不本意な転生 ~自由で快適な生活を目指します~

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5歳

 25、新しい娯楽のために

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 「ブレオさんは土魔法使えるの?」

秋に入って結構涼しくなってきた。肌寒いくらいだ。今日は闇の日で休みなので、約束通り父様とブレオさんちのトイレを作りにきた。奥さんは買い物に行っていて、息子さんは今年から学院に入学したのでいないらしい。9月入学なんだ。
用足しは、何気にトイレらしい匂いがする。父様はちょっと心配そうに後ろからのぞきこんだ。
デカイ穴あき木箱を退かしながらブレオさんが返事をする。
「ああ、一応使えるぞ」

トロイを呼ぶと、ポンと現れて肩にのる。
「《クレイ》」
と唱えて穴の回りをすり鉢状にして土を退けて、配管を出す。煉瓦で組んであるようで結構汚いが、水で流さないから多分どこの家も同じだろう。煉瓦も魔力を多めに流し粘土状にして5キュピト先くらいまで粘土にした後、更に魔力を流す。
「《ストーン》」
と唱えて配管を少し斜めに下水方向に向かって、石にした。

「・・・まさか本当に石に出来るなんて」
父様が目を丸くして驚いた。ブレオさんも眉が寄っている。
「私は、最初の魔法にストーンバレットがあるから、土魔法の土は石に出来るんだと思って、頭の中で形を思い出しながら固めたんですけど、土魔法が使えても誰も石に出来ないんですか?」
父様とブレオさんが言葉に詰まった。
「ミラ、言われれば出来るかもしれないけれど、あまり考えつかないよ」
「ああ、こんな使い方する奴は誰もいないだろうな」
「ああ・・・そう言えば精霊にも色々言われました。誰もこんな使い方しない、って」
と言うと、2人とも困ったような顔をした。
「おい、精霊がいうほど、ありえないのか?」
「普通は呪文の通りに、攻撃か、守るか、しか使わないだろうって」
ブレオさんは呆れ顔、父様はチートになっていく私にちょっと淋しそう。

またクレイで埋め戻しながら、回りの土を便器の形にしてから石にして、次に後ろ側を高めに練り上げてタンクを作り石にした後、足元も石畳にする。

「これが、便器壺と繋がる水桶か・・・」
ブレオさんが恐る恐る、タンクに触れながら言う。それから硬めの木を貰い、圧縮した棒と気球型の排水弁を繋いでシーソーのように引っ掛けてはめる。それからまた、クレイで蓋になる重しとそこから配管を伸ばして、上の方の木の囲いをちょっとだけバキッと壊して外まで配管を伸ばしてから石にする。

「「・・・・・・・・」」

外に出て、ストーンで少し高さを調整して、長方形の貯水槽をつくった。

「終わりました。基本はこれだけですよ?そこの横に出てる棒に紐を垂らして・・・壊れた所と・・あとは好きに作り直して下さい」
2人とも言葉もなくトイレを見つめている。
「・・・ああ、ありがとう。・・・これは、スゴイな・・・まいった」
ブレオさんは、困った顔になり苦笑いになる。
「そうだ、いずれお仕事にする気なら見本を作っておきますか?」
と、もう1度庭の土でクレイと唱えて土だけで、便所の隣に固めの便器壺をゴロンと作った。
「ブレオさん、ここには土に釉薬をかけて焼いて作る白い食器皿があるでしょう?」
「?ああ、普通の皿だろう?それが何なんだ?」
「あれと同じ作りでこれが出来るんですよ」
と教えると目を丸くした後、険しい顔になる。
「・・・・本当に?」
「はい。手先が器用なら知恵と技術だけで、魔法が使えない人でも作れるんですよ。ただしこれを作るなら、長持ちするようないい土を選んで、かなり大きくて頑丈で高熱に耐えられる釜がないと駄目だろうけど。あとは貯水と、下水管が漏れないようにキッチリと下水まで配管が届くように作れるなら、貴族の家はみんな付けたがると思うよ」
と指摘すると、真剣な目になった。
「確かにな。貴族の家は毎日何回も、下男や下女が外の用足しに捨てに行くんだ」
やはり私の推測は当たってた、外トイレですか。
「じゃあ、これが広まれば、貯水槽の水を切らさないのと、週に1度か2度、便器をブラシで綺麗にするだけでいいと思うから、少し楽になるね」
誰だって3Kな仕事は嫌だもんね。
「・・・ああ、そうだな」
なんか、マジで真剣なんですけど、大丈夫かな?
「まずは自分だけの魔法で作るか、焼き物職人と鉄工職人と石工職人を探して利益を相談してから作るか、考えるといいですよ。最初はブレオさんの男爵家か、嫌なら知り合いや友人の貴族の家に割安で作ってみたらどうかな?それが成功すれば、口コミで広がってみんな欲しがって頼み込んでくるはず・・」
とニヤリと笑うと父様とブレオさんは目を丸くした。
「・・なんか、やり手の商人だな、嬢ちゃん」
「どうすれば売れるかを考えるのは商業戦略の基本ですよ」
「ミラ・・・・」
父様がちょっと困っている。
「お、そうだ。頼まれてのが出来たよ」
と言うので工房に入れてもらうと、64マスの線が入った板と、布袋に白黒コインが入ってた。
「ありがと、ブレオさん」
作業台に寄って袋を触るとカチャカチャ、と音がする。やっと出来る!
「で、どうするんだ?」
父様はキョトンとした目になってるけどブレオさんは使い方を知りたいらしい。4個のコインを出して中心に白と黒を置く。それからコインを1つ握って放り上げてパン!と手で挟む。
「まずこのコインが白か黒か当てて下さい」
「・・・・・白だ」
あけると白だった。だってこの世界ジャンケンがまだないんだもんね。
「ブレオさんが当たったので、白と黒、どっちか選んで下さい。黒は先攻で白は後攻なんです」
「じゃ白でいい」
そして、黒を挟んでひっくり返す、白を挟んでひっくり返す、縦横斜め、挟めたら自分の色に返す、と教えて進め、返す所がなかったら休み、とマスを埋めていく。そうして・・・
「私の黒が10個多いので、私の勝ちです!」
やったー、と万歳すると、2人は目を丸くした。
「ん、面白いな」
「縦横斜め、色々頭を使うね、ミラ」
「リバーシです。反対にする、ひっくり返るって事です。・・・これ、おトイレの代金と相殺でいいですか?」
と聞くと、
「お、交渉上手だなぁ・・・」
とブレオさんが苦笑いして、父様が目を丸くして慌てた。
「ミラ!・・・ぶ、ブレオさん、代金は払うよ」
「いやガイ、値段を考えると用足しの方がはるかに高い。相殺でいいのか?嬢ちゃん」
と確認される。
「いいですよ。ありがとう、ブレオさん」
「で、これは俺が作ってもいいのか?」
「え?・・・・売れそうですかね、これ?手作業、細かいですよ?」
「ん、このコインがな。でも売れると思うぞ。娯楽が少ないからな」
「そう、ないんですよ。私、遊ぶ物がなくて死にそうでしたから」
と悲しい顔したら、父様がびっくりしてた。
「そうだったのか?ミラ、何で言わなかったんだ」
「紙は高そうでお絵描き出来ないし、ボールも積み木もパズルもないんだもん、この世界。ピアノも・・・あれはきっと作るのが大変だから、たぶんとってもお金持ちか上級貴族じゃないと持ってないんでしょ?」
と言うと、図星を指されて、うっ、と悲しそうな顔をした。
「ゴメンよミラ」
「ピアノも弾けるのか、嬢ちゃん」
「弾くよ、今は手が小さいからちょっとね」
「あ!でも去年、実家の兄上がカルフィーナのためにピアノを購入したと手紙で言っていたよ。シングレアの家に行ってみるかい?」
「へぇ、男爵家でもピアノあるんですか。カルフィーナって・・」

ちょっと、いやかなりビックリだ。やはり以外と裕福なのかも。

「ミラの1つ上の従姉だよ。やはり位が低いといい嫁ぎ先が見つからないから、教養を身につける為に習い事をさせる、と書いてあった。ミラも行けばカルフィーナと一緒に習わせて貰えると思うよ、家に行くかい?」

え?そんな突然振られても困る。ピアノには触りたいけど、でも・・・残念だけど今は首を振る。
「・・・この世界の曲を知らないから駄目。私が弾いたら、きっと天才だとか言われて、曲を欲しがる人に囲まれる。・・・どうしても弾きたくなったら考えます」
とションボリすると、父様が慌てた。
「あ!そ・・そうだね、今は駄目か・・・残念だ」

「・・・それでホール?つみぎ?パスル?とかは何だ?」
「ボールは、ゴム、っていう、弾力のある物がこの世界にないと出来ないから見つけたらね。積み木は小さい子が遊ぶ木の玩具、パズルは1枚の絵を細かく千切ってそれを、元の1枚に戻す遊びだよ。ブレオさんが作ってくれるなら玩具とパズルを頼みたいけど、パズルは糸鋸がないと無理かな、と」
「イトノコ?って何だ?」
新しい物ばかりだから、質問が多いね。と思ってこの前のチュイーンって音が何だったのか聞くと、テーブルから歯が出ている電鋸ではなく、魔石に魔力を入れて使うチェーンソーみたいな電動鋸だった。
紙と書くものを借りて長めで糸の様に細いノコギリの歯を書き、上下を挟んで細かく動かして木を切る物だと教えると、目を見張って絵図を眺めた。専用テーブルで設置して手元の木の方を曲げたり回したりしながら好きにカット出来るのだと、説明した。
「この機械が出来たら作るものの幅がもっと広がるし、たぶん細かい作業が少し楽になりますよ。ただし、この歯は細いから、折れやすいので何本かストックがあるといいと思いますけど。私は仕組みまでは詳しくないのでこれ以上は分からないんですけど」
「・・いや、この先を考える価値は充分あるぞ、嬢ちゃん。この機械は考えてみよう」
「頑張って下さい。で、リバーシ、作るんですか?」
「ああ、作る。利益は1割でどうだ?」
「それで充分です」
商談がまとまって、父様が目を丸くした。
「ミラ!・・・いいのかい?」
「私の事は秘密ですから知らないんですよね」
とブレオさんを見るとニヤリと笑った。
「ああ、そうだな」
「じゃあ、ちょっと秘策を教えましょう」
これは作り方が分かれば他の職人もすぐ作れるので、台の端に番号を付けて(ロットナンバーってやつね)百個くらい作って置く事。そのあと、持ち運びしやすい折り畳み式をまた100個くらい作ったら取り合えず打ち止めにする。
「たったそれだけで止めるのか?」
「そのあとは注文を受けたら丁寧に作るか、なくなったら2、3個店に置けばいいです。重要なのは品質だから手を抜いちゃ駄目ですよ?」
「それは分かってる」
そして隠し技として塗料を塗る前のコインの黒い方全てにブレオさんのBの焼き印を押してから塗料で隠すのを進める。だから見習いがいても焼き印と黒い塗料だけはブレオさんか奥さんのみが秘密にやること。
「何で必要なんだ?」
「例えば偽物が出てきて、板やコインが割れたからと因縁をつけられたときの為ですよ。例えば値段は少し高めに売って、そのかわりに板は駄目だけど、コインが割れたときは持ってきたら無料で交換するとか。無くしたのは交換出来ないから、安めに五個位ずつ売るの。で、コインの下にBのマークがなかったらうちのじゃないって言えるでしょ?」
「・・・・すごいな、苦情対策か」
「ん、作りやすいから絶対真似はされると思う。作り過ぎて余り過ぎてもねぇ。その頃にはもう別の商品考えます。どうですか?」
「ああ、それでいいよ」
それから作業場をクルリと見回して、小さくなった木の切れ端が山になっているのを見つける。
「あと積み木とかは切れ端で出来るので捨てないで」
「え、こんなクズでいいのか?」
ペンを借りてリバーシの図の端に、円柱、円錐、四角柱、四角錐、正方形、長方形、正三角形など、基本になる図を描いた。
「大きさも、小さい子が握れる大きさなら特に決まりはないんですけど、コレが基本の積み木でこの上に色をつけるんです。でくっつけたり重ねたりして色々な物を作って遊ぶんです、お城とか家とか乗り物とか。自分の好きに作れるので創造力が豊かになりますよ」
「ほう、これはいいな。切れ端も最後まで使えるのか・・・」
「これを10個~20個とかで、お家セット、とかお城セット、として売るんです。建物って左右対称が多いし、セットにするなら同じものを何個も作れないと駄目だから、見習い仕事にもいいと思いますよ、切れ端だし」
と言って、簡単な窓と入口、三角屋根を重ねた家と、四方に円柱を配置し、小さい二階建てに円柱円錐の見張り塔付きのお城の絵を描いた。
「どうですか?絶対これ、って訳じゃないですけど、さっきの図形を組み合わせた木で、これを作れるように工夫するんです」
「んー・・今は手が足りないな。リバーシが終わって余裕が出来たらやろうか・・・・ん?何だ?」
私がニッコリ笑顔なのを見てブレオさんが怪訝な顔をする。プラスチックも加工技術もないので木でやって貰うしかないのだ、頑張って貰おう。
「木で出来る物、まだ他にもたくさんあるので宜しくお願いします」
「そ、そうか。頑張ろう・・」

このあと、新しい物をを作る度に追加が大変な事になって悲鳴をあげる事になるのをブレオさんはまだ知らない。

と、カランカランと表の扉の音がした。奥さんが帰ってきたようだ。
「ブレオさん、じゃ裏から帰るよ。ミラ」
「ああ、有難う、ガイ」
父様が私を抱き上げ、板を持つ。私はコインの布袋を掴んでブレオさんに手を振った。そして裏から家に戻った。


夜の食事のあと、母様が目を輝かせてハマった。
「ミラ、もう1回よ」
もう五回戦して、私が4勝、華を持たせて1敗だ。
「今度はお父様とどうぞ」
ちょっと疲れたです(心の声)。母様がこんなにハマるとは。

結局ブレオさんが量産出来る様になる一ヶ月間は、ほぼ母様の物となった。


今日は風と白の魔法をチェックしようと思う。収納が欲しいからね。あるかな?

「ウィル、エリーゼ、魔法を教えて」
2人がポポンと現れる。
「風の魔法は?」
『んーと、ウィンドカッターと、ウィンドバリアと、グラスパペットだよ。それからウィンドアローとアイスジャベリンとスリープ、だね』
ふむ。風の刃と風の壁、ぐらす?コップ?いや・・・グラ・・ス、グラッスー・・・って、草か?・・葉っぱの人形?それから風の矢と氷の槍と睡眠か・・・。え?初期で睡眠が使えるの?ヤバイ、戦闘で眠らされたらどーすんの?
敵モンにスリープを掛けられ2ターンくらいボコられたゲームを思い出してしまった。
「ねえウィル、スリープされたらどうやって戻るの?」
『向こうより魔力が多かったら掛からないし、多分すぐ覚めるよー』
「そう、やっぱり魔力量が多い方が優位なのね。もし掛かったらどうしたらいいの?」
と聞くと
『攻撃されて、痛かったらすぐ覚めるよ。攻撃されなければその魔力が切れるまでは駄目だね。』

・・・一回は攻撃されてしまうのか。
反射で防げるのか?いや言葉にした時点で有効だったら遅いか。魔力纏いの身体強化と同じように反射を纏えばいい・・のかな、出来るかな?使われる前に魔力多めでサイレントとか出来ればいいんじゃない?
「ねえ、サイレントとかは、ないの?」
と聞いてみると

『・・・あるのかな?・・』
ウィルが首を傾げている。分からないと言うことは上級か・・・。

『でも、スリープは中級魔法なるから、敵の精霊が下級だったら人間も結構魔力使うし、威力も弱いだろうから平気だよ。君の魔力総量なら・・・・・・上級精霊じゃない限りは・・』

ウィルは私の回りをクルクルと回りながら、魔力量を見て、全然大丈夫、と頷いている。

「そうかな・・・」

『・・ん~・・・でも、あったと思うわよ?サイレント。あんまり覚えてないけど・・』
エリーゼがぼんやりと答えた。
「そう、あるんだ。・・・でも相手が魔法を使えるか、強いか弱いか分からないよね?」
『あら、全属性が揃えば〈鑑定〉が使えるようになるはずよ?ある程度は相手を調べられるわ』
「え、ほんとに?」
鑑定ってステータスとは違うよね?
ゲームでステータスって初期から常に自分のデータを見れるものだし。
「・・・・《ステータス》」
まさかと思い、自分の目の前にタブレットが出てくるイメージで唱えてみたけど、何も起こらなかった。
・・・だよね。もしステータスがあったらゲームの中かと疑うとこだ。悪の組織とか、ラスボスとかいたら絶対やだし、ついでに最近流行ってた乙女ゲームもやだ。

しかし風、攻撃系が多いね。カッターは止めとこう。
「《ウィンドバリア》」
と唱えると、風がクルクルっと自分の回りで渦を巻いた。・・・それだけ?と思って回りを見ると、寒くなくなってて回りが無風状態みたい。外の街中の音も小さいと言うか遠い?感じ。風が体全体を覆っているみたいだ。なのでその回りの風を更に足元に集中させて軽く渦を作り、その上に乗るように足を少し上げてみる。
「《浮遊》」
と、足の裏辺りから魔力をグンと取られたが、三十ピトくらい浮いた。
「・・やった!・・・」
『すごい、飛んでるね!僕たちと一緒だ!』
『まあ!・・・』
ウィルはとても喜んでいるが、エリーゼは目を丸くして、ただ驚いている。2階のまどくらいまで少しずつ上がると、いつもの魔法訓練よりは魔力を多めに奪われているのが分かる。ライトの豆電を5時間出来るとするなら、フライングとか飛翔の魔法を考えても多分1時間持たない。もっと飛びたかったら、魔力を増やさなければ遠くまで飛べない。体内魔力が減ったので地面に降りる。
「ちょっと疲れた・・・たった10分くらいだったのに意外と減ったね」

目を丸くしていたエリーゼが、ピトッと私に触れた。びっくりして横目でチラリと見ると
『あら、珍しい。稀人なの?。やっぱり突飛な事をするわね、異世界人は。それにしても・・・命と体にズレは無いのかしら?』
「え?・・・・ないと思う。もう大人だけど体が小さいから、ちょっと不便なだけ」
『そう、ならいいけど。ほんとに珍しい事があるものね』
「(あの・・・もう一人いるけど?)」
と、言うと目を見開いて眉を寄せた。
『まさか・・・本当?・・・それはここ最近は、大地の揺れが百年より短く頻繁になっているって事なの?』
「さあ・・・私はまだ数年だから、揺れたのは知らないけど・・・」
『そう。そのうち他の子に聞いてみるわ』

次の魔法は・・・
「《グラスパペット》」
と唱えると、風がフワッと葉を運んで葉っぱが1枚一瞬キラリと光ると、下に落ちる事なく目の前でヒラヒラフワフワしている。・・これをどうするんだろう。ウィルが葉っぱを摘まんで庭の端の方に離れる。それからニコッと笑って葉っぱを口元に持ってき、何かを喋った。と、フワッと顔に風がきて
『聞こえる~?』
とウィルの声がした。
おお、すごい!風が音を運んできた。見えない所に置いたら盗み聞き出来そう・・・。そんなに上手くはいかないかな。どのくらいまで届くのか、そのうち確かめよう。
「《ウィンドアロー》」
と唱えると、片手に綺麗な薄緑の弓ともう片方に同じような薄緑の矢が現れた。
『あれ?・・・木じゃない。でも凄く綺麗だね』
え?普通は木なの?風は目には見えないと思っていたイメージの違いなのか、私のは薄緑の色を混ぜたアクリルかプラスチックのような弓矢だった。見た目もデザインも綺麗だけど、思いきり引いたら耐久なくて折れそう。魔力だから大丈夫だろうけど。
次は槍か。
槍、槍、槍・・・氷で槍ね・・・
「《アイスジャベリン》」
風が、シュゥゥ、っと音を立てて手元に集まりピキピキと氷が出来る。出来上がった槍は・・なんか槍じゃなかった。何処かで見たな・・・これは
「・・・銛かな?・・・・捕鯨するわけじゃないんだけど」
先端が矢印が密集したみたいな感じになってるよ。これも何気に前の槍と同じく、刺して抉る攻撃しかないような・・・。
『トゲトゲがいっぱいだね』
ウィルに突っ込まれた。
「・・・そうだね、槍は・・もう止めようか」
薙刀の方がまだマシかもしれない。でも薙刀なんて呪文はないから魔力を使うし、もう少し考えよう。スリープは相手がいないので、後にする。

「エリーゼ、白の魔法は?」
『グラビティ、コンパクト、スロウよ。そしてグラビトン、スペース、クイックね』
えーと・・・重力と、コンパクト?って・・・ファンデのケースじゃないよね?・・コンパクトにする?、小さくする?・・・小さく小さく小さ・・く・・・圧縮・・する?・・・・・あ!使ったわ、だから来たのか、白の子。納得。それと遅くする、か。
じゃあ白は、時間と空間なんだね。次のが、重力(大)と、スペース?・・多分これがそのまま空間になるはずだ。あと逆の、早くする、だね。家の庭でクレーターが出来たら地下が危ないし、早い遅いも掛ける相手がいない。家で出来るのは結局スペースだけだ。そして、ここの魔法は魔法量の決まりがあったはず。
「エリーゼ、このスペースって、どのくらいの大きさなの?」
すると、家や庭を見回して
『そうねぇ・・・一応その個体の体内魔力の量と比例しているのだけど、昔は子供でも白魔法を使える子がいて、この庭より少し小さいくらいだったかしらねぇ。大人は・・・この庭の3倍近くあったと思うわ。スペースは空間を割って広げるだけだから時間は止めないし』
「え、そうなの?じゃ長時間のナマモノは駄目なんだ」
それがこの呪文の最大量・・・・なんか小さすぎて心が萎んだ。日常生活でなら結構入る量だとは思うけど、でも小さいわ~。
ラノベとかの無限収納、ちょっと憧れてたんだけど無理かぁ。

ミラは前にアリアから、既にそこいらの大人より量が多いと言われた事をスッカリ忘れている。実は裏庭どころではなくミラが現段階でスペースを作ったら、自分の家が4つか5つ入るくらいの大きさにはなっている。なので多分大人になったらその4~5倍になるであろう事を本人は全く認識していない。

「なんか、想像したより凄く小さいんだけど、無限収納とかは無理なの?」
と聞くと、目を丸くした。
『む、無限?そんなの誰も考えた事ないんじゃない?イメージがしっかりしているなら作ってみたら?』
と言われて眉を寄せて、無限のイメージ?を・・・と思ったけど、想像出来た時点で大きさが有限になるんじゃないかな?と思った。
「無限は形が決められないから想像出来ない気がする」
『まあ、そうねぇ・・』
「仕方ない、なるべく大きく想像してみる」
どうせ有限なら大きく想像しておけばいいよね。アドベンチャー映画に出てきた超巨大倉庫とか、ジャンボ機が何台も入る巨大整備工場とかの空間を構築すればいいんじゃない?
庭にある薪を1つ手に取り、目を瞑って、幅・・高さ・・奥行き・・魔力で製図をするように大きく大きく見えない魔力線をのばしていき、魔力が減ったかな?と思った所で倉庫の終点にした。そしてスペースとは言わずに、目を閉じたまま設定した倉庫の壁に薪を押し出す。
「《収納》」
と唱えて見えない壁に押し込むと、グン、と魔力を奪われ、私が設定した製図の線に沿って光がパァッと走って消えた。薪は手から消えていた。私は地面に、へたっと座った。
「(危ない、枯渇するかと思った)・・・・疲れた、怠い・・・」
薪置き場に寄りかかって眠ってしまった。


 ∽∽∽∽ ∽∽∽∽ ∽∽∽∽


製図の空間を確めたエリーゼは目を丸くした。無限でないにしろ、精霊でも考えられないくらい広すぎた。
『まあ!空間がこの世界と少しずれている。本当に時止めの空間を人が作れるなんて。・・・一体お城が幾つ入るのかしら?でも・・・・この街は余裕で入りそうだわ。今でこの広さだと体に比例して、これから3倍か4倍にはなるかしらね・・』
コテッと眠るミラを、呆れたように眺めてから、少し眉を寄せる。

『面白い子ね。・・・闇は・・手に入れる事が出来るのかしら?』


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