生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1331.お守り

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「いつもより、ひとがおおかったもんね」
「…ごめんな」

 少年が差し出した黒色をした木製のコインのような物を、女の子はそっと受け取った。

「ううん。ありがと、ネスにいちゃん」

 お兄ちゃんの名前は、ネスくんって言うのか。

「残念だったな、ウル、ネス」

 屋台のおじさんはそう声をかけると、二人まとめて優しく抱きしめた。

「ウルは分かるけど…俺も?」

 びっくり顔をしたお兄ちゃんからの質問に、おじさんはもちろんだともと頷いた。

「ウルのためにって頑張ってくれたんだから、ネスもだよ。残念に思うのも、悔しく思うのも当たり前だ」

 そう言いながらぽんぽんとお兄ちゃんの頭に優しく触れるおじさんは、やっぱり良いお父さんみたいだ。

「でも…渡せなかったのに…?」
「渡そうとしてくれた事に意味があるんだよ。俺は屋台から離れられないし、ウルにはあの場所は危険すぎるからな。よく頑張ってくれた。ありがとう」

 まさかそんな事を言われるとは思ってもみなかったのか、ネスと呼ばれた少年は一瞬だけ今にも泣き出しそうに顔を歪めた。けれどちらりと今も父親に抱き着いている妹の姿を見て、ぐっと涙を堪えた。

 おお、これがお兄ちゃんの意地ってやつかな。一人っ子の俺にはその辺りはよく分からないけど、この家族の関係が良いものだって事だけは分かったよ。

「なあ、そのお守りは、その子が作ったのかい?」

 黙って三人のやりとりを見守っていたハルが、不意にそうおじさんに尋ねた。たしかにお兄ちゃんは、妹さんの作ったお守りって言ってたよね。

「ああ、ウルはまだ幼いのに手先が器用でな。多分俺の伴侶に似たんだと思うんだが…」

 嬉しそうに笑って教えてくれたおじさんは、なあ、ウルと女の子に声をかけた。

「うん。ネスにいちゃんにてつだってもらってね、ふたりでつくったの」

 ウルちゃんは物怖じしない人懐こい性格らしく、俺とハルに向かって普通にそう教えてくれた。

「そうなんだ、お兄ちゃんも一緒に作ったんだね」
「いや、俺はそこまで参加してない…」

 ネスくんは首を振りながら否定しようとしたが、それよりも早くおじさんが続けた。

「何言ってるんだ。ヴァコクを丸く切り出してこの形に加工したのはお前だろ。もっと自慢しても良いんだぞ」

 あ、さっきのあのお守りの黒色って、染めてるとかじゃなくてヴァコクの木を使ってるからなのか。ヴァコクは、ドラゴンの炎以外には耐えられるこの地域の特産の木だ。

「ヴァコクは大人でも加工が難しいのに…」

 ハルが感心した様子でそう呟けば、おじさんはそうなんだ息子もすごいんだぞとニコニコしている。フリフリのエプロンはやっぱりちょっと気になるけど、何だか中身が可愛らしいおじさんだ。

「ねぇ、そのお守り、見せてもらっても良い?」

 拒否されるかなと思いながら聞いてみれば、ウルちゃんは即答で答えてくれた。

「もちろん!」

 ウルちゃんはさっと開いた両手の上にお守りを乗せて、まるで捧げるようにして俺達に見せてくれた。

 しゃがみこんでいた俺は、間近でそのお守りを見た。

 正直に言えば、見た瞬間は本気で驚いたよ。失礼だけど、無意識のうちにこどもの手作り感のある、微笑ましいものを想像してたんだよね。

 でもこのお守りはそんなものじゃなかった。

 艶やかな黒色が美しく見えるように磨き上げられたヴァコクの上には、花と葉っぱの模様の溝がうっすらと彫られている。その溝の中に塗料か何かをしみ込ませているのか、金色の細い線が溝に沿って走っている。

 こども二人で作ったとはとても思えない、見入ってしまうぐらい綺麗なお守りだ。売り物としてどこかに並んでいても、俺は驚かないって出来栄えなんだよ。

「…すごいな!」
「うん、すごいね!すごく綺麗だし、格好良い!」
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