16 / 43
支配の崩壊
第15回
しおりを挟む
八月二十四日、十二歳の誕生日がやってきた。本来なら二十七歳になるのだが、現実に戻れてはいない。だが今となっては、このタイミングで戻りたいとも思えなかった。
よく映画や漫画では、自分の誕生日なんかに強制的に元の世界に戻されてしまう。僕は昨日、それが少しだけ怖くて眠れなかった。しかし、朝起きても普段と変わったところはない。十一歳が十二歳になっただけのことだった。
その日の夜に、家族で僕の誕生日会を開いてくれた。
「愛斗、誕生日おめでとう!」
ケーキの上には蝋燭が一二本刺さっていた。それらの蝋燭の火を一度で吹き消して、拍手が起こる。僕は正直、照れくさかったが悪い気はしなかった。みんなが笑顔で溢れていたので、すごく心地のいいものになった。
すると、優香が後ろに手を回し、僕の方へ近づく。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。」
僕の前に差し出されたのは、一つのスケッチブックだった。
「中見てもいい?」
「うん!」
そのスケッチブックを開くと、中には十五枚ほどの絵が挟まっていた。その絵のほとんどに、優香と僕の絵が描かれていた。一枚一枚丁寧にページをめくる。
「ありがとう。とっても嬉しいよ」
最後のページには、僕と優香だけでなく、美来が描かれていた。もちろん絵の横には「ミク」の名前が入っていた。
「これは、この前の?」
「そうだよ、お兄ちゃんを笑顔にさせてくれた人でしょ」
少し違う気もするが、僕は素直に頷く。
それを聞いた両親が、すぐに揶揄《からか》ってきた。
「愛斗の好きな子?」
「と・も・だ・ちね。」
僕がそういうと、みんなが一斉に笑った。
「愛斗、女の子は守ってあげないとダメだぞ」
父は今日もほろ酔いだ。
「守ってもらったことないよねー」
母と優香は顔を揃えて笑っていた。
美来は僕が守らなくたって大丈夫だ。彼女は他の生徒よりも早熟で、自分で考えられる。そんなことを心の中で呟く。
両親には、バスケットボールを買ってもらった。僕がバスケをしていることを知っていたのは不思議だったが、素直に受け取った。
改めて、僕は過去に戻れて幸せだと思った。子供の時は、これが当たり前だと思っていたが、今では感謝に思う気持ちでいっぱいだった。
社会に出て働くことを平気で成し遂げる父に、家の家事を全て一人で担っている母。僕は一度経験したからこそ、その大変さを知っている。
この状態を途切れさせてはいけない。今年で、この輝いていた幼少期を終わらせてはいけない。
よく映画や漫画では、自分の誕生日なんかに強制的に元の世界に戻されてしまう。僕は昨日、それが少しだけ怖くて眠れなかった。しかし、朝起きても普段と変わったところはない。十一歳が十二歳になっただけのことだった。
その日の夜に、家族で僕の誕生日会を開いてくれた。
「愛斗、誕生日おめでとう!」
ケーキの上には蝋燭が一二本刺さっていた。それらの蝋燭の火を一度で吹き消して、拍手が起こる。僕は正直、照れくさかったが悪い気はしなかった。みんなが笑顔で溢れていたので、すごく心地のいいものになった。
すると、優香が後ろに手を回し、僕の方へ近づく。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。」
僕の前に差し出されたのは、一つのスケッチブックだった。
「中見てもいい?」
「うん!」
そのスケッチブックを開くと、中には十五枚ほどの絵が挟まっていた。その絵のほとんどに、優香と僕の絵が描かれていた。一枚一枚丁寧にページをめくる。
「ありがとう。とっても嬉しいよ」
最後のページには、僕と優香だけでなく、美来が描かれていた。もちろん絵の横には「ミク」の名前が入っていた。
「これは、この前の?」
「そうだよ、お兄ちゃんを笑顔にさせてくれた人でしょ」
少し違う気もするが、僕は素直に頷く。
それを聞いた両親が、すぐに揶揄《からか》ってきた。
「愛斗の好きな子?」
「と・も・だ・ちね。」
僕がそういうと、みんなが一斉に笑った。
「愛斗、女の子は守ってあげないとダメだぞ」
父は今日もほろ酔いだ。
「守ってもらったことないよねー」
母と優香は顔を揃えて笑っていた。
美来は僕が守らなくたって大丈夫だ。彼女は他の生徒よりも早熟で、自分で考えられる。そんなことを心の中で呟く。
両親には、バスケットボールを買ってもらった。僕がバスケをしていることを知っていたのは不思議だったが、素直に受け取った。
改めて、僕は過去に戻れて幸せだと思った。子供の時は、これが当たり前だと思っていたが、今では感謝に思う気持ちでいっぱいだった。
社会に出て働くことを平気で成し遂げる父に、家の家事を全て一人で担っている母。僕は一度経験したからこそ、その大変さを知っている。
この状態を途切れさせてはいけない。今年で、この輝いていた幼少期を終わらせてはいけない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる