8 / 27
8.
今日は二回目の食事をする日だった。
抄介個人としては勝手にデートだと思ってはいるが、過度に思い過ぎると自分が浮かれていることが玲にバレて、きっと怪しむだろうし嫌がるかもしれないので、敢えて“食事をする日”としていた。
玲から来週なら大丈夫と言われていたが、結局再来週ということになって延期になっていた。
そう思うと前回から一月経っているのだと思うと考え深かった。
一度目は本当に緊張していたけど、休憩室ではない別の場所で玲と色々話せたのは楽しかったし嬉しかった。
そして気持ちも自覚した。
あの日から実はかなり抄介の中で気持ちが整理できているから、あまり悩まなくなったのだ。
(もっと早く認めていれば良かったのかもしれないけど)
そうは思うが中々難しいことだと思う。
同性を好きになったことを認めるなんて、今まではあり得なかったことなのだ。
それをすぐ認めるのはかなり難しい。
ただ不思議と玲が女性だったら良かったなんて一度も思ったことがなく、性別関係なく今の姿の玲が好きなだけだと感じるのだ。
そんなことを考えながら、抄介は待ち合わせ場所に向かって歩いていた。
今日の待ち合わせ場所は、会社が入っているビルから近い最寄り駅だった。
玲が行きたい場所が駅に近いところにあるらしく、抄介も仕事を終えてから行く予定だったので駅集合の方が都合良かったのだ。
今日は金曜日で玲の清掃業出勤日だったが急遽飲食業の仕事が入り、その仕事を終えてわざわざこちらまで来てくれるらしい。
土日も飲食業の仕事を入れているらしく、休みも不規則みたいで大変そうだった。
駅に向かって歩いて行くと、既に玲が改札口前に待っているのが見えた。
「お疲れ!」
携帯をいじりながら立っている玲に抄介は声を掛けると、慌てて顔を上げた。
「あ、お疲れ様です!」
ホッとした表情になり、玲は抄介に挨拶をする。
「ごめん、待たせたか?」
「いえいえ、俺も今来たばかりなんで」
ニコニコしながら言う玲に、思わず抄介は笑みが零れた。
「そうか、じゃあ・・・案内お願いするな」
「あ!そうでした。行きましょう!」
思い出したかのように言う玲に抄介は苦笑しながらも、可愛いなぁと心中呟いた。
抄介は案内されるまま、玲に付いて行く。
彼の歩幅に合わせながら歩くのも抄介は嬉しいし楽しく、とにかく一緒に過ごすこと全てが今は幸せで仕方なかった。
(俺はどうかしてるんじゃないか?)
時々、玲のことしか考えない自分に自問自答するが、結局仕方ないという結論を付けて考える事を止めてしまっている。
(まぁ、今まで枯れ過ぎてたんだ。これぐらいは大丈夫だろう)
実は今の自分が嫌いじゃない。少し恥ずかしさもあるが、こんな自分があってもいいんじゃないかと思っているのだ。
今まで付き合ってきた元彼女に、ここまで舞い上がることはなかったかもしれない。だからこそこんな自分に驚きつつ新鮮な気持ちにもなっていた。
玲の案内で二人は駅から十分程歩いた頃だった。
「ここです!」
玲の足がピタリと止まり、指さす先へ抄介は視線を送る。
しかし玲が選ぶにはあまりにも意外な場所だった。
「・・・定食屋!?」
「はい。一度入ってみたくて」
苦笑いする玲に抄介は驚くしかなかった。
店は昭和を思わせる懐かしい雰囲気の、定食を売りにしている個人で経営している飲食店だった。
驚いている抄介を玲は恐る恐る尋ねた。
「ダメ・・・ですか?」
「ダメじゃないよ。ちょっと驚いただけ」
笑いながら抄介は言った。
「なんでここなんだ?」
問われて玲は恥ずかしそうに口を開く。
「時々この店の前を通ることがあって、ずっと気になってたんです。こういうお店、美味しいのかなぁって。でも一人で入る勇気がなかったので、抄介さんとならって思って」
真っ直ぐで純粋な目で見つめられ、抄介はドギマギした。
別にこういう店が嫌ではないので構わないのだが、玲が入りたいというならいいのだろう。
「じゃあ入ろうか?」
「はい!」
笑顔でそう言い、二人はゆっくりと店内へと入った。
「いらっしゃいませ!お好きな所に座って下さい」
50代くらいの女性がエプロン姿で抄介たちを迎えた。
雰囲気は昭和時代を感じられるスチールパイプ製のテーブルと椅子が六組くらいあり、あとは四人ほど座れるカウンター席があった。
既に二組がテーブル席に座って食事をしていて、二人はテーブル席へと座った。
「何にする?」
抄介は玲にメニューを渡す。ありがとうございますと玲は言いながらメニューを受け取り、見つめた。
「そうですね、唐揚げ定食にしようかな」
「いいな、唐揚げ。俺もそれにしようかな」
「あ、ダメです!抄介さんは他のメニューにして下さい!」
急にダメと言われ抄介は面食らう。
「え、ダメなのかよ?」
「唐揚げ以外で!」
子供のように言う玲に抄介は思わず笑いながら問いかけた。
「なんでダメなんだよ?」
「真似っこはダメです」
真似てるわけじゃないのだが、頑なに言うので抄介は仕方ないなと言いながら、メニュー欄を見て言う。
「わかったよ。じゃあ生姜焼き定食にするかな」
言うと玲は納得したらしく、OKですと言った。
先ほどの女性店員を呼び注文をすると、玲がなぜ同じ物がダメか理由を話し始めた。
「抄介さんに別の物を注文してもらって、それを少し欲しいなぁって。俺の分も抄介さんにあげるので」
玲が照れくさそうに言い、思わず抄介は笑ってしまった。
「なんで笑うんです?」
「いや、そんな理由だったんだと思ってさ」
「なんか恥ずかしくないですか?子供みたいですよね」
「別に子供とは思わないけどさ」
「色々食べて楽しみたかったというか。今度来るときの参考も兼ねて」
フフッと笑む玲の姿に、抄介は愛しさが胸の中で広がる。
ダメと言うときは厳しい口調なのに、理由を話している時の恥ずかしげに言う姿のギャップに、抄介は可愛さで堪らない気持ちになる。
玲の行動全てを肯定してしまう自分がいる。抄介は自分にこれで良いのかと戸惑うのだが、玲の悲しい顔を見たくなくてつい全てを許してしまうのだ。
(これが惚れた弱みと言うのか?)
少し情けなさもあるが、人を好きになったら盲目になってしまうのだと納得するしかなかった。
(完全に玲中心に考えてるな)
一呼吸置くと、抄介は玲に今日起きた出来事をポツポツと話し始めた。
抄介の会話に玲は笑顔で反応し、答える。
幸せを噛みしめながら会話のラリーを繰り返している最中、ふと玲が話題を変えてきた。
「そう言えば俺、実は二週間くらい清掃業を休むんです」
「え?」
思わぬ話に抄介は驚きを隠せなかった。
「二週間も休むのか?」
「はい、別の仕事がちょっと忙しくて。だから抄介さんと休憩室で会うのは暫くできないです」
申し訳なさそうに玲は言うが、抄介は気落ちしながら動揺していた。
「そうか、二週間か」
寂しげに呟く抄介の姿を見て玲は怪訝そうに言った。
「たった二週間ですよ?もし良ければLINEとかで連絡して下さい」
玲は簡単に“たった二週間”というが、抄介にとっては“二週間も”なのだ。
毎週の唯一のオアシスがないと思うと、大袈裟だが光のない闇にいるようだった。
抄介にとっては玲が光の存在となって、自分を癒し励ましてくれているのだ。
そのことを玲は知らないからこそ、不思議に思うのは当たり前だった。
心配そうに玲から見つめられ、抄介は慌てて返答をする。
「あ、ああ。また連絡する」
そう言い、玲を困らせないよう無理やり笑顔を作り、必死に話題を作って会話を再開した。
二時間程その店で過ごした二人は、満たされたお腹を軽く叩きながら店を後にした。
「美味しかったですね!」
「そうだな、玲は今度生姜焼きに挑戦するのか?」
「そうですね!今度は生姜焼き食べます!楽しみだな~」
そんな話をしながら夜道を二人は歩き始めた。
時間はまだ十時前。
抄介はまだ玲と離れたくなかったので、必死に話題を作って彼を引き留めた。
暫く会えないと言われると引き留めたいと欲が出る。
ふと抄介の視界に小さい公園が目に入ってきた。
見ると人はおらず、一つだけベンチが置いてあったので、思わずそこで玲と二人きりで話がしたいと思った。
「なあ、あそこでちょっと話をしないか?」
抄介は指で場所を指し玲に声をかける。言われるままその公園を見ると、彼はいいですよと返事が来た。
初めて入った公園は何本かの木が土地周辺を囲っていて、遊具はなくポツンと三人程座れそうなベンチが置いてあり、子供が遊ぶには物足りない公園だった。
土地が余ったから無理やり公園を作ったように見える。
二人はベンチに座り、のんびりと夜空を見上げていた。
「意外とここからも星が見えたりするんですね」
楽し気に夜空を見上げている玲に、抄介は横眼で見つつ頷いた。
「そうだな」
それ以上言葉が続かず、抄介は口籠った。
引き留めたくて公園まで来てしまったが、いざ話そうとすると言葉が出てこない。
話したいのに胸がいっぱいで言葉が出て来ないのだ。
(あとは玲の傍に居たいだけ、それだけってこともある)
自分勝手な行動に玲を振り回していることに申し訳ない気持ちもあるが、それでも二週間会えないのなら会えない分の思い出が欲しいと思ってしまったのだ。
妙に静かな抄介に玲は怪訝に思いながら口を開いた。
「抄介さん、何か悩んでいるんですか?」
「え?」
突然問われ抄介は困った表情になった。気持ちを悟られたのだろうかと一瞬疑った。
「いや、別に悩んでないよ」
「そうですか?なんだかさっきから元気がないように見えたから」
抄介は玲と視線を合わせると、彼は苦笑いをしていた。
「あ・・・ごめん。気を遣わせた?」
「はい、ちょっと気を遣いました」
いたずらっ子のように笑いながら言う玲に、抄介は再びごめんと言い何か言わなければと思って、思い浮かんだことを口にした。
「そうだ、玲は今の国内情勢のことをどう思う?」
「は?え?」
急に国内情勢の話題を振られ、玲は困惑していた。
「えっと、俺、あんまり詳しくないので何て言っていいか・・・」
「あ、そうだよな」
お互い苦笑いをし合い、抄介は頭を掻いた。
ここまで来て国内情勢の話をしたところで何が楽しいのだ。
引き留めたいが為に焦って、訳のわからないことを言ってしまったのだ。
「ごめん、変なことを言って・・・」
「いえ、いいんですけどね」
笑いを少し我慢しながら玲は返事をする。その姿を見て、抄介はチラリと自分の腕時計を見た。
「もう帰らないとマズいよな?」
「そうですね、確かに・・・終電に間に合わなくなるので」
抄介に言われ携帯を見た玲は、申し訳なさそうに言いながら更に彼の顔を覗き込んだ。
「本当に大丈夫ですか?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
心配そうに見つめる玲の目に、抄介は申し訳なくなる。
個人的な感情で彼を独占し、逆に心配かけさせている。
定食屋の時と雰囲気が変わっているので、きっと玲は戸惑っているのだと思う。
「もし何かあったらLINEして下さい!電話でもいいし」
「玲・・・」
微笑む玲を見て、抄介は一層淋しさが込み上げる。
落ち込んでいる抄介を見て玲は一瞬困った顔をするが、ふと思い出したように夜空を見上げ、そして不思議ですよねと話し出した。
「不思議ですよね。抄介さんとあの休憩室で出会ったなんて」
「玲?」
抄介は怪訝そうに玲を見つめた。
「この夜空にある星を見て、ふと思ったんです」
言いながら玲は夜空を見上げていた。
「星の数ってとんでもなくあって、たまたま目に入った星を偶然見つけて、綺麗だなって思うじゃないですか」
「そうだな」
急な例えに抄介は戸惑いながら玲の話に耳を傾けた。
「人との出会いってそれと一緒だなって思ったんです。出会いっていろんな偶然の積み重ねで出会ってると思うんです。抄介さんはあのビルにある会社で勤めてて、俺はたまたま清掃員として働いていて、偶然休憩室へ行ったら出会えて、なんだか不思議だなって」
暗くてもわかる玲の笑顔に、抄介は不思議な気持ちになる。
「俺が休憩室に行かなかったら出会えてないんですよ。これが縁ってやつですよね?」
この縁を引き合わせてくれた神様に抄介は本当に感謝していた。
ずっと仕事ばかりの生活に、心に光をくれたのだ。
「これからもこの縁、大事にしましょうね」
言って玲はすっと立ち上がった。
「ごめんなさい、俺、そろそろ帰らないと」
「あ・・・そうだな」
抄介も慌てて立ち上がった。
「それじゃあまた!二週間後にお会いしましょう」
笑顔でまた、と言う玲を見るや否や抄介は思わず体が動いた。
咄嗟に玲の腕を掴んでしまったのだ。
腕を掴まれた玲は、驚いて抄介の方へ振り返った。
その瞬間、玲は抄介に引き込まれ優しく抱き締められていた。
抄介の肩より少し頭部が見えるくらいの玲の背の高さに、抄介は更に彼を愛おしいさを感じた。
驚いた玲は抄介に抱き締められながら彼の名前を呼んだ。
「しょ、抄介さん?」
「ごめん、玲・・・」
「え?」
なぜ謝るのだろうと思いながら、抄介の言葉を待った。
「俺・・・玲のことが好きだ」
「え・・・」
突然の告白に玲は言葉が出てこなかった。
抄介が自分のことを好きだと言った。その気持ちはつまり・・・。
「それって俺の事を、その・・・」
「そうだよ、恋愛感情として好きなんだ」
切羽詰まった声色で抄介は告げると、更に玲を抱き締めた。
抄介の温もりが玲の体を包んだ瞬間、理由はわからないが妙に玲の心を安堵させた。
どうしてこんなに安心するのか少し困惑したが、彼の言葉、行動を見て冗談ではなく抄介は本気で自分の事が好きなのだとわかった。
抄介の気持ちを理解した玲だったが、どう伝えてよいものかと思考していた。抄介のことは嫌いじゃない。人としては好意があるが・・・。
静かに暫し抱き締められながら、やがて玲はゆっくりと話し出した。
「その・・・俺、抄介さんのこと、人としては大好きです。ただそういうふうに考えた事がなくて・・・」
「そうだよな、当たり前だ。俺、何言ってるんだろうな」
ハッとした抄介は、顔を背けながらゆっくりと抱き締めていた玲を離した。
玲の顔を見られなかった。きっと彼は自分に対して引いている。
抄介は気持ちが抑えられなくなっていた。好きで仕方なく、身勝手にも彼を離したくなくて無理やり抱き締めた。
もしかして嫌悪感すら抱いているかもと、じわりとマイナスな気持ちが沸きあがってきた。
暫くお互いは沈黙をしていたが、玲が先に口を開いた。
「俺を好きでいてくれるのは嬉しいです。本当です」
「・・・いいよ、無理しなくても」
「無理なんてしてません。本当です」
必死にそう言う玲に、抄介は自分がした行動が次第に恥ずかしく思えてきた。
玲に気持ちを伝えたところで何かが変わるとでも思ったのだろうか?伝われば玲が困ることをなぜ想像できなかったのか、あまりにも先走る己の気持ちが卑しく感じたのだ。
そして伝えた瞬間、二度と玲と会うことができなることも・・・。
「ごめん、忘れてくれるか?」
「え?」
自分が驚くほど、抄介はさっぱりとした物言いだった。
これ以上玲に気を遣わせたくない。そしてこれ以上自分が惨めになりたくない。
色んな思いが交差して、出てきた言葉がそれだったのだ。
「抄介さん・・・」
「悪い、本当に忘れてくれ。俺もどうかしてたんだ。ごめん」
何度も謝る抄介に玲は、だんだん悲しくなっていた。
「なんでそんなに謝るんですか?何も悪いことなんて・・・」
「お前に嫌な気持ちにさせただろう?」
「嫌な気持ちになんかなっていません!どうしてそんなに自分を卑下するんですか?」
問われて抄介は言葉が出てこなかった。
卑下しているつもりはない。本当の事だ。友人として思っていてくれたのに抄介は別の感情で接していたのだ。
触れたいとか一緒にいたいとか、笑顔が見たいとか色んな邪まな感情だった。
「卑下するよ、俺は玲に対して恋愛感情で見てたんだぞ?これからもそんな俺と話せるか?」
「・・・・」
玲は暫く無言になる。
言えるわけがない。無理に決まっているのだ。
「玲を困らせることはもうしない。ちゃんと玲との距離を保つから」
僅かに震える声で抄介は答えた。
「距離を保つ?」
抄介の言葉に玲は反応し復唱するが、抄介は自分の世界に入ってこれで終わりだと絶望の表情をしていた。
玲はそんな抄介の顔を見ると一つ深呼吸し、真っ直ぐな目と真面目な表情で彼に向かって言った。
「俺は抄介さんの気持ちを知っても話せます。そして俺・・・」
一瞬間があり、その続きを抄介は見守った。
「俺、抄介さんとお付き合いできます」
はっきりとした口調で玲は耳を疑う言葉を口にした。
「は?」
今、玲は何て言ったのか理解できず、あまりにも抄介の予想外の返答で頭が混乱し、随分と間抜けは声が出てしまった。
「い、今何て言った?」
「だから俺、抄介さんと付き合えるって言ったんです」
「は、はあ?」
堂々と付き合えると告げた玲に対して抄介は、根本的に何か勘違いしているんじゃないだろうかと疑った。
「付き合うって、友達関係の続きじゃないぞ?」
「わかってます。俺だって女性ですけど付き合ったことあるので」
「俺と・・・その手を繋いだり・・・キ、キスしたり・・・」
「できると思います」
これは就活の面接なのだろうかと思うような問答だった。
信じられなかった。本気で玲は言っているのだろか?なぜこんなに即答できるのだろうと。
玲は同情心からこんなことを言っているのではないかと思い、更に抄介は彼に問いかけた。
「同情なのか?」
「そんなことできるほど俺、お人好しじゃないです」
「じゃあなんで・・・」
そう言いかけた時、玲の手のひらが抄介の顔を包み、顔ごと彼の顔へと引き寄せられた。
そしてお互いの唇が重なり合った。
柔らかい感触が抄介の唇から感じられ、自分の身に今何が起きているのか思考が停止する。
玲の長いまつ毛を久しぶりに間近で確認した瞬間、今どういう状況かようやく理解できた。
本当に触れるだけのキスだったが、抄介にとっては濃厚な時間に思えた。
「・・・玲」
顔を離し、玲は頬を赤らめてどうだと言わんばかりの表情をしていた。
「これで信じてもらえましたか?」
「・・・ああ」
「よかった!じゃあ俺たち恋人同士ですね」
「うん、いや、うん」
再び混乱し始めた抄介だったが、玲は笑顔で手を振りながら言った。
「これからよろしくお願いします!」
そう言い踵を返すと、抄介を背にして最寄り駅へと向かって一人走って行ってしまった。
去り行く姿に何も言えず、抄介は愛しい存在の背中を見送ることしかできなかった。
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。