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1347.【ハル視点】最短ルート
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「すまない、通してくれ!」
そう声をかけるだけでささっと道を開けてくれる使用人たちの横を駆け抜けながら、アキトと俺は揃って感謝の言葉を投げかける。
「ありがとう!」
「ありがとうございまーす!」
そう声をかけつつも先を急げば、背後から使用人たちの声が聞こえてくる。
「いえいえ」
「お気になさらずに」
よく俺たち兄弟が裏の廊下を駆け抜けていたせいで、みんなこういう時の対応に慣れているんだよな。いや、俺達兄弟がと言うと、キースも含まれてしまうか。キースはおそらくだが、裏の廊下を走り抜けたりはしていないだろうから一緒にしたら駄目だな。
正確に言うなら、ファーガス兄さんとウィル兄、そして俺が、だな。
それにしても何の説明もしなくてもすぐに道を開けてくれるのは、すごく助かる。特に今のように時間が無い時には。
「ハロルド様、お気をつけて!」
「アキト様もお見送りいってらっしゃいませ」
そう声をかけてきたり手を振ってくる使用人たちに反応を返しつつ、俺達はどんどん先へと進んで行く。
「ハル。ま、間に合うのっ?これ」
「もちろん、間に合うさ」
隣に並ぶようにして走っていたアキトは、俺の答えを聞くなりパッと廊下を見回した。
「しゅ、出発前にあんな事してごめんね!もし遅刻したら俺が悪い!」
ああ、今の動きは他の人が近くにいないかを確認していたのか。謝る必要なんて無いんだが、もしかしたら間に合わないかもと心配になったんだろう。
「そんな事言わないで。本当に嬉しかったんだから!」
大丈夫だからとすぐに叫び返した俺は、あの緑のドアから外に出ようと提案した。
「え、外に出るの?」
「ああ、わざわざ遠回りして玄関に向かうよりも、あのドアから一度城の外に出て回り込んだ方が早いんだ」
「分かった!」
本当に?とかそうなの?とか聞かずに、すぐに俺を信じてまかせてくれるのが嬉しい。
「こっちだよ」
辿り着いたドアの前で急激に速度を落として立ち止まると、俺は決められた場所に順番に手で触れていく。
ドアの上部にある彫刻の鳥、ドアの右側にあるわずかなくぼみ、ドアの中心にある小さな魔石、ドアの右上にある小さな花に触れた後、最後にドアノブを握りこむ。
ここまでくれば、あとはドアノブの下側に目立たないように埋め込まれた魔石に、ゆっくりと魔力を送り込めば開く。
アキトは不思議そうに、まじまじと俺の行動を見つめていた。しかもドアノブを握りこんで動かないから余計に気になっているんだろうな。
「これはね、手順通りにしないと開かないドアなんだ」
「え、そうなの?」
このドアは直接外に繋がっている。つまり招かれざる客の侵入口や、脱出口にされる可能性もある。だからこういう外と繋がるドアは、手順を知らないと開けられないようになっているんだ。
そう説明すれば、アキトは楽しそうに目を輝かせていた。
「今は魔力を送り込んでるからもう少し待っててね」
必要な魔力はほんのわずかなものだが、焦らずにゆっくりと流さないと駄目なのが少しだけ面倒だ。
さらに数秒待つと、ドアノブの手ごたえが変わったのが指先から伝わってきた。
「はい、どうぞ」
そっとドアをあければ、目の前にあるのは数本の大きな木だ。ここのドアの存在を知らなければ見つける事すらできないように、木で隠されている。しかも年々分かり難くなるように、庭師たちが本気を出しているんだよな。
もはやドアの存在を知っていても、見つけるのが難しいぐらいにはなっている。
アキトは興味深そうにドアを見つめていたけど、ハッとした様子で顔をあげた。
「ハル、急ごう!」
「そうだね!」
アキトと俺が全力の早足で城の門の前まで辿り着いた時、ちょうどファーガス兄さんとマティさんが城の中から出てきた。
ジルさんとウィル兄さんは、近くの木の下で騎士たちと何かを話している。
少し離れた森の所には、何頭ものウマとその世話をするギュームたちウマの世話係の姿がある。
よし。ほぼ参加者は揃っているようだが、父さんはまだ来ていないな。
「ま、間に合った…?間に合ったよね?」
「ああ、間に合ったな」
良かったーと嬉しそうに笑うアキトに笑い返してから、たくさんの騎士たちが集まっている集団の端の方へと向かう。俺達はまるでさっきからここにいたかのようにそこに混ざりながら、約束の時間を待った。
待ち合わせ時間になると、領主城から父さんとボルトが出て来た。
自然とその場にいた全員の視線が、二人に集まる。
ボルトはすっと前にでると、みなさまお集まりいただきありがとうございますと声をかけた。
「本日の出発式は、領都大門前にて実施いたします。つきましては事前にお声がけした方以外は各自大門前まで移動をお願いします」
そう呼びかけたボルトは、全員が頷いたのを見て隣に立つ父さんに視線を向けた。
「ボルトから説明があった通り、詳しい話は大門前でする事になる。見送りの住民が来ていると思うが、各自対応してくれ。解散」
父さんからの解散の声に、騎士たちは揃ってざっと敬礼をした。
そう声をかけるだけでささっと道を開けてくれる使用人たちの横を駆け抜けながら、アキトと俺は揃って感謝の言葉を投げかける。
「ありがとう!」
「ありがとうございまーす!」
そう声をかけつつも先を急げば、背後から使用人たちの声が聞こえてくる。
「いえいえ」
「お気になさらずに」
よく俺たち兄弟が裏の廊下を駆け抜けていたせいで、みんなこういう時の対応に慣れているんだよな。いや、俺達兄弟がと言うと、キースも含まれてしまうか。キースはおそらくだが、裏の廊下を走り抜けたりはしていないだろうから一緒にしたら駄目だな。
正確に言うなら、ファーガス兄さんとウィル兄、そして俺が、だな。
それにしても何の説明もしなくてもすぐに道を開けてくれるのは、すごく助かる。特に今のように時間が無い時には。
「ハロルド様、お気をつけて!」
「アキト様もお見送りいってらっしゃいませ」
そう声をかけてきたり手を振ってくる使用人たちに反応を返しつつ、俺達はどんどん先へと進んで行く。
「ハル。ま、間に合うのっ?これ」
「もちろん、間に合うさ」
隣に並ぶようにして走っていたアキトは、俺の答えを聞くなりパッと廊下を見回した。
「しゅ、出発前にあんな事してごめんね!もし遅刻したら俺が悪い!」
ああ、今の動きは他の人が近くにいないかを確認していたのか。謝る必要なんて無いんだが、もしかしたら間に合わないかもと心配になったんだろう。
「そんな事言わないで。本当に嬉しかったんだから!」
大丈夫だからとすぐに叫び返した俺は、あの緑のドアから外に出ようと提案した。
「え、外に出るの?」
「ああ、わざわざ遠回りして玄関に向かうよりも、あのドアから一度城の外に出て回り込んだ方が早いんだ」
「分かった!」
本当に?とかそうなの?とか聞かずに、すぐに俺を信じてまかせてくれるのが嬉しい。
「こっちだよ」
辿り着いたドアの前で急激に速度を落として立ち止まると、俺は決められた場所に順番に手で触れていく。
ドアの上部にある彫刻の鳥、ドアの右側にあるわずかなくぼみ、ドアの中心にある小さな魔石、ドアの右上にある小さな花に触れた後、最後にドアノブを握りこむ。
ここまでくれば、あとはドアノブの下側に目立たないように埋め込まれた魔石に、ゆっくりと魔力を送り込めば開く。
アキトは不思議そうに、まじまじと俺の行動を見つめていた。しかもドアノブを握りこんで動かないから余計に気になっているんだろうな。
「これはね、手順通りにしないと開かないドアなんだ」
「え、そうなの?」
このドアは直接外に繋がっている。つまり招かれざる客の侵入口や、脱出口にされる可能性もある。だからこういう外と繋がるドアは、手順を知らないと開けられないようになっているんだ。
そう説明すれば、アキトは楽しそうに目を輝かせていた。
「今は魔力を送り込んでるからもう少し待っててね」
必要な魔力はほんのわずかなものだが、焦らずにゆっくりと流さないと駄目なのが少しだけ面倒だ。
さらに数秒待つと、ドアノブの手ごたえが変わったのが指先から伝わってきた。
「はい、どうぞ」
そっとドアをあければ、目の前にあるのは数本の大きな木だ。ここのドアの存在を知らなければ見つける事すらできないように、木で隠されている。しかも年々分かり難くなるように、庭師たちが本気を出しているんだよな。
もはやドアの存在を知っていても、見つけるのが難しいぐらいにはなっている。
アキトは興味深そうにドアを見つめていたけど、ハッとした様子で顔をあげた。
「ハル、急ごう!」
「そうだね!」
アキトと俺が全力の早足で城の門の前まで辿り着いた時、ちょうどファーガス兄さんとマティさんが城の中から出てきた。
ジルさんとウィル兄さんは、近くの木の下で騎士たちと何かを話している。
少し離れた森の所には、何頭ものウマとその世話をするギュームたちウマの世話係の姿がある。
よし。ほぼ参加者は揃っているようだが、父さんはまだ来ていないな。
「ま、間に合った…?間に合ったよね?」
「ああ、間に合ったな」
良かったーと嬉しそうに笑うアキトに笑い返してから、たくさんの騎士たちが集まっている集団の端の方へと向かう。俺達はまるでさっきからここにいたかのようにそこに混ざりながら、約束の時間を待った。
待ち合わせ時間になると、領主城から父さんとボルトが出て来た。
自然とその場にいた全員の視線が、二人に集まる。
ボルトはすっと前にでると、みなさまお集まりいただきありがとうございますと声をかけた。
「本日の出発式は、領都大門前にて実施いたします。つきましては事前にお声がけした方以外は各自大門前まで移動をお願いします」
そう呼びかけたボルトは、全員が頷いたのを見て隣に立つ父さんに視線を向けた。
「ボルトから説明があった通り、詳しい話は大門前でする事になる。見送りの住民が来ていると思うが、各自対応してくれ。解散」
父さんからの解散の声に、騎士たちは揃ってざっと敬礼をした。
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