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1197.【ハル視点】隠しドア
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「クレットから情報をもらったあの会議の後、アキトとキースの助けになれるかもしれないと、俺たちよりも先に一人で本拠地に向かってくれていたらしいんだ」
クレットの優しさを知って欲しい。そんな気持ちから、俺はみんなにそう説明をした。
「なんと、そうだったのか!」
驚きつつも感心した様子の父さんがそう言えば、ファ―ガス兄さんは良い判断だとうっすらと笑みを浮かべている。
「私たちにも幽霊の言葉が聞こえれば良かったんだが…」
マティさんは残念そうに苦笑しながら、ぽつりとそう呟いた。
ジルさんはどうしているかなと気になって視線を向ければ、ウィル兄さんの隣の席で誇らし気に胸を張っていた。自分たちの隊の隊員であったクレットの活躍を、心から喜んでいるようだ。
「あーなるほど、それはクレットらしいなー」
ニコニコ笑顔を浮かべたウィル兄さんは、やけにあっさりいなくなったと思ってたんだーとさらりと続けた。
「変に期待させないために、声をかけずに向かったんでしょー?」
「ああ、そう言ってた」
やっぱりと笑ったウィル兄さんは、さすがクレットだと嬉しそうに呟いた。
「あ、でも俺達がまだ眠っていたからって情報を集めてくれている間に、俺達は勝手に脱出しちゃったみたいなんですけど…」
アキトは申し訳なさそうにそう呟いたが、俺達が何かを言うよりも前にクレットが口を開いた。
「無事に逃げられたならそれが一番なので気にしないでください」
「ありがとうございます」
「それにしても…隠し通路の倉庫か…」
話題を戻してくれたのは、ウィル兄さんだった。
「たしかそこの倉庫の中も確認したと、報告が来ていましたね」
そこで言葉を途切れさせたジルさんは、自分の鞄の中から書類の束を無造作に取り出した。かなりの厚みのあるその束を、パラパラと手慣れた様子でめくっていく。
「ああ、ありました。そこの倉庫に保管されていたのは、食料品が主だったと記載されていますね。ただ隠し通路の奥のボスの部屋の隣に、そんな倉庫があるのは不自然だとも記されています」
そう言われると確かに少し不自然な状況ではあるが、俺ならいざという時に隠し通路の中に隠れて危機をしのぐための備えだと思いそうだ。
もしそこに俺がいたとしても、くわしく調査まではしていないだろうな。そんな事を考えていると、ファーガス兄さんが感心した様子で口を開いた。
「さすが情報収集に長けているウィリアムとジルの隊の隊員だな。うちの隊の隊員ならきっとその違和感にすら気づかずに流しているだろう」
ファーガス兄さんの隊は、騎士団の中でも特に武力が優先される部隊だからな。そもそも調査や情報収集には向いていないから、それも仕方がない事だろう。
「褒めてくれてありがと。ファグ兄に褒められたよーってあとで隊員たちに言っておくよ。ね、ジル」
ウィル兄さんは、嬉しそうに笑いながらそう答えた。
「ええ、きっとみな喜んで更に努力してくれるでしょうね」
誇らし気に笑ったジルさんは、書類にもう一度目線を落とした。
「その後、不審感を抱いた数人で倉庫内を調べたそうですが、何も発見はできなかったと報告を受けていますね」
「でも、クレットはそこで何かを見つけたんだよねー?」
ワクワクした様子のウィル兄さんがそう尋ねれば、クレットははいとすぐに口を開いた。
「酒の瓶が無造作に入れられている木箱を全て動かすと、そこにドアがありました」
「…そんな所に?」
隠し通路の中にある倉庫内に、絶対にバレないようにとさらに隠すように設置されたドア――か。中にあるのは財宝か、貴重品か、それとも悪事の証拠だろうか。
「はい、あれは自分も生身の頃なら気づかなかったと思います。壁を抜けられるから気付けただけですから」
ああ、壁を抜けられるのは便利だよなと頷いていると、不意に父さんからハルと名前を呼ばれた。
「クレットが何を言ったのか…ちゃんと俺達にも説明してくれないか?」
明らかに焦れた様子に、俺はハッと顔をあげた。
「すまない。その倉庫にある酒瓶が無造作に入った木箱を全て動かすと、そこにドアがあると言っている」
「ドアが…?」
「クレットは壁を抜けられるから気付く事が出来ただけで、もし生身なら気付けなかっただろうって言ってるよ」
「なるほど。つまりクレットは、しっかり中も確認したって事だよねー?」
一段階低くなったウィル兄さんの言葉に、クレットは即座にこくりと頷いた。
「クレット、そのドアの中には、いったい何があったんだ?」
真剣な表情の父さんは、みんなを代表して尋ねる。
「衛兵詰所の地下にある転移魔法陣やダンジョンの転移魔法陣に似たものが刻まれた、不審な魔道具がありました」
魔道具!?驚きに大きく目を見開いた俺に、みんなの視線が突き刺さって来る。ああ、そうだった。クレットの言葉は俺とアキトにしか聞こえないんだから、ちゃんと橋渡しをしないと、伝わらないんだったな。
俺は慌てて口を開いた。
クレットの優しさを知って欲しい。そんな気持ちから、俺はみんなにそう説明をした。
「なんと、そうだったのか!」
驚きつつも感心した様子の父さんがそう言えば、ファ―ガス兄さんは良い判断だとうっすらと笑みを浮かべている。
「私たちにも幽霊の言葉が聞こえれば良かったんだが…」
マティさんは残念そうに苦笑しながら、ぽつりとそう呟いた。
ジルさんはどうしているかなと気になって視線を向ければ、ウィル兄さんの隣の席で誇らし気に胸を張っていた。自分たちの隊の隊員であったクレットの活躍を、心から喜んでいるようだ。
「あーなるほど、それはクレットらしいなー」
ニコニコ笑顔を浮かべたウィル兄さんは、やけにあっさりいなくなったと思ってたんだーとさらりと続けた。
「変に期待させないために、声をかけずに向かったんでしょー?」
「ああ、そう言ってた」
やっぱりと笑ったウィル兄さんは、さすがクレットだと嬉しそうに呟いた。
「あ、でも俺達がまだ眠っていたからって情報を集めてくれている間に、俺達は勝手に脱出しちゃったみたいなんですけど…」
アキトは申し訳なさそうにそう呟いたが、俺達が何かを言うよりも前にクレットが口を開いた。
「無事に逃げられたならそれが一番なので気にしないでください」
「ありがとうございます」
「それにしても…隠し通路の倉庫か…」
話題を戻してくれたのは、ウィル兄さんだった。
「たしかそこの倉庫の中も確認したと、報告が来ていましたね」
そこで言葉を途切れさせたジルさんは、自分の鞄の中から書類の束を無造作に取り出した。かなりの厚みのあるその束を、パラパラと手慣れた様子でめくっていく。
「ああ、ありました。そこの倉庫に保管されていたのは、食料品が主だったと記載されていますね。ただ隠し通路の奥のボスの部屋の隣に、そんな倉庫があるのは不自然だとも記されています」
そう言われると確かに少し不自然な状況ではあるが、俺ならいざという時に隠し通路の中に隠れて危機をしのぐための備えだと思いそうだ。
もしそこに俺がいたとしても、くわしく調査まではしていないだろうな。そんな事を考えていると、ファーガス兄さんが感心した様子で口を開いた。
「さすが情報収集に長けているウィリアムとジルの隊の隊員だな。うちの隊の隊員ならきっとその違和感にすら気づかずに流しているだろう」
ファーガス兄さんの隊は、騎士団の中でも特に武力が優先される部隊だからな。そもそも調査や情報収集には向いていないから、それも仕方がない事だろう。
「褒めてくれてありがと。ファグ兄に褒められたよーってあとで隊員たちに言っておくよ。ね、ジル」
ウィル兄さんは、嬉しそうに笑いながらそう答えた。
「ええ、きっとみな喜んで更に努力してくれるでしょうね」
誇らし気に笑ったジルさんは、書類にもう一度目線を落とした。
「その後、不審感を抱いた数人で倉庫内を調べたそうですが、何も発見はできなかったと報告を受けていますね」
「でも、クレットはそこで何かを見つけたんだよねー?」
ワクワクした様子のウィル兄さんがそう尋ねれば、クレットははいとすぐに口を開いた。
「酒の瓶が無造作に入れられている木箱を全て動かすと、そこにドアがありました」
「…そんな所に?」
隠し通路の中にある倉庫内に、絶対にバレないようにとさらに隠すように設置されたドア――か。中にあるのは財宝か、貴重品か、それとも悪事の証拠だろうか。
「はい、あれは自分も生身の頃なら気づかなかったと思います。壁を抜けられるから気付けただけですから」
ああ、壁を抜けられるのは便利だよなと頷いていると、不意に父さんからハルと名前を呼ばれた。
「クレットが何を言ったのか…ちゃんと俺達にも説明してくれないか?」
明らかに焦れた様子に、俺はハッと顔をあげた。
「すまない。その倉庫にある酒瓶が無造作に入った木箱を全て動かすと、そこにドアがあると言っている」
「ドアが…?」
「クレットは壁を抜けられるから気付く事が出来ただけで、もし生身なら気付けなかっただろうって言ってるよ」
「なるほど。つまりクレットは、しっかり中も確認したって事だよねー?」
一段階低くなったウィル兄さんの言葉に、クレットは即座にこくりと頷いた。
「クレット、そのドアの中には、いったい何があったんだ?」
真剣な表情の父さんは、みんなを代表して尋ねる。
「衛兵詰所の地下にある転移魔法陣やダンジョンの転移魔法陣に似たものが刻まれた、不審な魔道具がありました」
魔道具!?驚きに大きく目を見開いた俺に、みんなの視線が突き刺さって来る。ああ、そうだった。クレットの言葉は俺とアキトにしか聞こえないんだから、ちゃんと橋渡しをしないと、伝わらないんだったな。
俺は慌てて口を開いた。
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