその勉強を始めようと思っているらしい。
波留斗は真剣に資格の本を選んでいる連を邪魔しないようにそっと離れて、自分は小説のコーナーに向かった。
(さて、今日は何を借りようかな……)
せっかく来たので、何かを借りるのは確定していた。後はその中身である。波留斗も菜摘の影響でミステリーが好きなのだが、それならばいくらでも彼女の書斎にあるのでいつでも借りることが出来る。
(出来るなら、普段読まないのにしようかな……ん?)
図書館の一角にとある特集が組まれているコーナーがあった。それは、少し時季外れで恐らく来週になったら別のテーマのものに差し替えられているであろう旬が遅れたものだった。その為に、借りられずに多くの本が表紙をこちらに向けたまま、展示してある。
(怪談かぁ……)
波留斗は別に霊感がある訳じゃない。ホラー映画は時々見るが、ホラーの中でもどちらかといえばサメ映画のようにパニックものを主体とするようなものを選んで観る傾向があるので、こういったいかにもな本格的な怪談は読んだことがなかった。
(懐かしい……小学生の頃は児童書で良く読んでたな……一時トイレやお風呂に一人で入れなかったんだよね)
子どもの頃の懐かしい記憶が甦り、ノスタルジーに浸りながら波留斗は文庫本を手に取った。黒い表紙の文庫本は、いかにもとホラー小説といった装丁で作られていた。
「それ、借りるのか?」
ふと声を掛けられて顔をあげると、目の前に連が立っていた。手には数冊資格の対策本があった。
「あ、うん。読んでみようかな」
別段読みたい訳じゃなく、ただふと手に取ってみただけなのだが、偶にはこういう本の出会いも良いだろうと波留斗はその本を借りて読んでみることにした。
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