生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1435.【ハル視点】人数制限

 父さんがどの集団を選んだとしても、ここに取り残される選ばれなかった人たちはきっとすぐには納得しないだろうな。

 そう考えてしまうぐらい、全員が一歩も引かずに主張している。

 まあさすがに騎士たちは、領主からの命令だと言われればもちろん従うだろう。

 だが、その不満は残るかもしれないからな。騎士よりも冒険者や衛兵、使用人を優先するんだと思われても困る。

 父さんはさてどうするか…と呟きながら、ちらりとファーガス兄さんへと視線を向けた。母さんがいれば母さんに相談するだろうが、残念ながらここにはいないからな。

 俺とウィル兄は、周囲には気づかれない程度にそっとファーガス兄さんから距離を取った。巻き込まれたくは無いからな。

「ファーガス、どう思う?」

 うつむいて何かを考えていたファーガス兄さんは、父さんの声かけにさっと顔をあげた。

「その前に…マルク殿、ひとつ質問をしても良いだろうか?」
「…っ!はい、もちろんです!」

 もう話しかけられる事はないと油断でもしていたのか、応じるマルクの声は思いっきり裏返っている。周囲にいた参加者たちからは、不意打ちで声をかけられたらそうなるよなと言いたげな同情の視線が向けられている。

「この魔道具なんだが…これも入口の魔道具と同じく、移動の人数制限があるのだろうか?」

 尋ねられたマルクは、ハッと顔をあげた。

「失礼しました。どんな効果があるのかを調べる事を優先したので、移動可能な人数制限まで調べていませんでした」

 真剣な表情で即座に謝罪をしたマルクに、ファーガス兄さんは無言のままぶんぶんと横に首を振っている。

 ただ知りたかっただけなのにマルクに謝らせてしまったからと、あれはだいぶ慌てているな。助けに入るべきだろうかと考えていると、隣にいたウィル兄が口を開いた。

「別にマルクは悪くないでしょー?そもそもこっちから質問してなかった事なんだから。謝罪はいらないよー?」
「ですが…」
「ファーガス兄さんが気にしちゃうから、ねー?」

 やっぱりこういう時の対応は、ウィル兄が一番上手いな。そこまで言われたならと、マルクもすぐに引き下がってくれた。

「わかりました。ではすぐに調べさせていただきますね」

 しばらくお待ちくださいと言い置いてから、マルクは真剣な表情で魔道具に触れるすれすれの所に手をかざした。

「あー…これは…」

 目を閉じて集中していたマルクは、パチリと目を開くなりファーガス様と声をかけた。

「ああ、もう分かったのか?」

 もはやあり得ないレベルの早さに、ファーガス兄さんも困惑ぎみだ。

「はい。ここの魔道具には、おそらく人数制限はないと思われます」
「人数制限が無い?何人でも同時に転移できると?…そんな事があり得るのか?」
「普通ならあり得ない事ですが…ここは対となる魔道具が両方とも同一ダンジョン内にあるせいか、動力が魔石などではなくムレングダンジョンの魔力のようなんです」

 飛び出してきたのは驚きの言葉だった。

 ダンジョンの魔力を利用した魔道具だと?そんなものが存在するのか?それは誰かの研究の成果なのか?もしそうだとしたら、悪用されたらどんな事態が起きる?

 一瞬でそんな事が頭の中を過った。

 周囲にいる参加者たちも、みんな大きく見開いた驚愕の目でマルクをじっと見つめている。

 マルクは視線に気付くと慌てて付け加えた。

「これは、決して人為的に行った改造や研究ではないと思います」
「そう考えた理由は?」
「あまりに魔力の流れが自然すぎるからです。いじった痕跡が一切ない。おそらくこれは、設置された後、偶然ダンジョンに吸収された結果なのでしょう」

 マルクがそう断言するほど形跡が無いなら、そうなのかもしれないな。

「…たしかダンジョンに接する形で置いていた装備品や魔道具が、ダンジョンに吸収されてしまったという報告なら読んだ事があるな…」
「ああ、そういえば私も冒険者からそんな話しは聞いた事があるな」

 冒険者と一緒に行動する事も多いファーガス兄さんは、父さんの言葉に頷いた。

「普通に考えたら、転移の魔道具を同一ダンジョンに二個も設置する事はないもんねー」

 ウィル兄の言葉に、周囲の空気も少しだけ和んできた気がするな。
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