生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,199 / 1,490

1198.【ハル視点】嫌な予感

しおりを挟む
 クレットから聞かされた衝撃的な報告を、何とかみんなに伝える事ができた。ホッとしながら周りを見渡してみれば、話を聞いたみんなも驚きを隠せていない様子だ。

「それは…確かに重要な情報だな…」

 最初に口を開いた父さんは、真剣な表情でぽつりとそう呟いた。眉間には父さんにしては珍しく、深いしわが刻まれている。

「たしか転移移魔法陣の魔道具は、まだ実用化はされていなかったはず…だよな?」

 冷静なファーガス兄さんは、まずはそこを確認したかったようだ。尋ねられたマティさんは、すぐに『ああ、まだだな』と頷いた。

「まあダンジョン産の物なら無い事も無いんだが、とにかく高値で取引されるからなぁ。どこかの王家や貴族、豪商たちが喜んで買うだろうから…手に入れた冒険者がいたとしてもまず表には出さないよ」

 マティさんは、知識や情報の収集を欠かさないタイプの冒険者だ。騎士では知り得ないようなギルドの裏情報まで知っているから、こういう時に頼りになるんだよな。

「そういう高値で売れる物はこっそりと冒険者ギルドなり商業ギルドなりに直接持ち込まれて、ギルドからお得意様に販売するような物だからな」

 ましてや盗賊団が持てるようなものじゃないと、マティさんはあっさりとそう続けた。俺も全面的に同意見だ。

「そうなんですか」

 驚いた様子のアキトに、俺はそっと小さな声で話かける。

「少なくとも、そう簡単に手に入るものじゃないね。盗賊団だって売ってしまうような物だよ」

 その方が儲けになると、迷いなく売り払うぐらいのものだからな。アキトは、へぇと感心の声を上げた。

「これはすぐにでも、そのドアを調べに行かないとねー」
「ええ、これはクレットの報告でなければ信じられないような内容ですが――まずは急ぎでの確認が必要です」 

 ジルさんとウィル兄さんは、もう既に本拠地まで迅速に確認に行くための準備の相談に入っている。クレットを信頼しているからこそ、できるだけ速く動きたいんだろうな。

 この信頼もきっと、本人にとっては嬉しいものなのだろうな。

 そう思いながらちらりと視線を向けてみれば、視線の先にいるクレットは誇らし気な表情を浮かべている。

 そんなクレットを見つめて微笑んでいるアキトも可愛いなと考えていると、申し訳なさそうにクレットさんが口を開いた。

「すみません、実はまだ報告には続きがあるんです」
「あーみんな、まだ報告には続きがあるらしい」

 俺はみんなの注目を集めるべく、軽く手をあげてそう発言をした。

「ああ、聞かせてくれ」
「私は誰かその魔道具を発動する人がいないだろうかと、そこで見張っていたせいで戻ってくるのが遅くなったんです」
「魔道具が発動するのを待っていたのか?」
「ええ、その魔道具を、戻ってきた数人の盗賊が発動させる所を確認してから戻ってきました」

 クレットの言葉を伝えた瞬間、俺とアキト、そしてクレット以外の全員からぶわりと殺気が漏れた。

「…捕まえ損ねたのがいたのか?」
「いや、本拠地内の気配探知は特に念入りにしたから、それは無い」
「でも取り洩らしたのがいたから戻ってきたんだろう?」
「その可能性は低いと思うんだけどなー」
「いえ、もしかしたらですが…それこそが、今回捕まえられなかったボスや幹部なのでは無いですか?」

 ジルさんだけは、そう分析ができるぐらいどこまでも冷静だった。まあジルさんからも殺気は漏れていたわけだが――きっとそんな状態でも頭の中は冷静なんだろう。すごい人だ。

「ああ、その可能性はあるなぁ」
「なるほど、いるはずの部下達が捕まっていないから、異変を感じて転移魔法の魔道具で移動したと…あり得るな」

 ファーガス兄さんと父さんは、真剣な表情で頷き合っている。

「クレット、その魔道具の先はどこに繋がっていたのか…分かるか?」
「その先は、おそらく…私の予想ですが、ダンジョンでした」
「クレットの予想ではダンジョンだと」
「ダンジョンか…」
「問題はどこのダンジョンか…だな」
「少なくとも、オ・アレシュのダンジョンって事は無いだろうなー」

 ああ、さすがにその可能性は低いだろうな。あのダンジョンは出入りする人も多いし、隅々まで探索され尽くしている。

 そう考えると、嫌な予感がするな。

「一瞬だけでしたから自信はありませんが…あれはムレングダンジョンでは無いかと思います」

 どうやら、俺の嫌な予感は当たってしまったようだ。

「…本当に?」
「はい、繋がった先の壁にミザの鉱石が見えたので…」

 ミザの鉱石は、確かにこの辺りではムレングダンジョンでしか取れない鉱石だな。つまりクレットの見たものがミザであるなら、ムレングダンジョンで確定か。

「あのクレットさんは、自信は無いがあそこはムレングダンジョンじゃないかって言ってます。繋がった先の壁にミザ?の鉱石?が見えたって」

 俺はアキトの声に、ハッと顔をあげた。

「なるほど」
「アキトくん、クレットとの橋渡しをありがとうございます」
「いえ」
「あ、アキト、みんな、ごめん」

 考え込んでしまっていたせいで、クレットとの橋渡しをすっかり忘れていた。アキトが代わりに伝えてくれて、本当に助かった。

 慌ててみんなに謝罪したが、誰も怒ったりはしなかった。

「いやいや、俺だってムレングダンジョンと言われたら動揺するわー」

 笑いながらそう言ってくれたウィル兄さんの言葉に、みんなは今回は仕方ないさと笑って頷いてくれた。
しおりを挟む
感想 377

あなたにおすすめの小説

王太子殿下のやりなおし

3333(トリささみ)
BL
ざまぁモノでよくある『婚約破棄をして落ちぶれる王太子』が断罪前に改心し、第三の道を歩むお話です。 とある時代のとある異世界。 そこに王太子と、その婚約者の公爵令嬢と、男爵令嬢がいた。 公爵令嬢は周囲から尊敬され愛される素晴らしい女性だが、王太子はたいそう愚かな男だった。 王太子は学園で男爵令嬢と知り合い、ふたりはどんどん関係を深めていき、やがては愛し合う仲になった。 そんなあるとき、男爵令嬢が自身が受けている公爵令嬢のイジメを、王太子に打ち明けた。 王太子は驚いて激怒し、学園の卒業パーティーで公爵令嬢を断罪し婚約破棄することを、男爵令嬢に約束する。 王太子は喜び、舞い上がっていた。 これで公爵令嬢との縁を断ち切って、彼女と結ばれる! 僕はやっと幸せを手に入れられるんだ! 「いいやその幸せ、間違いなく破綻するぞ。」 あの男が現れるまでは。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。 完結しました。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

王子のこと大好きでした。僕が居なくてもこの国の平和、守ってくださいますよね?

人生2929回血迷った人
BL
Ωにしか見えない一途な‪α‬が婚約破棄され失恋する話。聖女となり、国を豊かにする為に一人苦しみと戦ってきた彼は性格の悪さを理由に婚約破棄を言い渡される。しかしそれは歴代最年少で聖女になった弊害で仕方のないことだった。 ・五話完結予定です。 ※オメガバースで‪α‬が受けっぽいです。

処理中です...