生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1451.えんせいのおみおくり

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 シュリくんへの魔力供給は、今日もあっさりと数分で終わった。

 最近は、あんまりたくさんはもらってくれないんだよね。

 でも別に遠慮してるわけじゃないよって、シュリくんは言ってた。毎日俺が来るから、そんなにたくさんもらわなくても満たされてるって事らしい。

 シュリくんがお腹を空かせてるってなったら嫌だから、まだまだ来るつもりだけどね。

「それで、えんせいのおみおくりはどうだった?」

 興味深そうに目をキラキラさせたシュリくんの質問に、キースくんもニコニコと笑いながら説明を始めた。

「えっとね、まず一部の参加者たちで、お城から大門の所まで向かう行進があったんだ。見送りに来てくれた領民たちから歓声とか拍手が飛ぶから、すっごく賑やかなんだよ」

 僕のお父様や兄様、姉様もすごい人気なんだよーと誇らし気に胸を張って説明していたキースくんは、ついで少しだけ表情を曇らせた。

「僕はちょっとしか見れなかったんだけどね」
「あ、そうなの?なんで?」

 不思議そうに尋ねてくるシュリくんに、俺は横から答えた。

「あまりにも人が多すぎるから、キースくんの安全確保のためにって言ってたよ」
「あー…そっか。それだけひとがいたらあぶないもんね」

 理解力のあるシュリくんはあっさりと納得してくれた。

「うん、だから僕も我儘は言わなかったんだ」
「キースは、がまんができてすごいね」
「へへー褒めてくれてありがと」

 キースくんとシュリくんの可愛いやりとりを微笑みながら聞いていると、不意にキースくんがこちらを向いた。

「アキトくんは行進見れたんでしょう?どうだった?」
「ケイリーさんもファーガスさんも、それにマチルダさんも、みんなすっごく格好良かったよ。ちゃんと周りの歓声に応じたりもしてくれててね」

 あれはもう芸能人のファンサの域だと思う。

「それに他の参加者の人たちと馬にも感動したな」
「うまにも?」
「街道の両側に見送りの領民さんたちがずらっと立ってたから、通れる道幅はかなり狭かったんだよね。しかもほぼ全員が、叫んだり手を振ったりしてる中で…だよ?」
「あー…それはたしかに、きがちりそうだね」

 馬側の目線で見ても、やっぱり気が散りそうなんだ。そりゃあそうだよね。

「そんな狭い道なのにみんな隊列を崩さずに歩いてて、しかも周囲に答えたりまでしてたからすごいなって思って」
「アキトは…うまもほめてくれるんだね」
「え、もちろん。本当にすごいなと思ったからね」

 シュリくんはそっか…と呟いてから、小さな声でありがとうと続けた。

「やっぱり僕も行進見たかったな…」
「もうすこしおおきくなれば、きっとみれるようになるよ」
「そうだね。いっぱいたべておおきくなろ!」

 キースくんは、今後の目標にすると笑顔で宣言していた。

 そこで次回は我儘を言ってみようかなって結論に辿り着かないのが、この二人の可愛らしい所だよね。

「それでね、行進の後はー…大門の前で出発式があったんだ」

 それぞれ参加者が呼んだ、見送りの人がたくさん来ていた事。

 遠征参加者たちがずらりと整列した姿が、びっくりするぐらい格好良かった事。

 ケイリーさんの鼓舞するような演説に、圧倒されて体が震えた事。

 そんな事を、キースくんは嬉しそうに楽しそうに説明し続けた。

 シュリくんは的確なタイミングで質問などを挟みながらも、興味深そうに話しを聞いていた。

 ほぼ説明が終わった頃、部屋のドアがノックされた。どうぞと声をかければ、俺達の予想通りそこにはギュームさんの姿があった。

「よくいらっしゃいました、キース様、アキト様」
「おじゃましてます」
「おじゃましてまーす!」
「いえいえ、お二人でしたらいつでもどうぞ」

 優しい笑みでそう答えたギュームは、シュリくんに視線を向けるとこんにちはと声をかけていた。

「けさもあったよ?」
「あいさつは何度しても良いですから」
「…そっか、そうだね。こんにちは、ギューム」

 素直なシュリくんに、ギュームさんは蕩けるような笑みを浮かべた。
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