生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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742.たくさんの買い出し

 トライプールの街中を、俺とハルは手を繋いでうろうろと歩き回る事になった。

 周りから見ればデート中みたいに見えるのかもしれないけど、そういう甘い雰囲気は一切無かった。ハルが真剣な表情で次はこっち、その次はあっちとてきぱきと案内してくれるからちょっと緊迫感すらあった。

 まあ俺はそんな真剣な表情のハルも格好良いって、ちょくちょく見惚れそうになってたんだけどね。我ながらちょっと呆れてしまうぐらいだけど、ハルが格好良すぎるのが悪いんだと開き直りたい。

「あ、アキト、ここも入るよ」

 ハルが不意にそう声をあげたのは、大通りに面した一軒の小さな店の前だった。

 両隣の店が大きいせいかかなりこじんまりとして見えたけど、ハルが開いてくれたドアからちらりと店の中を覗いてみれば意外にも中は広々としていた。

 奥に向かって細長い作りのちょっと面白い店内には、様々なテントがずらりと並べられていた。

 色とりどりのテントは冒険者用の小さなものから、旅行客用の大きめのものまで種類豊富に並んでいる、。

「え、ここって…テント屋さん…?」
「うん、正解だよ」

 ハルはここはテントの専門店なんだとあっさりとそう教えてくれたけど、俺は不思議に思って尋ねた。

「ハル、テント買い替えるの?」

 ハルの持ってるテントはかなり立派な作りだったし、特に古いものって感じもしなかった。それに破れた所なんてのももちろんなかった筈なんだけど?

 俺のも買ったばかりだからテントはいらないし。

「いや、あのテントはまだ買い替える予定はないんだけど…今日は魔物避けの種類をいくつか揃えたいからここに来たんだ」
「え…?俺知らなかったけど、魔物避けにも種類とかあるの?」
「ああ、小型にしか効果の無いものから、中型、大型を対象としたものまで色々あるんだ」

 俺達が普段トライプールの近辺で野宿をする時に使っているのは、中型までが対象の魔物避けなんだそうだ。そもそもトライプールの近くには大型の魔物は滅多に生息していないから、中型用が一般的なんだって。

「実はアキトは何度か大型用のも使った事はあるんだけどね」

 ハルはそう教えてくれたけど、魔物避けにそういう違いがあるって知らなかったから気にした事がなかったな。

「そうなんだ…?」
「これが小型用で、こっちが中型、これは大型に対応してる魔物避けだね」

 丁寧に一つずつ指差しながらハルはそう説明してくれるけど、まじまじと観察してみても俺には違いはよく分からなかった。

 小さくうなって違いが分からないと呟いた俺に、ハルはいつか香りで分かるようになるからと励ましてくれた。

 ハルには俺が買うからここは良いよって言われたけど、俺も大型まで対応の魔物避けをいくつか買ってみた。今度もう持ってる小型と中型用のやつと嗅ぎ比べしてみようと思ってね。



 その後も買い物は続いた。

 途中からはもう考えるのも面倒になってきて、ハルに勧められるままに色んなものをどんどん買い集めていった。後はこれを全部まとめて魔導収納鞄に詰め込めば、辺境領に行くための荷物の準備は完了だ。

「こんなものかな。もし他にも思いついたらすぐに言うね」

 ハルはそう言って笑っていたから、もしかしたらまだ準備完了じゃなくてひと段落なだけなのかもしれないな。

 ハルも色々買い込んでいたから、辺境は本当に危険な場所なんだろうなと実感も湧いてきた。辺境領に行ったら、たとえ街中でもちゃんと周りを警戒しておかないとな。

 密かにそう決意していると、不意にハルが俺を振り返った。

「買い物はとりあえず終了したし、次はアキトが辺境に行く前に声をかけたいと思う人達に挨拶に行こうか」

 やっぱりとりあえず終了なんだ。

「えっと…挨拶?」

 ただ繰り返しただけの俺の質問に、ハルはぐるりと周りを見渡してからそっと俺の耳元に顔を寄せた。

「俺達の使う移動手段については、あんまり詳しく説明できないんだけどね…?」

 領主城にある転移の魔法陣は一般には秘匿されてるって言ってたなと、俺はコクコクと何度も頷いた。ちゃんと覚えてたよと頷く俺の頭をそっと撫でて、ハルは優しい声で続けた。

「でも領主様と一緒に辺境領に行くんだっていうのは、別に隠さなくても良いんだ」
「へーそうなんだ」
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