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お姫様抱っこという羞恥心を煽る要素しかない運び方をされながら、アランは何度か来た事あるデイヴィットの私室に移された。
勿論、機嫌は悪い。恥ずかしさで顔を手で隠しながらベッドの縁に座り、頑なに顔を背けるアランにデイヴィットは隣に腰を下ろしながら彼の顔色を伺う。
「アラン、怒っているのかい?」
「……流石に、関係者全員の前で大っぴらに告白するのはやめてくれ。羞恥心で死ぬかと思った」
「すまない。クリスの話を聞いてつい、すぐに確かめなければと……」
「そう。そのクリスだ。なんで俺たちの関係を知っている?」
「それは……」
今度は、デイヴィットが気恥ずかしそうに頬を搔きながら答える。
「実は訓練の時でも時折、私の意識が余所に向いてしまう時があって……その時は大抵貴殿が視界に入った時で」
察しの良いクリスはすぐにアランとデイヴィットに何かあったのだと気づいてしまったらしい。
「流石に私とアラン殿の関係性までは気づいていなかったようだが、私も貴殿との距離の詰め方に悩んでいる時期でもあったので、すべて打ち明けて相談をしていたんだ」
常日頃から周囲の人に気を配っているクリスにとって、兄のように慕っているデイヴィットの変化はすぐに見抜いただろう。
「クリスの事まで気を回せなかった俺の落ち度でもあるか……」
「すまない。個人的な事を相談もなしに話してしまって」
「済んだことはもういいよ。どうせ明日には要塞内で知らない奴はいないだろうし」
(つまり、もう隠していることは出来ない訳で……)
「貴公ほどの男なら、俺なんかに本気になることもないだろうに……」
思わず零したアランのその一言は、確実にデイヴィットの地雷を踏みぬいた。
「……それはどういう意味かな?」
デイヴィットはいつもと変わらない笑みを浮かべているようでいて、その瞳には明らかな怒気が含まれていた。
「デイヴィット……?」
「言ったはずだよ、アラン。貴殿はあまりに自分に対する評価が低すぎる。いや、私に対する評価が高すぎるのか?
それが何故なのか私には皆目見当もつかないが」
「貴殿はとても魅力的だ。私は貴殿よりも惹かれた人には会ったことはないし、これからもないだろう。アランのすべてが愛おしいと思うが、自分を下卑するその表情だけはいただけない……どうかこれ以上、私の愛する人を悪く言わないでくれ」
「っ……やめて、くれ」
「アラン……」
「頼むから……慣れていないんだ、そういう真正面からの賛辞は……流して逃げることが出来ない」
顔を赤くし、視線を背けるアランの姿に憂いの表情を浮かべていたデイヴィットは目を瞠った。
そして、ふといつもの優しい笑みを浮かべるとアランの頬を撫でて彼の瞳を覗き込んだ。
「貴殿が逃げるのが得意なのは知っているが……逃げられるとますます欲しくなる。だから、どうか逃げないで。私の腕の中にいてほしい」
(……ずるい)
デイヴィットはずるい。その巨躯でアランを無理矢理縛り付けるなど訳ないのに、触れる手はあくまでも優しくて……その笑みはどこまでも穏やかで。
それでいて、瞳には熱が籠っている。ただひたすら己を見つめるその意志の強さに、アランの体から力が抜ける。
(もう……いいか)
自分がこの未来輝かしい青年の隣に立つことに戸惑いがないと言えば噓になる。
それでも、ここまで情熱的に求められたら折れるしかないじゃないかと、我ながら素直じゃない己の気持ちに心底苦笑しながら、アランは触れていた彼の手に自分の手を這わせ、頬ずりしながら微笑む。
「もう逃げない……だから、デイヴィットが欲しい」
素直な気持ちを吐露すれば、デイヴィットは顔を真っ赤にしながらそれでも嬉しそうに微笑んでアランに口づけをした。
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