23 / 27
23.
ふと目を覚ました玲は、体を起こそうとするが腰に痛みを感じ起こせずにいると、背後から背中越しに抱き締めて来る人物がいた。
顔だけそちらへ向けると、抄介の優しい顔があった。
「おはよう、玲。今6時だよ」
「・・・おはようございます。もう起きていたんですね」
満面な笑顔で迎えられ、起きて早々玲は恥ずかしさで顔を赤らめた。
「綺麗な背中だな」
抄介は玲の背中を一瞥すると、再び抱きしめる。抄介の体温が背中越しから伝わり、少しだけ玲はときめいていた。
「そんなことないです」
「そんなことあるよ。本当に色白で綺麗だ」
「恥ずかしいです」
「昨日も色っぽかった」
そう言って抄介は玲の後ろの首筋に軽くキスをする。
「い、色っぽいって・・・初めて言われました」
背後からもわかる玲の頬と耳がすっと赤く染まっていった。
「本当だよ、普段の玲は可愛いのにちょっとしたギャップだった」
くるりと玲は抄介の方へと向かうと、玲は抄介の頬にゆっくりと触れる。
穏やかで幸せに包まれた抄介の表情に、玲も多幸感に満たされた。
「夢じゃないんですね」
「夢だったらお互い裸じゃないよな?」
意地悪な笑みで答える抄介に玲は更に恥ずかしさが増した。
「・・・そうですね」
そう言って抄介は玲の唇に優しくキスをした。
抄介は玲が愛おし過ぎて、ずっと自分の下から離そうとしない。
かなり締まりのない顔で玲を見つめていた。
「俺も起きた瞬間、昨晩のことは夢じゃなかったんだなって思ったんだよ」
「抄介さんも?」
「この展開になるなんて、玲が来る前に想像してなかったから」
言われて玲も頷いた。
「そうですね、俺もまさかこんな・・・裸で二人、布団の中にいるなんて想像してなかったです」
布団に潜り込みながら玲は言い、抄介は潜る彼を優しく髪に触れながら言った。
玲は嬉しそうに笑むが、次第に言い辛そうな表情に変わって、実はと話し始めた。
「実は俺・・・初めてだったんです」
「え?初めてって・・・何が?」
キョトンした表情で尋ねる抄介に、更にモジモジとしながら玲は答えた。
「その・・・Hすることです」
「・・・え?」
驚き抄介は玲を見つめると、困った表情で見つめ返していた。
「Hが初めてって、すること自体がってことか?」
「・・・はい」
「え!!」
抄介は信じられず声を上げた。これほどの美貌で経験がないなんて考えられなかったからだ。
「誰とも付き合ったことがなかったのか?」
「いえ、あります。でもそこまでいかなかったというか。そういう雰囲気はあったんですけど邪魔が入って進まなかったというか」
「マジかよ」
再び驚き抄介は玲をマジマジと見つめていたが、恥ずかしそうに玲の手のひらが抄介の視界を塞いだ。
「あんまり見ないで下さい。恥ずかしいので」
「・・・つまり、玲の初めてって俺ってこと?」
高鳴る心臓を抑えつつ抄介は玲に尋ねると、黙って静かに頷いた。
「引きましたか?」
恐る恐る玲は抄介に尋ねるが、抄介は静かに顔を横に振った。
「そんなわけないだろう!嬉しいよ。玲の初めてが俺だなんて・・・」
言って嬉しそうに抄介は玲の頬を撫でると、ホッとした表情になった。
抄介はこれほどまでに惚れた相手の初体験が自分だったなんて、こんなに嬉しいことはない。
幸せを胸に抱きながら暫く抄介に寄り添っていた玲だったが、再び何かを思い出したのか急に曇った表情になった。
「・・・俺たちの関係、事務所にバレたら何て言われるんだろう」
抄介は彼の顔を見て優しく諭すように口を開く。
「実はさ、玲のマネージャーさんにこの前声をかけられたんだよ」
「え、どうしてですか?」
驚き、玲は少し体を起こしかけた。
「たまに外を散歩していて、その時丁度映画の撮影現場に出くわすことがあったんだけど、遠巻きで見てたら声をかけられた。倉沢抄介さんですよねって」
「え、なんで桜川さん知ってたんだろう」
驚きながら玲は疑問を口にする。
「二人で撮った写真を見て覚えていたらしい」
「・・・そうだったんですね」
玲は神妙な面持ちで返答した。
「それで散々玲とは生きている世界が違うって言われて、確かにそうだとは思っていたから、言われたことで余計そう思い込んでしまったというのか。でも玲がこの部屋に来て、もう二度と会えないと思ったら、勝手に体が動いてたんだよ」
「抄介さん」
お互い一瞬微笑み合うが、それでも玲の不安は消えてはいない。
抄介は不安な玲の視線を合わせてきっぱりと言い切った。
「マネージャーさんにバレたらかなり怒られるかもしれない。その時は俺も一緒に怒られるよ。それでわかってもらえるよう説得する」
「抄介さん」
抄介の言葉に玲は嬉しくて抱き締め、抄介も抱き締め返した。
「俺はもう迷わない。俺はこれからも玲と一緒にいる」
「・・・俺もです。抄介さんが大好きです」
抱き合いながら暫く二人は幸せの余韻に浸っていた。
「俺、そろそろ行きますね」
服を着て身支度を整えた玲は、振り返り抄介を見た。
散々いちゃついた後、二人は揃って温泉に行き体を洗うと、玲が八時には旅館を出ると言っていたので、慌てて抄介の部屋に戻り服に着替えた。
「あ、そうだ!」
抄介は玲を呼び止め、携帯を取り出した。
「連絡先を教えて欲しい。玲の携帯の連絡先をね」
「はい!今それをしようと思って」
にっこり笑った玲は、パンツのポケットから携帯を取り出し、お互いの連絡先を教え合った。
「これは本物です。だから安心して下さい!」
「・・・うん」
噛みしめるように抄介は頷いた。
「いつまで抄介さんはここにいるんですか?」
「あと一週間ぐらいかな。もうちょっとのんびりしようと思って」
「そうですか。撮影もあとに二週間くらいだって言ってました。俺はそんなに出番があるわけじゃないので一週間で終わりましたけど」
「そっか」
なんとなくお互い離れ難く、立ちながら暫し沈黙が続いた。
しかしあと十分程で八時になろうとしているので、玲を解放しなければならなかった。
「また連絡します」
玲は澄んだ瞳で抄介に言う。
「うん、俺も連絡するから・・・」
そう言って抄介は玲の手に触れ、繋いだ。
「また、デートしような」
「はい。今度こそキャンプ行きましょうね!」
満面な笑顔の玲に抄介は惹かれ、玲の唇に自分の唇を重ねた。
優しく触れ合うと、すっと玲から離れた。
「頑張ってこいよ。応援してる」
抄介の力強い言葉に玲は少し感動し、はいと言った。
手を振って、部屋を出て行く姿が見えなくなるまで、抄介は見送っていった。
あなたにおすすめの小説
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
告白現場に遭遇したら、まさかの俺の推しだった
花魁童子
BL
配信者である主人公の浅葱は、推しの告白現場に居合わせてしまった。そしてそれと同時に推しには好きな人が⁉ それを知ってしまって、推しとまさかの付き合うことになってしまう。偽りの恋人だけどなぜか嬉しく感じる。高校生活を送っていくうちに芽生える思い‼ 二人の気持ちはどうなるのか⁉