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1198.【ハル視点】嫌な予感
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クレットから聞かされた衝撃的な報告を、何とかみんなに伝える事ができた。ホッとしながら周りを見渡してみれば、話を聞いたみんなも驚きを隠せていない様子だ。
「それは…確かに重要な情報だな…」
最初に口を開いた父さんは、真剣な表情でぽつりとそう呟いた。眉間には父さんにしては珍しく、深いしわが刻まれている。
「たしか転移移魔法陣の魔道具は、まだ実用化はされていなかったはず…だよな?」
冷静なファーガス兄さんは、まずはそこを確認したかったようだ。尋ねられたマティさんは、すぐに『ああ、まだだな』と頷いた。
「まあダンジョン産の物なら無い事も無いんだが、とにかく高値で取引されるからなぁ。どこかの王家や貴族、豪商たちが喜んで買うだろうから…手に入れた冒険者がいたとしてもまず表には出さないよ」
マティさんは、知識や情報の収集を欠かさないタイプの冒険者だ。騎士では知り得ないようなギルドの裏情報まで知っているから、こういう時に頼りになるんだよな。
「そういう高値で売れる物はこっそりと冒険者ギルドなり商業ギルドなりに直接持ち込まれて、ギルドからお得意様に販売するような物だからな」
ましてや盗賊団が持てるようなものじゃないと、マティさんはあっさりとそう続けた。俺も全面的に同意見だ。
「そうなんですか」
驚いた様子のアキトに、俺はそっと小さな声で話かける。
「少なくとも、そう簡単に手に入るものじゃないね。盗賊団だって売ってしまうような物だよ」
その方が儲けになると、迷いなく売り払うぐらいのものだからな。アキトは、へぇと感心の声を上げた。
「これはすぐにでも、そのドアを調べに行かないとねー」
「ええ、これはクレットの報告でなければ信じられないような内容ですが――まずは急ぎでの確認が必要です」
ジルさんとウィル兄さんは、もう既に本拠地まで迅速に確認に行くための準備の相談に入っている。クレットを信頼しているからこそ、できるだけ速く動きたいんだろうな。
この信頼もきっと、本人にとっては嬉しいものなのだろうな。
そう思いながらちらりと視線を向けてみれば、視線の先にいるクレットは誇らし気な表情を浮かべている。
そんなクレットを見つめて微笑んでいるアキトも可愛いなと考えていると、申し訳なさそうにクレットさんが口を開いた。
「すみません、実はまだ報告には続きがあるんです」
「あーみんな、まだ報告には続きがあるらしい」
俺はみんなの注目を集めるべく、軽く手をあげてそう発言をした。
「ああ、聞かせてくれ」
「私は誰かその魔道具を発動する人がいないだろうかと、そこで見張っていたせいで戻ってくるのが遅くなったんです」
「魔道具が発動するのを待っていたのか?」
「ええ、その魔道具を、戻ってきた数人の盗賊が発動させる所を確認してから戻ってきました」
クレットの言葉を伝えた瞬間、俺とアキト、そしてクレット以外の全員からぶわりと殺気が漏れた。
「…捕まえ損ねたのがいたのか?」
「いや、本拠地内の気配探知は特に念入りにしたから、それは無い」
「でも取り洩らしたのがいたから戻ってきたんだろう?」
「その可能性は低いと思うんだけどなー」
「いえ、もしかしたらですが…それこそが、今回捕まえられなかったボスや幹部なのでは無いですか?」
ジルさんだけは、そう分析ができるぐらいどこまでも冷静だった。まあジルさんからも殺気は漏れていたわけだが――きっとそんな状態でも頭の中は冷静なんだろう。すごい人だ。
「ああ、その可能性はあるなぁ」
「なるほど、いるはずの部下達が捕まっていないから、異変を感じて転移魔法の魔道具で移動したと…あり得るな」
ファーガス兄さんと父さんは、真剣な表情で頷き合っている。
「クレット、その魔道具の先はどこに繋がっていたのか…分かるか?」
「その先は、おそらく…私の予想ですが、ダンジョンでした」
「クレットの予想ではダンジョンだと」
「ダンジョンか…」
「問題はどこのダンジョンか…だな」
「少なくとも、オ・アレシュのダンジョンって事は無いだろうなー」
ああ、さすがにその可能性は低いだろうな。あのダンジョンは出入りする人も多いし、隅々まで探索され尽くしている。
そう考えると、嫌な予感がするな。
「一瞬だけでしたから自信はありませんが…あれはムレングダンジョンでは無いかと思います」
どうやら、俺の嫌な予感は当たってしまったようだ。
「…本当に?」
「はい、繋がった先の壁にミザの鉱石が見えたので…」
ミザの鉱石は、確かにこの辺りではムレングダンジョンでしか取れない鉱石だな。つまりクレットの見たものがミザであるなら、ムレングダンジョンで確定か。
「あのクレットさんは、自信は無いがあそこはムレングダンジョンじゃないかって言ってます。繋がった先の壁にミザ?の鉱石?が見えたって」
俺はアキトの声に、ハッと顔をあげた。
「なるほど」
「アキトくん、クレットとの橋渡しをありがとうございます」
「いえ」
「あ、アキト、みんな、ごめん」
考え込んでしまっていたせいで、クレットとの橋渡しをすっかり忘れていた。アキトが代わりに伝えてくれて、本当に助かった。
慌ててみんなに謝罪したが、誰も怒ったりはしなかった。
「いやいや、俺だってムレングダンジョンと言われたら動揺するわー」
笑いながらそう言ってくれたウィル兄さんの言葉に、みんなは今回は仕方ないさと笑って頷いてくれた。
「それは…確かに重要な情報だな…」
最初に口を開いた父さんは、真剣な表情でぽつりとそう呟いた。眉間には父さんにしては珍しく、深いしわが刻まれている。
「たしか転移移魔法陣の魔道具は、まだ実用化はされていなかったはず…だよな?」
冷静なファーガス兄さんは、まずはそこを確認したかったようだ。尋ねられたマティさんは、すぐに『ああ、まだだな』と頷いた。
「まあダンジョン産の物なら無い事も無いんだが、とにかく高値で取引されるからなぁ。どこかの王家や貴族、豪商たちが喜んで買うだろうから…手に入れた冒険者がいたとしてもまず表には出さないよ」
マティさんは、知識や情報の収集を欠かさないタイプの冒険者だ。騎士では知り得ないようなギルドの裏情報まで知っているから、こういう時に頼りになるんだよな。
「そういう高値で売れる物はこっそりと冒険者ギルドなり商業ギルドなりに直接持ち込まれて、ギルドからお得意様に販売するような物だからな」
ましてや盗賊団が持てるようなものじゃないと、マティさんはあっさりとそう続けた。俺も全面的に同意見だ。
「そうなんですか」
驚いた様子のアキトに、俺はそっと小さな声で話かける。
「少なくとも、そう簡単に手に入るものじゃないね。盗賊団だって売ってしまうような物だよ」
その方が儲けになると、迷いなく売り払うぐらいのものだからな。アキトは、へぇと感心の声を上げた。
「これはすぐにでも、そのドアを調べに行かないとねー」
「ええ、これはクレットの報告でなければ信じられないような内容ですが――まずは急ぎでの確認が必要です」
ジルさんとウィル兄さんは、もう既に本拠地まで迅速に確認に行くための準備の相談に入っている。クレットを信頼しているからこそ、できるだけ速く動きたいんだろうな。
この信頼もきっと、本人にとっては嬉しいものなのだろうな。
そう思いながらちらりと視線を向けてみれば、視線の先にいるクレットは誇らし気な表情を浮かべている。
そんなクレットを見つめて微笑んでいるアキトも可愛いなと考えていると、申し訳なさそうにクレットさんが口を開いた。
「すみません、実はまだ報告には続きがあるんです」
「あーみんな、まだ報告には続きがあるらしい」
俺はみんなの注目を集めるべく、軽く手をあげてそう発言をした。
「ああ、聞かせてくれ」
「私は誰かその魔道具を発動する人がいないだろうかと、そこで見張っていたせいで戻ってくるのが遅くなったんです」
「魔道具が発動するのを待っていたのか?」
「ええ、その魔道具を、戻ってきた数人の盗賊が発動させる所を確認してから戻ってきました」
クレットの言葉を伝えた瞬間、俺とアキト、そしてクレット以外の全員からぶわりと殺気が漏れた。
「…捕まえ損ねたのがいたのか?」
「いや、本拠地内の気配探知は特に念入りにしたから、それは無い」
「でも取り洩らしたのがいたから戻ってきたんだろう?」
「その可能性は低いと思うんだけどなー」
「いえ、もしかしたらですが…それこそが、今回捕まえられなかったボスや幹部なのでは無いですか?」
ジルさんだけは、そう分析ができるぐらいどこまでも冷静だった。まあジルさんからも殺気は漏れていたわけだが――きっとそんな状態でも頭の中は冷静なんだろう。すごい人だ。
「ああ、その可能性はあるなぁ」
「なるほど、いるはずの部下達が捕まっていないから、異変を感じて転移魔法の魔道具で移動したと…あり得るな」
ファーガス兄さんと父さんは、真剣な表情で頷き合っている。
「クレット、その魔道具の先はどこに繋がっていたのか…分かるか?」
「その先は、おそらく…私の予想ですが、ダンジョンでした」
「クレットの予想ではダンジョンだと」
「ダンジョンか…」
「問題はどこのダンジョンか…だな」
「少なくとも、オ・アレシュのダンジョンって事は無いだろうなー」
ああ、さすがにその可能性は低いだろうな。あのダンジョンは出入りする人も多いし、隅々まで探索され尽くしている。
そう考えると、嫌な予感がするな。
「一瞬だけでしたから自信はありませんが…あれはムレングダンジョンでは無いかと思います」
どうやら、俺の嫌な予感は当たってしまったようだ。
「…本当に?」
「はい、繋がった先の壁にミザの鉱石が見えたので…」
ミザの鉱石は、確かにこの辺りではムレングダンジョンでしか取れない鉱石だな。つまりクレットの見たものがミザであるなら、ムレングダンジョンで確定か。
「あのクレットさんは、自信は無いがあそこはムレングダンジョンじゃないかって言ってます。繋がった先の壁にミザ?の鉱石?が見えたって」
俺はアキトの声に、ハッと顔をあげた。
「なるほど」
「アキトくん、クレットとの橋渡しをありがとうございます」
「いえ」
「あ、アキト、みんな、ごめん」
考え込んでしまっていたせいで、クレットとの橋渡しをすっかり忘れていた。アキトが代わりに伝えてくれて、本当に助かった。
慌ててみんなに謝罪したが、誰も怒ったりはしなかった。
「いやいや、俺だってムレングダンジョンと言われたら動揺するわー」
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