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招かれざる客
オルランド達が出立してからそろそろ五日が経つ。しかし、彼らからの連絡はまだノアには届いていなかった。
(そろそろなんらかの報告は欲しい頃合いだが……何か問題があったんだろうか?)
ジルなら何か情報を掴んでいるかもしれない。ギルドに直接聞きに行きたいが、ノアの謹慎は未だに解かれていない。何もできずただただ部屋の中でモヤモヤしながら待つ時間だけが増えていく。
(こーなったら鳥型のゴーレムとか飛ばしてみるか? あのメイドにさえ見つからなればなんとか誤魔化せるかもしれない。ついでにどこまで追加機能を付けられるかも試してみよう。例えば手紙じゃなくてボイスメッセージを飛ばしてみるとか。或いは通信機みたいに遠くに離れた人とも会話したりとか。でもこういうのって土魔法でどうにか出来るものなんだろうか……振動さえコントロール出来ればなんか行けそうな気がするんだけどな)
こうして謹慎期間中、暇すぎるノアは魔法の鍛錬に勤しんだ。土から錬成する時は人に見られないように気を使ったが、使用人達も忙しいのでノアが中庭で土いじりしていてもあまり気にしない者が多く、なんとか見つからずに魔法の鍛錬に勤しむこと数日。ついに明日には謹慎が解けるというタイミングでノア宛に手紙が届いた。
「手紙が届いたって!?」
「は、はい。ノア様宛に……」
ノアの勢いに押されながらも若いメイドが差し出した手紙を見て、ノアは一気に落胆した。それは明らかにオルランドからのものではなかったからだ。
(うーん……このタイミングで王室から届く手紙……嫌な予感しかしない)
しかし、王家の紋章が入っている手紙を無視するわけにはいかない。ノアは嫌々ながらその手紙の封を切った。
差出人はノアの予想とは違い、アイリーン王妃。内容は明日のお茶会への誘いだった。
(あぁ……そういえば愚痴を言いたくなったらいつでも呼んでいいよって言ったっけ。俺も、リリスや陛下の様子を知りたいところだし、丁度いいかもな)
謹慎も明日には解ける。まぁ、謹慎中だったとしても、王妃の誘いならばオスカーもダメとは言えないだろうが。
(俺もこの一週間、人にまったく会えなくて鬱憤溜まってたしなぁ……話し相手がいるのはありがたいな)
アイリーン王妃は中庭でお茶会をするのが好きだ。しかし、今朝は雨が降り、地面がまだ濡れているからという理由で屋内でお茶会をすることになった。
通された応接間は初めて来た場所で見覚えがなかった。王城には何度も来ているノアですら知らない部屋なので、普段あまり使っていない部屋だと思われる。
アイリーン王妃の侍女は元々少ない。父親があまり位の高い貴族ではなかったことと、アイリーンが王妃になった直後はまだ政局は不安定で、いつ誰に命を狙われるかわからない状態だった為、身近に置いておく人間を少人数に限ったからだ。王妃の地位が安定した今でも人員を増やしていないのは、『自分の周りに人が多いと落ち着かないから』という理由らしい。それでも、最低でも10人はいるはずだ。けれど今回のお茶会に同行していたのは三人だけ。それも比較的若く、あまりノアとは馴染みがない侍女達だった。
そしてお茶会主催のアイリーンと言えば……ノアが入室して挨拶を述べても、こちらを見ずどこか上の空だった。ニコニコの笑顔で迎えるか、『ねぇ聞いてよノアちゃん!』とぷんすこ怒った顔で話しかけてくると思ってたノアは、初めて見るアイリーンの姿に困惑を隠せない。
(アイリーン様の様子がおかしい……いや、アイリーン様だけじゃなくて、他の侍女達もなんか様子が変だ……)
まるで生気のない人形のような表情を浮かべて、俯いてじっと座っているアイリーンと、黙々とお茶を淹れる作業をしている彼女たちを呆然と見つめていると、ノアが先ほど通った扉が再び開いた。
そこから現れた人物を見て、ノアは目を瞠り彼女の名前を小さく呟いた。
「リリス……」
お茶会に招かれていないはずの客人、次期王太子妃リリスの姿がそこにあった。
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