赤い手

kouta

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 生暖かい風が吹く夜のことだった。深夜二時。誰もいない住宅地を外灯を頼りに歩く。その足取りが少しおぼつかないのは先程まで酒が入っていたからである。
 
 今でも駅前にあるカラオケ店の一室では、終電を逃した友人たちが楽しく飲んでいるに違いない。雛崎 優太(ひなざき ゆうた)が、『おい、まだ帰るなよー薄情者』と弄られつつも帰路に就いた理由は、飲んでいたカラオケ店から自分の家が徒歩圏内だったことと、この汗ばむ季節が関係していた。居酒屋を二軒回り、てっぺんを越えてもなお酒と煙と熱気でむせ返る飲食店の中にいた身体はべとつき、張り付くシャツが不快感を増幅させていた。暑がりな優太は結構汗っかきで、空調が効いたカラオケ店に入っても、首筋を流れる汗が気になってしまい、どうしてもその状態でカラオケのソファに寝そべる気にはならなかった。ここ数日は課題に追われていた為、睡眠時間を削っていたのもあり、せっかくなら自分の家に帰ってシャワーを浴びてから寝ようと、盛り上がる学友達を置いてこうして一人で帰っている。

 都内でありながら、住宅地であるがゆえか、外灯の間隔は長く、足元が薄暗い。近隣の住居の明かりは殆どが消えている。偶にカーテンの隙間から明かりが漏れている家はこの深夜に何をしているのだろうと不思議に思った。駅前とは違い、雑音はなく、車も通らず。辺りに響くのは己の歩く足音のみ。酔っぱらっているため不規則に響く足音を聞きながらふと思い出したのは先程の飲み会でちらっと話題に上がった怪談話だった。




『赤い手』に魅入られた者は連れ去られる。





 それはよくある都市伝説のような話だった。この話は、優太の友人が知っていたわけではない。飲み会の途中から参加した女性から聞いた話だ。

 最初は優太と仲が良い、萩原拓哉、須藤健司、森本悟といういつも遊んでいる同じ学部の友人四人組で飲んでいた。ところが、途中で健司が『女友達が近くで飲んでいて合流したいって』と言い出して流れが変わった。そこは恋人がいない年頃の男子大学生。嫌だと断るはずもなく、あっさりと彼女たちの合流が決まった。

 やってきたのは二人の女性だった。一人は名前を覚えていない。可愛い子だったが、見た目からして地雷系女子で、話しかけるのに躊躇したし、相手もそんなに自分に興味が無いのを察してお互い斜め向かいに座ったまま、たいした話もしなかったからだ。もう一人の女性はナナセと言った。明るい金髪に近い茶髪でノリが良く美人だった。ただ、彼女の視線は常にイケメンである健司に向けられていて、誰目当てでこの飲み会に参加したかは明らかであったので、優太は早々にこの女性二人から興味をなくしたのだった。

 恋愛に関しては空振りだったとはいえ、飲み会自体が楽しくなかったかと言えばそうでもなく、特にナナセは話上手だった。そんな彼女がカラオケ店でみんな満遍なくひとしきり歌った後、誰も曲を入れてない微妙に気まずい間が空いた時に振ってきた話が怪談だったのである。

「手だけなんだって。血のように真っ赤に染まった赤い手が『こっちにおいで』って誰もいない夜の道で誘ってくるの。手招きして『おいで…おいで…』って」
「それって手しかないのに喋ったってこと? 口がないのに、おかしくない?」

妙なところを突っ込んだのは多少空気が読めないことに定評がある男、悟である。ナナセは『さぁ、見えないだけで実は口もあるんじゃない?』と適当に答え、気にすることなく話を続けた。

「呼ぶ声は聞いたことある声だったり、知らない声だったりするの。自分のおばあちゃんの声だったっていう人もいれば、全然知らない女の人の声だったっていう証言もあるんだって。でね……その声に一度でも返事しちゃうと憑かれちゃうんだって」
「憑りつかれるとどうなるんだ?」
「あの世に連れ去られちゃう」
「……言っちゃ悪いけど、すっごく良くある話だよな」
「だよねー! 私もそう思った」

拓哉の感想にナナセは笑って答えた。

「でもさ、最近この話よくネットで見るんだよねー。誰が流行らせているんだろ?」
「さぁな。でもまぁ怖い話って定期的にバズるよな」
「俺、昔さ妖怪がでるアニメ好きでよく見てた」
「あっ、私もー! ってか家にまだ子供の頃に買ってもらったメダルあるし」
「え、ナナセちゃんも好きだったんだ!」

そこから、悟とナナセの間で昔のアニメ談義が始まった。オタクの悟は楽しそうにしていたし、意外とナナセもそういうサブカルに詳しかった。地雷系の女子はそんな二人の会話に入るわけでもなく高い度数の酒をハイペースで飲んでいる。世話好きな拓哉がペース配分を気にして彼女に声をかけていた。そんな全体の様子をぼんやり眺めていたら、デンモクをいじっていた健司がこちらにマイクを渡してきた。

「お前の十八番入れたから歌おうぜ」
「だからこれ、俺の十八番じゃねぇって」

そう言いつつも馴染みのあるメロディを聞いてテンションがあがった優太は、健司と一緒に流行の曲を何曲か歌った後、皆に断りを入れてカラオケ店を一人抜け出したのだった。






 誰もいない夜の道。丑三つ時。初夏のじめじめとした暑さ。どれが引き金になって思い出したのかはさだかではない。でも、この瞬間、優太がその話を思い出したのは偶然ではないのかもしれない。そう思ったのはふと目をやった先に視えたからだ。



 切れかかって、チカチカと点滅を繰り返す外灯の下。『それ』はいた。



 赤い手だ。血のように赤い手が二本。太さからして成人男性のものだろうか。手首から先は見えない。不自然にその赤い手が二つ、外灯の下で浮いていた。

 思わず優太は足を止めた。ごくりと唾を呑みこむ音がやけに大きく聞こえた。酒のせいだけではない激しい動悸に襲われながら、優太はその不気味に浮かぶ二つの赤い手を見つめていた。

 その視線に気づいたかのように手はゆっくりと動いた。まるでこちらに手招きするかのように。そして。




「おいで……おいで……」




それはとても低い男性の声だった。少なくとも親しい人物の声ではない、聞き覚えのない知らない声だった。その不気味さに、恐ろしさに、膝がガクガクと震えた。


『返事をすると憑かれちゃうんだって』


ナナセの言葉が頭の中でリフレインする。声をあげることは出来なかった。悲鳴すらも、返事になってしまう気がしたからだ。でも、目を背くことも出来なかった。視線を外した瞬間、こちらに襲ってきたら……そんな想像が頭をよぎり、瞬きすらせず、ただただ優太はその赤い手を見つめていた。





 金縛りのような緊張が解けたのは、それからどれだけ時間が経ったかわからない頃―――感覚的には一時間ぐらい見つめあっていた気もするが、それは精神的な問題であり、恐らく実際はそれに遭遇して数分後の事だっただろう。


「どうかしましたか?」
「ひゃぁあああ!」

すぐ背後でこれまた聞き覚えのない若い男性の声が聞こえて、想定外の死角方向から声をかけられた優太は情けなくあわれもない悲鳴をあげた。

 すぐさま振り返ると、声の印象通り若い男性――つまり、優太とそう歳が変わらないであろう青年がそこに立っていた。大声をあげた優太にびっくりした様子で何度も瞬きしている。

「え……あ……」
「すいません。じっと立っていたので、体調が悪いのかと思って……でも、思ったよりも驚かせてしまったみたいで……」
「あ、いや……こっちこそすいません。ご心配おかけしました……」

どうやら善意で優太に話しかけてきてくれたようだ。見ず知らずの人間を心配してわざわざ声をかけてくれた親切な男性に優太は何度も頭を下げながら恐る恐る外灯の方を振り返る。そこには赤い手も何もなく、切れかかっていたはずの照明も今ははっきりとコンクリートの道を照らしていた。

「…………」
「やっぱり、どこか体調が悪いんですか?」
「あ……いえ、大丈夫です。ちょっと酔いが回って、歩きづらかっただけなので……」

男性にそう答えながら、優太はどこか違和感を覚えた。彼の顔にどことなく見覚えがある気がしたのだ。

じっと彼の端正な顔立ちを見つめて、ようやく思い出す。数日前の朝にマンション指定のゴミ出し場で会って、偶々目が合ったので軽く頭を下げたのを思い出した。

「……もしかして、マンション小暮に住んでます?」
「はい。自分は蘇芳(すおう)って言います。東南大の学生です」
「えっ! 俺も同じ!」

確認してみると、学部は違うが、学年も一緒で年齢も一緒だった。偶然に驚きながらも『まぁ、この辺りの一人暮らし用のマンションに住んでるなら同じ学校の生徒でも全然おかしくないよな』と笑いあいながら、二人は自分の家に向かって歩き出した。同じマンションなので当たり前なのだが、進む方向は全く一緒だった。優太にはそれはとても救いだった。何せあの恐怖体験を味わった後だったので余計にである。

 話をしながらマンションまで着くとさらに驚きが待っていた。なんとこの蘇芳は優太の隣の部屋に住んでいたのだ。

「こんな偶然あるんだな」
「そうですね」
「……なぁ、その敬語やめね? 同い年だし」
「そうですか? わかりました……じゃない、わかった。今後もよろしく」
「うん。おやすみ」

蘇芳と別れて優太は自分の部屋の扉を開ける。一人になった途端、先ほどの底冷えした恐怖が甦ってきた。それでも、蘇芳と話しながら帰ったことで少し気分が良くなっている自分に気づいた。

 あれはきっと幻覚、幻聴だったのだろう。最近の自分は寝不足で酒も入っていた。そこにナナセの話を偶然思い出して脳が勝手に変な物を見せたのだ。疲れていたせいだと決めつけた優太は意を決して風呂に入った。本当は入りたくなかったが、汗だくのままベッドに入ってしまっては、友人達の遊びを蹴って帰ってきたのに本末転倒だと思ったのだ。

 なるべく鏡を見ないようにしながらシャワーを浴びてすぐに出た。冷えた麦茶を一気に飲み干して念願の暖かいベッドに倒れ込む。部屋の明かりは消さなかった。眩しいままでも目を瞑れば、限界だった身体はすぐに対応した。深く深く息を吸って吐いて。何も考えないようにそう意識して目を閉じているうちに優太はいつしか眠っていた。


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