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5歳
26、防寒対策は大事です
しおりを挟む次の週になると寒さが増して、外へ出るのが辛くなってきたので、ショールやスカーフではなく、マフラーと手袋をお願いすると、存在しないらしい。母様がタンスから、左右から手を入れる毛皮のマフを出してきた。
「・・・・・・」
当然、子供には大きすぎるので作る事にした。レース編み用の金属の鉤針はあるけど、編み棒が無かったので、ブレオさんに大中小の編み棒で、端に玉止めがあるのとないやつ二種類、少し太めの木の鉤針と、毛糸が通る太さの毛糸針を作ってもらう。
今度は何を作る?と訝しげな顔をされたので、出来たら見せると言っておいた。
糸屋さんは、家から2ブロック先にあった。イレッサがたまに買いに行ってるようだったけど、針はまだ持てないから行ってなかったのだ。カラカラン、と音をたてて扉を開けて中に入ると、小さい小分けの棚がたくさんあって、糸が飾ってある。糸の色は6割以上が白糸だ。壁には見事なレース編みのショールとテーブルクロスが飾ってあり、レース編みのハンカチとかもあった。店内の右手前の4ぶんの1くらいのスペースが、出来た物を売るテーブルになっていた。店内の左端に毛糸らしき玉が籠の中に山になってた。手に取ってみると結構大きくて私が知ってる玉の3倍ぐらいある。毛糸があるのに何故編み棒が無いのか、と思ったら、毛糸の隣に大小色んな木の枠組みが置いてあり、穴や溝がついていて、糸巻き用の木の棒もある。
・・・織り機?ここでは織るのが主流なんだ。
「あらイレッサさん、今日はどんな糸?・・・・じゃなく毛糸・・なの?」
赤紫色の髪の毛を編み込んで結い上げた、青い瞳の三十代の女の人が毛糸を選んでる私達をみて驚いている。貴族は布とレースだけで、毛糸を使うのは平民だけらしい。色んな形が作れて防寒具にいいのにね。
「ええ、近頃寒くなってきたのでうちのお嬢様が防寒具が無いので編みたい、と」
イレッサも少し躊躇いながら言う。女の人は目を瞬いた。
「織るんじゃなくて編むの?毛糸を?毛糸は太いから鉤針では使えないわ、太さもそんなに均等じゃないし・・・」
それで織ってギュッと押さえて、布を均等にして使うんだ。何で毛糸に合わせた鉤針を作る発想がないんだろう。別に均等じゃなくても味がある物を作れるのに。
ここの人達は一工夫するという事を考えつかないらしいし、あまりしないと思う。
でも厚地の織り布として仕上がったら切ったりするとボロボロになるよね?切らずに使うと・・・・・絨毯とかクッション、あとポンチョとかしか思いつかないな。シーツ代わりにもなるの?
・・・でもチクチクしそうで嫌かも。
「出来上がったら、見せにきます」
ニッコリ微笑んでおく。そして薄茶色と生成り色と桃色と朱色と緑色の毛糸を五玉ずつ買った。
ブレオさんから編み棒を貰って、父様と母様のお部屋のソファで作る。冬に備えて今週は編み物週間だ。最初に10ピト×10ピトのゲージを編み編みしたら、母様の目がキラリンとなった。イレッサも目を丸くしている。
編み方は難しくない。表編みと裏編みだけだ。あとは組合せとデザインしだいで色んな模様を作る事が出来る。元々レース編みは二人とも得意なので、自分の手に合わせた10ピトのゲージを作らせるとすぐに基本は出来た。そうして、私は薄茶で基本のマフラーを、母様とイレッサは大人だからマフラーではなくショールにする。模様を入れ込むのは上級すぎるので手が慣れるまで単調な編み目にした。母様は桃色、イレッサは緑で、単色でも表と裏の編み方で色々出来るし。私は子供向きに差し込み穴を片方につけ、端を絞めてボンボンをつけた。
「まあ、可愛いわね」
母様がとても感心している。手袋は親指だけ離れたミトン型のやつだ。手の甲に木の鉤針で真ん中が生成り色、回りが桃色のお花を作って、イレッサに毛糸針で縫い付けてもらう。それから同じお花を少し大きめにふたつ作り裏は普通の表編みで間に少し綿を入れてもらい、頭の上は5ピトくらいの幅広の編みで繋いで耳当てを作った。両端を鎖編みの紐にして結ぶ。これで、マフラー、手袋、耳当て、が揃った。
「とても暖かそうですね、お嬢様」
「それに可愛いわ」
そして母様とイレッサのは大人のなので少し幅広に表裏の交互編みで練習してもらって3キュピトの長さまで編んで綴じた両端に、イレッサのは10ピトのフリンジ、母様は15ピトのフリンジを付けて切り揃えたら出来上がりだ。長めなので二つ巻きくらいは出来るはずだ。クローゼットの鏡で姿を確かめている。
「まあ、暖かいわね」
とニッコリ微笑んだ。初めてなので少し目がキツいユルいはあるものの、母様の女子力は高い。
「本当にあったかいですねぇ」
イレッサも感触を確めている。
そして生成り色で、父様にVネックのセーターを編んだ。自分の知っている柄と模様を詰め込んで。大量の模様が入って、10年ぶり(前世も入れて)にしては良くできたと思う。毛糸の教本がないので数日間、夜になると体に当てて大きさと目の数を見ていたので、何を作っているかは教えてあったけど全体の出来上がりはまだ見せていなかった。
「お父様できました」
私の姿が隠れそうなくらい大きめのセーターを渡すと、それを眺めてとっても嬉しそうに瞳がウルウルしてる。
「ありがとうミラ、大事に着るよ」
しかしこのセーターを見た糸屋さんに、目の色を変えて頼み込まれ、シーズンオフには糸屋さんに貸し出しすることになるのであった。
後日、出来上がりと作り途中のマフラーを持って顔を出す。
「ブレオさん、これですよ。これで毛糸を編むんです、こうして・・・」
と何目か編むと、目を丸くした。
「ほう、毛糸とこの棒だけで出来るのか・・・で、それもか」
私がつけてる三点セットを見る。
「ここは木の鉤針ですよ。間に少し綿を入れてあるんです、とってもあったかいです」
すると奥さんの食い付きが半端なかった。
「ねえそれ、枠がなくても出来るって事かしら?あなた、私にも棒を作ってちょうだい!」
「え?・・ネシーナ?」
ブレオさんがちょっと狼狽えたけど、仕方なく奥さんに編み棒を作り、私とイレッサが一通り教えると、すぐに手の込んだデザインを考えて編み物の副収入が入るようになるのは次の冬。そうして、リバーシの作業が一段落する頃、父様のセーターを貸した糸屋さんから、大量の編み棒の注文に悲鳴を上げて作業する事になるのは次の夏であった。
昼5鐘くらい、いつもの装備プラス毛糸セット、それから追加で作ってもらったナップザックを背負って、2週間ぶりにギルドへ行くと、エステルが訓練場の端で、地味訓練をしていた。大事な訓練だけど結構寒くなってきてるのに偉いな。
「エル、寒いのに頑張るね」
「!ミラ、何で何日も来なかったの?」
「ごめんね、これから冬だからこれ編んでたの」
肩掛けポーチから、マスクと朱色のマフラーと手袋を差し出す。
「あら、これ作ってたの?・・ありがと。・・・毛糸?貴族なのに?」
お礼を言うが眉を寄せた。
「そうよ。私の方が言われてビックリよ、防寒に最適なのに・・・」
「・・・やらかしたわね?」
「毛糸は元々あったんだし、編み棒を作ってもらっただけだよ?」
口を尖らせて言い訳をする。
「来シーズンには毛糸用品が増える・・かな?それとこれも・・・《スペース》」
背中に背負っていた、巾着型のナップザックをググッと広く開けて、人のいない方を向いて呪文を唱えてから、ナップザックから自分と同じようなエプロンを出す。エステルが目を丸くした。
そう、私は〇次元ポッケではなくリュック、を手に入れたのだ!(笑)
まあ狭いけどね。実はエプロンのポッケからでも繋がってて手は入る。私の魔力で作ったから私しか使えないし。今現在、白を持ってるのはたぶん王都で、私しかいないので、これを魔術具で作れるなら、一財産築けそうなんだけどな。
エステルはすぐにエプロンを着けた。
「白の子がいるの?」
「ん、おトイレを作ったときに、次の日に来たの」
「・・・トイレを作った?」
ちょっと非難する目で私を見る。なので夏の大洪水事件を話す。
「ああ、前に言ってた大洪水ね。排水弁を圧縮(コンパクト)か・・・あとやり易そうなのは重力か、そのうちやってみるわ。・・・私もトイレ作るか?」
「でもこのスペース、魔力量で大きさが違うんだって」
といって精霊が教えてくれた大きさを畳に換算して教えた。
魔力量に比例しているから実はエステルもミラと同じくらいの大きい空間が作れるけれど2人とも自分達の容量が大きいとは全く思っていない。
「小さいわね」
「でしょ?だからこれとは別にね・・・」
映画で見たような巨大倉庫をイメージして作ってある、とやり方を教える。
「でも大きくし過ぎて魔力が枯渇するとこだったから、気をつけて」
「そんなに大きいのを作ったの?」
「だって、狩りに行けるようになったらオークを何匹か欲しいもん・・・霜降り和牛肉だよ」
「マジ?それは・・(食べたい)」
「でしょ?一度だけ食べたんだ。でも高いから自分で調達出来るようになりたいし、飛べるようになったら巨大マグロもいきたいよね!いるかなぁ?似たようなのはいると思うんだ。それに味噌と醤油、出来るんでしょ?」
「(え、醤油が目的?)・・・んー、うまくいけば次の夏くらいには出来るかな?」
それと、この世界は呪文の魔力量が決まっている事、この世界にない呪文は結構魔力を奪われる事を教えておく。
「それでも発動はするの?」
「する。でも枯渇したら危ないから、精霊に魔力を貸してもらうといいと思う」
そのあと、地面から埴輪のハニちゃんを出すと、かなり受けた。だって茶色の〇ボテンダーなのだ!土偶君も、怖っ、と言いながらドンクサい動きが愛嬌があって面白い。そしてやはり同じ物を作れる。
「じゃあ私は・・・《埴輪》」
イメージをかためて唱えると、加茂ナスのようにずんぐりしたのを作る。
「丸ちゃん!アイツを押し出すのよ!」
丸く囲った線の中で、ダブルハニちゃんが相手を牽制して、押したり押されたりしてるのが、カワイイ!
それからクレイで土の便器デザインを教える。4回目でやっと便器を作った。
「これにもっと魔力を流してストーンにすればOKだよ」
「ふぅーっ・・・ちょっと面倒だけどわかったわ」
「あとね・・・《泥沼》」
目の前にタプンと泥の液体が出来る。
「おおやるね・・・」
「下が土だったら、敵を膝くらいまで嵌めて固めちゃえばいいかな?と思って」
「・・・腕力のない私達には大事な事かもしれないけど・・・・」
エステルが眉を寄せて考え込む。その顔に見覚えがあった。
「前に、この泥沼を3メーター以上にしたら体全部沈むねぇ、って言ったら精霊がそんな顔してた・・・」
とエステルの顔を指差す。
「・・・・・・そう」
エステルは、自分も既にチートだって事は棚上げで、ため息を1つついた。
私達が端で動いているのを見る、いくつかの目があった。その中には私が飛ばしたオッサンもいたが、お話しと魔法練習に夢中だったので、気づかなかった。少し注意していれば、漏れている殺気に気づいたかもしれない。
昼になったので、食堂に足を運ぶ。端の方の2人席で、チキンとスープとパンを半分こだ。ここはお金を持っている私持ちだ。
「「いただきます」」
食べ終わったあとに、待望のリバーシをポッケからそっと出す。ここ数日は母様がイレッサの仕事のすき間を捕まえて打っていたんだけど、今日は私が持ってきた。
「おお、出来たんだ」
二人でパチ、パチ、と打ちながら、思い立って聞いてみる。
「ねえ、算盤いる?ここって数字は十進法なのに、横向き計算機で二十進法?・・・だよね?分かんないけど」
「そうね、出来るなら欲しい。うちにもあるけど、あれは計算機って言わない、絶対!」
「だよねぇ、あんなの使うなら紙に書くか頭の算盤で計算した方がマシだよねぇ」
「お?それは何だ?面白そうじゃないか」
エクラーさんが、声を掛けてきた。食事に来たらしい。
「白と黒とどっちが多く出来るかってゲームだよ。よし、私の勝ち!」
とエステルがドヤ顔で言う。
「ん?あれ?・・5個も負けている。さっきまでこっちの方が多かったのに~」
「端まで見てないとねぇ」
エクラーさんにも教えてあげたが、エステルに惨敗。
「もう1回だ!」
と挑戦するが、3回全部負けた。エステル強し。
「くそー、しかし面白いな。これは売り物か?何処で売ってるんだ?」
「これはまだ、売り出ししてなくて、お試しで借りてるの。サリベートの木工店で来年くらいから出るかも」
「そうなのか?うーむ、残念だ。もし出来たら1つ・・・いや2つ欲しいな」
「でも新しい娯楽品らしいから、きっと安くはないと思うよ?」
「んー、まあそのくらいはギルマスだから大丈夫だとは思うが・・」
「じゃ、欲しい人がいるって伝えておきます。どのくらい売れるか目安を知りたいらしいから」
「おお、よろしくな」
食事をしてるエクラーさんに挨拶して私は板、エステルはコイン袋を持って食堂を出る。さすがに目の前でポッケに入れられないしね。
そして今日は、私の家を教えるためにサリベート街へ向かって歩き出した。
「うちの道はそんなに入りくんでないからわかりやすいよ」
「そう・・・・・・ねえ、なんか変な感じしない?」
歩きながらエステルがポッツリという。
「・・・・・そうだね。・・・細道に入る・・・?」
と聞くとエステルが、いやにいい笑顔だ。
「いいよ、もし分けられたらどうする?」
「他にいないなら、好きに(無双)していいんじゃない?」
「生け捕りよね?」
「出来ればね。組織的なら丸々出来るといいな、とは思うけど。一番の被害はスラムや孤児院、それと平民街もでしょ?」
と聞くとエステルの目が少し細くなる。
一緒に裏路地に入って適当に早足で異動していく。と3人の大柄な男が通りを塞いでいた。二人で立ち止まると、ニヤニヤと気持ち悪い笑顔で舐めるようにこちらを見ている。
「なんだ、ちっちゃい女の子だけでこんなとこ歩いてたら駄目だろぉ?」
「そんなに遊びたいんなら、俺たちがイイとこ連れてってやるぜ、へっへっへっ」
「・・・あなたたちはだれですか?このまちにすんでるひとですか?」
険しい顔で喋っているつもりだけど、あまりにもテンプレ過ぎて棒読みになっちゃってると思う。横のエステルをチラッと見ると呆れ返ったような顔で口の端がヒクヒクしてる。
「なぁに?なんのようなの?オジサンたち」
同じく棒読みになってた。
「俺たちが楽しい所に連れてってやるからな、こっちおいで」
「おとなしくしててくれないと、泣くことになるからねぇ」
胡散臭い事この上ない。まだ男達と3メーターくらいはある。エステルが私に耳打ちする。
(親玉が見つかるまでは静かにしてよう。親玉がいないならヤッちゃおう)
(ん。ここ(王都)から出ようとしたら殺る方向で)
「なーにを相談してんのかな~?」
「チビがなに考えたって逃げらんねーんだよ?俺ら仲間がたくさんいるからな」
「それはわるいひとたちがたくさんいるとゆーことですか?」
「そーゆー事だ、賢いな、嬢ちゃん」
よし!組織的と判明!
二人でクルリと来た道を走り出すと、ダダッと後から追ってくる。と曲がり角でドン、とぶつかって、二人して尻餅を付いた先も、まあ敵だった。これ、囲まれてたってお約束ね。あっ、と思ったら大きな麻のような袋を被せられ視界が暗くなる。殴られて気絶させられるよりはマシかな。ガシッと抱え上げられて運ばれていくようだ。もうちょっとやさしく抱えてよ!ご飯吐きそう。
暫くすると馬車の音がして、ドサッと押し込まれた。音は2つ、エルも近くにいるらしい。
「案外素直に大人しくなったぜ」
(油断させるためだよ!)
「いつもの屋敷だ。分かってるな?」
と声を掛けると馬車が動き出す。
(屋敷?・・親玉は貴族か商人か?)
「今回は何人くらいだ?」
「あんまり多くても足がつくんで、いつも通り20くらいですかね?」
(20も拐っても足がつかないって、この世界の憲兵はダメダメだな。あ、でも20も足枷があると無双は出来ないなぁ、どうしようエル)
一応、アジトは王都内だろうけど距離の目算のために、まず食後の眠気と戦った。しかし揺れが眠気を誘う。ガタゴトと左右左右の遠心力を感じたあと大通りに来たらしい。馬の足音と車輪の音が幾つもする。そのあとまた右左に折れたら、この馬車の音しかしなくなり、やがてキィーと小さい金属音がして止まった。1時間くらい揺られたかな?と、辛うじて認識して・・・眠った。
「・・・・え、・・ねえ、・・・起きてよ、ねえ!」
「・・・ん、・・眠い・・・」
ぼんやりしている私をエステルが揺すった。床が石だったので結構体が冷えてしまっていた。
「・・・さぶっ!・・・ん?ここは何処?」
「さぁ・・・・窓がないから、たぶん地下?だと思うけど」
「地下ぁ?地下室があるなんて生意気な!しかも使い方が残念過ぎて憤りを感じるよ!・・・・うちも掘ってみるか」
眉を寄せて私が考えていると、呆れたようにこちらを見てポツリと言う。
「それはうちの方が絶対必要なんだけど・・・」
薄暗い部屋を見回すと八畳くらいの石の部屋で、壁の一角に子供達が固まっている。扉は一つだけで部屋の端の小さなテーブルに蝋燭が1本灯っている。はっきり言って、暗すぎて回りがよく見えないので、ピンポン玉くらいの豆電球を1つ宙に浮かせて出し、部屋を確認するともっと広くて十畳くらいある事が判明する。
「・・眩しい・・・それなあに?」
「すごく、あかるいね・・・」
足元をよく見ると、5歳~10歳くらいの子供達が部屋の中で20人くらい、肩を寄せあって座っていた。
「そのあかるいのなに?」
「魔法の灯りだよ」
「まほう使えるの?すごいね!」
「わたしもやりたい・・・」
そう言われても・・。
生まれてから三歳の間に一人は付いてる筈だけど理性的に言葉のキャッチボールが出来るまでは現れてくれないようだし。どう言えばいいのかな?エステルと目を合わせて肩を竦める。
「・・・精霊が見えるようになって、お友達になってくれたら、使えるようになるとおもうよ?」
と言うと、今まで暗かった顔が少し明るくなり、いつ見えるようになるか、友達になれるか、こそこそと話をはじめる。まあ、暗いよりは明るい話題の方が希望を持てるからいいかな。
もう1つ豆電を手のひらに出し、部屋の隅まで確認すると、木の扉が1つだけ。少し叩いてみるとコッコッ、とあまり響かないのでかなり分厚そうだ。明かりを当てながら壁をぐるりと調べると扉と反対の壁の上の方に換気口らしき四角い穴があるが、子供の頭くらいの大きさしかない。
「なんもないね。で、これからどうなるの?」
「みんなを運ぶ用意が出来たら何処かに連れて行かれるみたいよ?」
「え?・・・出来るまでこのまま?ここで?数日?」
「・・・そうね、たぶん」
「む・・・無理無理無理!あと2鐘くらいで夜でしょ!夜ご飯に間に合わないよ!」
「そうねぇ・・・。私も、もっとサクッと殺れると思ったんだけど、父さんと母さんに怒られるわぁ~・・・」
二人で、どうするか考えてると
「何いってんだおまえら!俺たちはもう売られるんだから、飯だってろくに食えないし、親にだってもう会えないんだよ!」
年長の男の子に怒られてしまった。すると自分のいる所を思い出した子達はシクシクと泣き出してしまった。私がため息をついてどうしようかと思ってるとエステルが、パン!と大きく手を叩いた。
「はい、泣かないの!そんな事はさせません」
自分と同じくらいの子の頭を撫でる。
「それと・・・・売られた子はいるかな?家を追い出されたとか、食べるものがなくてお金の為にとか・・」
エステルが衝撃的な発言をするが、なんと半数が悲しそうに手をあげる。
なんて事だ。王都って普通、国で一番都会で生活が潤っているもんじゃないの?なんの政策もなしなの?
「・・・そう、他は帰る所があるのね。今、手を上げなかった子は外にいた時、突然変なオジサンに捕まったって事で合っている?」
エステルが子供達を見ると、みな頷いている。
エステルは数を確めてから、少しホッとしているが、私が渋い顔をしているのを見て、困った顔になる。
「ただでさえ子供が少ない筈なのに酷すぎる」
私が怒っているのを見たエステルは
「やっぱ、死んだ方がマシって言う目に会わせないとね!」
とニッコリ笑う。回りの子供達は私達の話しが分からずに目を白黒させている。
「全員捕まえたら・・・・精霊のいない奴は、みんな宦官にするわ」
私が不機嫌な顔で宣言するとエステルが絶句した。
「・・・死んだ方がマシかも」
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