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第四章 運命との決別

71、新しい未来へ最終話

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「今此処に三権の長としてクローディア・フィールディングをアッカルド王国国王として承認する。」

司法の長が代表して即位の言葉を述べると経済の長が跪くクローディアの頭に王冠を慎重に乗せた。
クローディアがゆっくりと立ち上がり王の装束であるビロードのマントを払って振り向くと持っていた杖で玉座の床を突いた。

コツン

静まり返った王宮の即位の間に向かって自らの王としての宣言を述べた。

「わたくしはアッカルド王に即位したクローディアです。わたくしはアッカルドに住まう全ての民の平和と安全と生活に対しての責任を負うことをここに宣言致します。皆、わたくしに着いてくれば良い!わたくしを信じれば良い!わたくしが皆を愛するように愛される事を望みます!」

そう言って再度杖で音を響かせると即位の間で固唾を飲んでクローディアを見つめていた人々が一斉に歓声を上げた。

「「「クローディア様!!」」」

「「「クローディア王!!万歳!!」」」

クローディアは歓声と拍手に包まれて正式にアッカルド王となった。
貴賓席にはシダール王夫妻やシャルロッテの父であるマキオラ王とセドア王が拍手を送っているのが見える。その隣ではアーベルとシャルロッテがしっかりと手を繋いでいた。クローディアはその様子を微笑ましげに見つめてから玉座の傍に立つビクトル王子の方に視線を向けた。

「ビクトル様、、。」

クローディアがビクトル王子に手を差し出すとその手を取ってビクトル王子も玉座の台に立った。二人は今日までの出来事を振り返り頷くとそれを見ていた司法の長の声が響く。

「皆のもの、これからクローディア王とシダール王子ビクトル殿下の結婚式を執り行う。異議のあるものは手を上げよ!」

「「「・・・・・。」」」

「クローディア王、貴女はこのシダール王子ビクトル殿下を王配に望みますか?」

「はい。」

「シダール王子ビクトル殿下、貴方はアッカルド王クローディア殿下の王配として常に支える事を誓いますか?」

「はい!!」

「二人の婚姻はアッカルドの三権の長によって承認された。二人は今この時より夫婦となった!!!」

司法の長が高らかに宣言すると会場からは更なる歓声と拍手が巻き起こる。
この一年は不幸が続いたアッカルドにとって久しぶりの慶事なのだ。皆の顔が嬉しさに輝く。

「クローディア王、万歳!!ビクトル王配、万歳!!」

クローディア王とビクトル王配は歓声に包まれたまま国民へのお披露目の為にバルコニーに向かった。そう、ここは地震の時にクローディアが民に呼びかけた場所だ。
クローディア王とビクトル王配は互いに手を取り合ってバルコニーの中央に立った。目の前には二人が出て来るのを待っていた国民で埋め尽くされた王宮前広場が広がってその歓声は互いの声が聞こえない程だった。

「ビクトル様、わたくしは幸せ者です。この国に帰ってきて良かったと今なら心から言えますわ!」

「クローディア、それは君が選んだ道だよ。少しでも違う道を選んでいたらこのに立っていたのは君ではなかったかも知れないし、私がいなかったかも知れない。それでも君は選び今私とここにいるのだ。これからも二人でここにいられるように頑張って行こう!」

「はい!!ビクトル様。わたくしたちの未来は、運命は何も決まっていないのです!わたくしたちで作って参りましょう!」

「ああ!!」

ビクトル王配はクローディアの手の甲にキスを落とすとその手をそのまま天高く掲げた。
その様子を見ていた民から更に歓声が上がる。
それを見てクローディアは心の中でしっかりと自分に言い聞かせた。

わたくし、王太子は卒業して王になりました!!

民を真っ直ぐに見つめるクローディアはアッカルド王国に真の平和と繁栄をもたらしたのだった。




王都から遠く離れた採石場でカーティスは王都方角を眺めていた。
今日は即位式と結婚式が行われている筈だ。カーティスの胸に後悔と妬ましさと羨ましさと羨望する気持ちが混ざり合って顔が引き攣る。
カーティスは前王ローレンス夫妻を守りきれなかった責任をとって処刑される筈だったが、慶事を前に血で汚す事を憂慮する意見も多く、強制労働が科せられる事になった。それからカーティスはこの採掘場で働きながら最下層の生活を身をもって体験していた。頭の良し悪しよりも少しでも大きな石を運ぶ事が尊重される世界だ。

「おい!!新入り!!サボってんじゃねえぞ!!只でさえ人並みの石を運べねぇんだから数だけでも稼げよ!!」

そう言ってカーティスが運んでいた石の上にもう一つ石を乗せられた。
その重さに耐えきれず前に倒れると周りから嘲笑が浴びせられる。そして、明日も明後日も石を運ぶのだ。

「死んだ方がましだった、、、。」

その現実にカーティスの顔から表情が消えた。ここで生きていくためには思考を止めて何も考えてはいけないのだ。カーティスはそう言い聞かせると作業に戻る。
遠く王都の歓声はここには響かなかったのだった。
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みんなの感想(172件)

高校生の母
2022.03.07 高校生の母
ネタバレ含む
解除
高校生の母
2022.03.06 高校生の母

面白かったです(⋈◍>◡<◍)。一気に読ませていただきました。
※へたれなビクトル君には じりじりいたしましたが(笑)

波湖 真
2022.03.06 波湖 真

お読みいただきありがとうございました
楽しんでいただけて嬉しいです!
今後ともよろしくお願いします!

解除
太真
2021.11.12 太真

2日かけて一気に拝読しました‼️クローディアちゃんの心意気と成長に惚れ惚れしてビィクトル君にジレジレしアーベル君とバーナード君達の忠誠心と友情にほっこりしながら楽しい時間を過ごしました(o⌒∇⌒o)素敵なお話しをありがとうございました👏

波湖 真
2021.11.14 波湖 真

お読みいただき、ありがとうございました!
楽しんで頂けて嬉しいです。
ありがとうございます!

解除
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