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857.【ハル視点】予想外の反応
俺の知るアキトは男前で可愛くて強く、そして素直で優しい子だ。できる事なら誰かに嘘を吐きたくないと話していた事もあるし、常に人に対して真摯に対応する。
そんなアキトに、よりによって俺の家族がそんな質問をしたら、どう対応するかは何となく想像はついた。
異世界人だとバレるのはあまり良くない事だと知ってはいるが、それでもきっと話そうとするだろう。
できる事ならば秘密を知る人は少ない方が良い。俺の家族に、異世界人だと知ってすぐに利用しようとするような人はいない――と思う。
だが、異世界人だと知って、もし態度が変わってしまったらどうしようか。この世界の人じゃないと言うだけで、アキトに嫌悪の目などを向けられたら、この場で暴れない自信が無い。
ぐっと拳を握りしめたまま無言で見つめていると、アキトはぐるりと広間の中を見回した。部屋にいる人を順番に見つめて、誰がここにいるのかを確認している。
今この部屋の中にいるのは、アキトと俺、父さんと母さん、それにファーガス兄さんとマティさん、ウィル兄さんとジルさん、キースとラスだけだ。
執事長のボルテは、ごゆっくりどうぞとラスだけを置いて出て行ったからな。
うんとひとつ頷いてから、アキトは今度は俺へと視線を向けた。
「ハル…」
ああ、もうアキトの中で話す事は決定しているんだな。
「アキトが言いたいと思ったなら、もちろん言っても良いと思うよ」
優しく笑いかけられるように努力しながら、俺はさらりと続けた。
「ただし、俺は何よりもアキトを優先するから…それは許して欲しいな」
「でも…」
「アキトは気にするかもしれないけど、そこは譲れないから――先に言っておくけど、もし万が一アキトに手を出すつもりなら、家族でも容赦しない。俺はどんな手を使ってでもアキトを守るために戦うよ」
低い声でそう続けた俺に、慌てて声をあげたのはキースだ。
「あの、言いにくいことなら、言わなくて良いです…よ?」
変な事を聞いてごめんなさいと呟いたキースは、うっすらと涙で滲んだ目でアキトと俺を見つめていた。
ああ、可愛い弟を泣かせてしまった。そう思う反面、今は驚かせてしまってすまないと言って甘やかしてあげられるほどの余裕が無い。
「ううん、大丈夫!えっと…俺の出身地なんですが…」
誰かがごくりとつばを飲んだ音が、やけに大きく聞こえた。
「俺の故郷はたぶん魔法陣でも行けない場所なんです。俺は異世界から来たので」
勢いよく告げられたアキトの言葉に、部屋の中はしんと静まり返った。よほど予想外の言葉だったのか、誰も何も言わずに沈黙だけが流れていく。
しばしの沈黙の後、最初に声を上げたのは母さんだった。
「へーアキトは異世界人だったのか!もっとすごい事言われるのかと身構えちゃったよ」
アキトの秘密を知った筈なのに、あまりに軽い言葉に驚かずにはいられない。
「「もっとすごい事…?」」
アキトと俺の言葉が、綺麗に重なった。
「そうそう、私は追手がかかってる他国の貴族の家出少年かと思ったな」
からりと笑って告げた母さんの隣で、父さんも何度もコクコクと頷いている。
――は?頷くって事は父さんも同じような事を考えていたという事か?
戸惑う俺に気づかずに、続いて口を開いたのはファーガス兄さんだった。
「そっちか。俺は数年前の村ごとダンジョンに飲み込まれた、あの事例を思い浮かべていたよ」
大きく目を見開いたままファーガス兄さんをまじまじと見つめるアキトに、兄さんはふわりと笑って説明を付け加えた。
「幸運な事にその村は何故か魔物が入れない状態なんだ。だから、今も村人は無事に生活はできているよ」
ただし高難易度のダンジョンの最下層近くに位置しているため、そう簡単に外から辿り着く事は出来ない状態だと説明が続く。最近はそこを拠点に活動している冒険者も増えてきているから、なかなかに活気のある場所になっているそうだ。
「さっき言ってた転移の魔道具では無理なんですか?」
すこし不思議そうに首を傾げながら尋ねたアキトに、ファーガス兄さんはさらりと答えた。
「ああ、勘違いしている人は多いんだが、魔道具を使った転移もさすがにダンジョンの内と外は繋げないんだ」
そうなの?と言いたげに俺に視線を向けてくれたアキトに、俺はこくりと頷いた。
これは決して、アキトがファーガス兄さんの言葉を疑ってるというわけじゃない。ただ俺の事を特別に信頼してくれているだけだろう。そう思うと自然と笑みがこぼれてしまった。
「はーい、俺は呪われた家族に一人だけ逃がされた説だねー」
「ああ、実際にありましたからね」
今度はウィル兄さんが笑顔でそんな事を口にしたかと思えば、ジルさんもすぐに同意を返した。実際にあったのか…。
「ちゃんと家族の呪いを解いて、再会させるの大変だったよねー」
「ええ」
さらりと続けているが、そんな厄介な事態を解決して無事に再会までさせたのか。ウィル兄もジルさんもすごいな。
もはや困惑も通りすぎて素直に感心していると、次に口を開いたのはマティさんだった。
「私はアキトくんが幼い頃に攫われてきたせいで、故郷の事をはっきりと思い出せないのかと思っていたわ」
よくもまあそんなに色々な事が思い浮かぶものだな。
みんなの会話が一段落したのを見て、俺はようやく自分の疑問を口にする事ができた。
「…なあ、なんでそんなに余裕のある反応なんだ…?」
そんなアキトに、よりによって俺の家族がそんな質問をしたら、どう対応するかは何となく想像はついた。
異世界人だとバレるのはあまり良くない事だと知ってはいるが、それでもきっと話そうとするだろう。
できる事ならば秘密を知る人は少ない方が良い。俺の家族に、異世界人だと知ってすぐに利用しようとするような人はいない――と思う。
だが、異世界人だと知って、もし態度が変わってしまったらどうしようか。この世界の人じゃないと言うだけで、アキトに嫌悪の目などを向けられたら、この場で暴れない自信が無い。
ぐっと拳を握りしめたまま無言で見つめていると、アキトはぐるりと広間の中を見回した。部屋にいる人を順番に見つめて、誰がここにいるのかを確認している。
今この部屋の中にいるのは、アキトと俺、父さんと母さん、それにファーガス兄さんとマティさん、ウィル兄さんとジルさん、キースとラスだけだ。
執事長のボルテは、ごゆっくりどうぞとラスだけを置いて出て行ったからな。
うんとひとつ頷いてから、アキトは今度は俺へと視線を向けた。
「ハル…」
ああ、もうアキトの中で話す事は決定しているんだな。
「アキトが言いたいと思ったなら、もちろん言っても良いと思うよ」
優しく笑いかけられるように努力しながら、俺はさらりと続けた。
「ただし、俺は何よりもアキトを優先するから…それは許して欲しいな」
「でも…」
「アキトは気にするかもしれないけど、そこは譲れないから――先に言っておくけど、もし万が一アキトに手を出すつもりなら、家族でも容赦しない。俺はどんな手を使ってでもアキトを守るために戦うよ」
低い声でそう続けた俺に、慌てて声をあげたのはキースだ。
「あの、言いにくいことなら、言わなくて良いです…よ?」
変な事を聞いてごめんなさいと呟いたキースは、うっすらと涙で滲んだ目でアキトと俺を見つめていた。
ああ、可愛い弟を泣かせてしまった。そう思う反面、今は驚かせてしまってすまないと言って甘やかしてあげられるほどの余裕が無い。
「ううん、大丈夫!えっと…俺の出身地なんですが…」
誰かがごくりとつばを飲んだ音が、やけに大きく聞こえた。
「俺の故郷はたぶん魔法陣でも行けない場所なんです。俺は異世界から来たので」
勢いよく告げられたアキトの言葉に、部屋の中はしんと静まり返った。よほど予想外の言葉だったのか、誰も何も言わずに沈黙だけが流れていく。
しばしの沈黙の後、最初に声を上げたのは母さんだった。
「へーアキトは異世界人だったのか!もっとすごい事言われるのかと身構えちゃったよ」
アキトの秘密を知った筈なのに、あまりに軽い言葉に驚かずにはいられない。
「「もっとすごい事…?」」
アキトと俺の言葉が、綺麗に重なった。
「そうそう、私は追手がかかってる他国の貴族の家出少年かと思ったな」
からりと笑って告げた母さんの隣で、父さんも何度もコクコクと頷いている。
――は?頷くって事は父さんも同じような事を考えていたという事か?
戸惑う俺に気づかずに、続いて口を開いたのはファーガス兄さんだった。
「そっちか。俺は数年前の村ごとダンジョンに飲み込まれた、あの事例を思い浮かべていたよ」
大きく目を見開いたままファーガス兄さんをまじまじと見つめるアキトに、兄さんはふわりと笑って説明を付け加えた。
「幸運な事にその村は何故か魔物が入れない状態なんだ。だから、今も村人は無事に生活はできているよ」
ただし高難易度のダンジョンの最下層近くに位置しているため、そう簡単に外から辿り着く事は出来ない状態だと説明が続く。最近はそこを拠点に活動している冒険者も増えてきているから、なかなかに活気のある場所になっているそうだ。
「さっき言ってた転移の魔道具では無理なんですか?」
すこし不思議そうに首を傾げながら尋ねたアキトに、ファーガス兄さんはさらりと答えた。
「ああ、勘違いしている人は多いんだが、魔道具を使った転移もさすがにダンジョンの内と外は繋げないんだ」
そうなの?と言いたげに俺に視線を向けてくれたアキトに、俺はこくりと頷いた。
これは決して、アキトがファーガス兄さんの言葉を疑ってるというわけじゃない。ただ俺の事を特別に信頼してくれているだけだろう。そう思うと自然と笑みがこぼれてしまった。
「はーい、俺は呪われた家族に一人だけ逃がされた説だねー」
「ああ、実際にありましたからね」
今度はウィル兄さんが笑顔でそんな事を口にしたかと思えば、ジルさんもすぐに同意を返した。実際にあったのか…。
「ちゃんと家族の呪いを解いて、再会させるの大変だったよねー」
「ええ」
さらりと続けているが、そんな厄介な事態を解決して無事に再会までさせたのか。ウィル兄もジルさんもすごいな。
もはや困惑も通りすぎて素直に感心していると、次に口を開いたのはマティさんだった。
「私はアキトくんが幼い頃に攫われてきたせいで、故郷の事をはっきりと思い出せないのかと思っていたわ」
よくもまあそんなに色々な事が思い浮かぶものだな。
みんなの会話が一段落したのを見て、俺はようやく自分の疑問を口にする事ができた。
「…なあ、なんでそんなに余裕のある反応なんだ…?」
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