ある休憩室で突然一目惚れをした話

リツキ

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15.

 

 仕事を終えると抄介はそそくさと会社を後にした。
 今後どうするべきか頭の中が混乱している抄介は、再びアキラの店へと向かっていた。
 誰か同じような経験をした人がいないか情報を得たかったのだ。
 店へ入ると二カ月ぶりのアキラの姿がカウンター越しから見えた。
 抄介を見るなり、アキラはあらっと声をかけてきた。
「最近よく来てくれるじゃない。抄ちゃん」
「こんばんは」
 静かなトーンで挨拶をする抄介を見て、アキラは怪訝そうに尋ねた。
「どうしたの?なにかあったの?」
 察しの早いアキラに抄介は苦笑しながら答えた。
「鋭いですね、アキラさん」
「何を言ってるの。あなた結構わかりやすいのよ」
 そう言い、アキラが立っている前のカウンター席が空席だったので、そこに抄介は座った。
 アキラが感じるほどそれだけ抄介の顔が真剣な表情だったのだろう。
 表情の硬い抄介に何も言わず、お通しを出したアキラは静かに問いかけた。
「何があったの?この前言っていた子の話?」
「・・・はい。実は今、その子と、その・・・付き合ってて・・・」
「あら、そう・・・え?」
 驚きアキラは一瞬言葉が出て来なかった。
「付き合ってるの?例のイケメンな子と!?」
「は、はい。色々あって、思わず告白したらOKしてくれて、それで俺の事も好きになってくれたみたいで」
 静かに笑む抄介の表情にアキラは一緒になって笑顔になった。
「そう、良かったじゃない。あれからどうなったのかなって思ってたのよ。好きなわけないって言い切ってたから、大丈夫かしらって思ってたの」
 当時の事を思い出した抄介は苦笑しながら答えた。
「はい。多分気づいてたんだろうけど認めるたら自分が変わってしまう気がして怖かっただけなんです。でも認めても自分は何も変わらなかったし、ただ、その子が好きなだけだった」
 言って抄介の表情が次第に暗くなっていった。
「ただ、好きでいたいだけだったのに」
「・・・本題に入りましょうか?」
 真剣な表情になるアキラに抄介は緊張しながら話し始めた。
「今日、休憩室でその子と会う日だったんですけど、色々話している最中、その子が俺とキスしたいって言ってきて、今までその休憩室に人は来なかったから大丈夫だろうと思って、ついしてしまったんです。そうしたら俺の同僚に見られてしまって」
「え?」
「その同僚、俺の事をライバル視していて、俺の弱点を探してたらしくって、いつも機嫌良さそうに休憩室から帰って来るのを怪しんでたみたいで」
 話すうちに少しずつ声のトーンが落ちていく抄介に、アキラは気遣いながら声をかけた。
「それって、その同僚が職場の人に話すかもしれないってこと?」
「ええ。今日は特に何もなかったけど、明日からどうなるかと思うと憂鬱で」
「・・・・」
 一旦アキラは沈黙し、抄介が毎回頼むビールを出した。
「その子は見られた後、どうしたの?」
「不安がってました。そして俺に謝っていて。ごめんなさいって」
「それは自分からせがんだからってこと?」
「そうだと思います。俺もまさか同僚が来るなんて思わなかったし、本当に普段は休憩室には誰も来ないんです。ある程度足音が聞こえたりするし人の気配があるから対応できるんだけど、明らかにあいつは静かに休憩室まで来ていたんです」
 暗く落ち込んでいた抄介の表情が次第に怒りの表情に変化した。
「俺も迂闊だったんです。断ればよかったんだ」
「抄ちゃん、あなたのせいじゃないわよ。それにその子のせいでもない。探る行動は完全に悪意があるもの。明らかにその同僚が悪いわ」
「ありがとう、アキラさん」
 アキラの優しさに抄介は少しだけ気が楽になる。
 しかし今後、職場の人たちに田所が話をしていたらと思うと再び不安が沸き上がってきた。
「俺、どうしたらいいですか?」
 抄介は思わず弱音を吐いた。
 あまりこんなことを言ったりしないが、流石に今回の件はどう対処した方がいいのかわからないのだ。
 アキラは静かに抄介を見つめ、優しく言った。
「とりあえず明日行ってみて様子を見たらどう?様子を見てそれから考えたら?あなたはその職場の人間関係って良い方?」
「・・・まぁそれなりに。最近は女子社員たちが気さくに声をかけてくれるようになりました」
「あら、いいわね。可愛い恋人にやきもち妬かれないようにね」
 アキラなりに彼を元気づける為にそう言い、抄介は苦笑する。
「そうですね。そのライバル視する同僚以外の男性社員も特に問題ないけど、それと性癖は関係ないから」
 言って再び抄介の表情が暗くなり、その様子にアキラ堪らなくなり口を開いた。
「もし聞いて来る人がいたら違うよって言いなさい。あいつが嘘を吐いてるんだって」
「は、はい・・・」
「馬鹿正直に言う必要なんてないのよ。同性が好きってことを全員に理解させることなんて難しいことなのよ」
「アキラさん」
「スルーすること。幸せはあなたと相手の子の中だけで感じていればいいんだから。他人は関係ないわよ」
「・・・そうですね」
「とりあえず明日様子を見てそれから考えましょう。また相談して!私でよければ聞くから」
 アキラの優しさに抄介は励まされ、やっと少しだけ元気が出る。
 休憩を終えてからずっとどう先を歩いてよいかわからず、かなり考え込んでいたがアキラの言葉でようやく光が見えた気がしたのだ。
「そういえばその相手の子、何て言うの?」
 表情が少し明るくなった抄介を見て、アキラは更に玲の事を尋ねた。
「玲って言うんです。本当に無邪気で可愛いんですよ。ずっと俺は彼と一緒に居たいって思ってます」
 幸福感で満たされた抄介の笑顔を見て、アキラは苦笑しながら言った。
「そうとう好きなのね。写真とかある?」
「ああ、この前会った時に写真撮ったんだ!」
 笑みを作りながら抄介は携帯を出し、二人で海に行った時の写真を見せた。
「この子です」
「どれどれ」
 嬉々として渡された携帯を見たアキラは、最初は可愛いわねと言っていたが、暫くジッと写真を見続けていた。
 何か考えているのか、アキラの様子が変だと思い抄介は彼に問いかけた。
「アキラさん?どうしました?」
「・・・この子、玲って言ったわよね」
「え?は、はい」
 アキラの表情を見てどうしたのだろうと抄介は怪訝に思う。
「この子、苗字は何て言うの?」
「え?」
 何を言い出すのだろうと思い、抄介はおそるおそる苗字を言った。
「芹沢ですよ」
「芹沢?三雲みくもじゃなくて?」
「は?」
 アキラの言っている意味が全くわからなかった。
 なんだ三雲とは?
「どういうことですか?三雲って誰ですか?」
「・・・抄ちゃん、この子がどういう子か知ってるの?」
「どういう子って?仕事は飲食業と清掃業してる子です」
「・・・清掃業も飲食業もしてるかもしれないけど、この子、もう一つ仕事をしてるわ」
「え?」
 なぜアキラが玲のもう一つの仕事を知っているのか全く理解できなかった。
 むしろ、アキラは何を言っているのかわからない。
「アキラさん、何を言ってるんだ?」
 全くわかっていない抄介を見て、アキラはきっぱりと言い始めた。

「この子、俳優よ」
「は?へ?」

 アキラの言っている事が一瞬理解できなかった。
 俳優?俳優って演技をする役者のことだろうか?
「え、玲が俳優って・・・嘘でしょ?だって一言もそんなこと言わなかったですよ?」
「・・・じゃあ証拠見る?」
 言ってアキラは携帯で何かを検索し、あるHPを抄介に見せた。
 そのHPは何かのドラマのページだった。
 そして何より、そのTOPページに写っている人物を見て抄介は固まった。
 そこには二人の男性が載っていた。一人は知らない。もう一人は・・・。
「・・・玲」
「そう、今私が見ているBLのドラマよ」
「び、BLって何?」
 BLの意味が全くわからなかった抄介は更にパニックになった。
「BLって言うのはボーイズラブと言って、同性愛を描いた作品のことなの。今、女性中心に深夜だけど人気があってね。特に彼が出ているこの作品は面白い話なの」
「え、え、え」
 抄介は再び混乱した。
 情報が多すぎて全てを理解するのは今の抄介にとって難しかった。
 それだけ抄介が想像していたことが斜め上過ぎたのだ。
「待って下さい、アキラさんが言いたいことって、つまり玲は俳優でそのBLっていうドラマに出ているってことなんですか?」
「そうよ、玲君はこのドラマで知った子だからまだ駆け出しの俳優さんみたいね。もう一人の俳優さんは園井さんって人なんだけど、この人はそこそこ出ている俳優よ」
 説明しながらHPを下へスクロールしていくと、抄介は指で思わず画面を止めた。
「どうしたの?」
 驚いたアキラは抄介を見るが、抄介の目が再び驚いていた。
「・・・この人知ってます」
「え、ああ、この俳優さん?確か大芝って人だったと思う」
「え・・・」
 大芝と聞いて抄介は血相が変わった。
 玲が対応に困っていたあいつだ。
 顔を見た瞬間、夜だったとはいえかなりインパクトのある相手だったから覚えていたが、まさかこの男も俳優だったとは驚くしかなかった。
「マジかよ」
 抄介はカウンターに肘を付け、頭を抱えた。
 自分が玲を助けに行ったあの日、玲は俳優仲間と食事会をしていたってことになる。
(俺は俳優相手にライバル扱いして対抗しようとしていたのか・・・)
 自分があまりにもエンタメ関係に疎く、知らなかったとはいえ無謀過ぎる自分に言葉がなかった。
 来る情報全てが強すぎて、既に抄介の頭の中は容量オーバーになっていて、今は冷静に考えることができない。
 とりあえず咀嚼できたことを抄介は静かに言い始めた。
「つまり、玲の本名は三雲玲という名前で、俳優で今深夜のBLドラマに出ているってことですか?」
「・・・そうね」
「俺、俳優と付き合ってるんですか?」
「・・・そうなるわね」
「・・・・」
 無言になり、暫く抄介は動くことができなかった。
 全てが停止している状態だ。考えることを拒否しているのかもしれない。
 でもただ一つの疑問だけが頭の中で引っ掛かっていた。
 なぜ本当の事を玲は言ってくれなかったのか?
 俳優であることを黙らないといけない理由が全く思いつかないのだ。
(自分に言う事が恥ずかしかったのだろうか?)
 疑問を抱き微動だにしない抄介に、アキラは一つ助け舟を出してみた。
「本人に聞いてみたら?」
「え?」
「そうすればはっきりするでしょ?」
「・・・そうですね」
 本人から直接聞けば確かに全てが理解できるかもしれない。
 携帯を出し暫く迷っていたが、ようやくLINE画面を出して玲に連絡しようとした時だった。

「・・・連絡先がなくなってる」
「え、どういうこと?」
「玲のアカウントが消えてる!」
「見せて!」
 慌てて抄介から携帯を奪い、LINE画面を見ると“メンバーがいません”とした表示のみが残っていた。
「これって逃げたってことですか?」
「・・・・」
 さすがのアキラも何も言えず、黙り込んでしまった。
 暫く二人は無言だった。これ以上何を言ったらいいか本当に思いつかなかったのだ。
 そのうち、抄介はとんでもないことが頭に浮かび口に出した。
「俺って利用されたってことなんですかね?」
「利用ってどういうこと?」
「今、BLのドラマをやってるって言ってましたよね?」
「ええ、まだ三話くらいかしら。それと何が関係あるの?」
「だって役者でしょ?男でBLドラマをやるなんてなかなか勇気がいるんじゃないんですか?男を好きになるってどういうことか知りたくて俺に近づいたんじゃないんでしょうか?」
「え、それってつまり、あなたを利用して役柄を勉強したかったってこと?」
「・・・はい」
 頷き抄介は再び暗い表情に戻った。
「俺、役者の勉強の為に利用されたんですよ。きっと・・・」
「え?まさかそんな・・・」
 アキラは困惑した表情で答えた。
 実のところ抄介は不思議でしょうがなかったのだ。なぜ自分と付き合ってくれたのか。
 彼なりの理由をこの前伝えてくれてあの時は本当に嬉しかったし信じたが、冷静に考えればそれすら演技だったんじゃないかと疑ってしまう。
 そもそも彼は俳優で、芸能人だったのだ。おまけに抄介はテレビをあまり見ないので芸能関係に疎い。
 利用するには都合が良く、素人の抄介を騙すのは容易いことだったろう。
 アキラは玲の事が気になり、携帯で彼のプロフィールを検索し出した。
 そこで思わぬ記事が目に入ってきた。
「抄ちゃん、この子一度女優と写真撮られてるわ」
「え・・・」
 言ってアキラはその記事のページを抄介に見せた。
 記事を読み進めていくうち、更に抄介は混乱していった。
 その記事は三年前のもので、当時名前が売れていた二十代の女優とデートをしているところを撮られていた。
 お互い交際は認めていなかったが、それでも一緒に仲良く歩いている写真は今の抄介にとってはかなり堪えるものだった。
 やはり女性が好きだったのだ。それなのに自分と付き合うということは、やはり役者としての経験が欲しかっただけじゃないだろうか。
 暫く黙り込んでしまった抄介は、カウンターのテーブルに突っ伏した。
 アキラは声をかけようとしたが、あまりにも落胆している抄介にかける言葉がなかった。

 周りは談笑で響き渡り、音楽もテンポのいい曲が流れている中、雰囲気が更に抄介の困惑と孤独な気持ちに拍車をかける。
 今まで玲と築き上げた時間や想いは何だったのか、抄介はわからなくなっていた。

 何分か時間が経つと、ゆっくりと抄介は起き上がり虚ろな表情で静かな口調で話し始めた。
「玲に初めて会った時、彼は俺の周りにはいないオーラがありました。恥ずかしながら俺はそのオーラに惹きつけられたんです。今思えば、彼が芸能人だからこそあるオーラだったのかなって。なんか俺、馬鹿みたいですね」
「抄ちゃん」
 頭を再び抱えた抄介は俯いたまま、もうそれ以上言葉が出てこなかった。
 そしてアキラもさすがに続ける言葉を失っていた。
(俺と玲との関係は一体なんだったんだよ)


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