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フルールの自覚
19.お出かけ
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「え? 町にですか?」
私は目の前でニコニコしているアレクサンドラ様とその後ろで苦虫を噛み締めたようなマルセルくんを見下ろした。
私は一旦立ち上がった椅子に腰を下ろす。
「ええ、フルールさんの淑女教育も進んだでしょう? 少し息抜きが必要だと思うの」
「えっと、それは私のために?」
「ほら、この前もパン屋さんが懐かしかったと言っていたでしょう? だから、わたくしもご一緒したいの」
「姉さんがただ単にそのパン屋に行きたいだけです」
ニコニコのアレクサンドラ様の後ろから冷め切った声が入る。
「マルセルはお黙りなさい。わたくしはちゃんとお父様にもお母様にもお許しをいただきました」
「それはあの二人は姉さんには甘いから!!」
「日頃の信頼度の差ですわ。フルールさんはどうかしら?」
「えっと、うちは大丈夫です。元々住んでいた場所ですし、アレクサンドラ様のご案内すると言えば行くように言われると思います」
私がアレクサンドラ様の勢いに押されながら答えるとマルセルくんが「あちゃー」と手の平で目を隠す。
「よかったわ! 町に行くのは初めてですの! 是非フルールさんに案内して頂きたいわ!!」
「えっと、いつになさいますか?」
「次のお休みはどうかしら?」
「わかりました。あの、マルセル様、すみません。私がアレクサンドラ様に町の様子をお話ししてしまったせいです」
マルセルくんは手をどけると微笑んだ。
「いや、いいんだ。最近まぁ色々心配事がなくなって暇になっていたんだ。だから遅かれ早かれ言い出したはずだよ。まだ、土地勘のあるフルールが一緒の方がいい」
「心配事?」
「あ、ああ、まぁゲームとかゲームとかゲームとか」
マルセルくんの言葉はよくわからなかったが私もワクワクしてきた。
何にでも興味を持つ好奇心旺盛なアレクサンドラ様に町を案内するのは楽しいだろう。話した時に興味を持たれていた場所を確認しないと!
「では、アレクサンドラ様はどちらに行かれたいのですか?」
「まずはパン屋さんでメロンパンが食べてみたいの。あと、屋台でクレープが食べたいわ。家のクレープは手には持たないのよ」
意外に食いしん坊なアレクサンドラ様に笑みが溢れる。
「では、服装は質素なものにしてお忍びで町歩きとかいかがでしょう?」
するとアレクサンドラ様は手を叩いて喜んだ。
「素敵!! どのようなドレスがいいのかしら?」
私はこの前の視察の時に見たアレクサンドラ様に似合いそうなドレスを紙に書いて見せる。
「こんな感じのものが今町では流行っているみたいです」
「まぁ、そうなのね。わかったわ」
「あと公爵家の馬車では目立ちますので、よろしければうちの馬車でお迎えにあがります」
「ありがとう。楽しみにしていてよ」
後ろでガックリと肩を落としているマルセルくんには悪いが私とアレクサンドラ様は一緒に出かけることになったのだった。
町歩き当日私は公爵家の門を馬車から見て驚愕していた。
伯爵家だって平民時代からすればお屋敷だったが、規模が違う。お城だ。
門を過ぎると森を抜けて馬車はひた走る。奥には湖も見える。そして、ようやく公爵家のお城に着いた。門から見えていたはずなのにかなり遠かった。
「公爵家って凄い!」
車寄せに馬車が入ると玄関扉が開かれてアレクサンドラ様が現れた。
「え?」
馬車から見たアレクサンドラ様が予想の何倍も上にいっていたのだ。
私は確かに町で流行っている服を教えたはず。確かにデザインはそうなっている。でも、アレクサンドラ様が着ると別物だった。
シンプルなラインのワンピースのはずなのに何故か妖艶な感じがしてしまう。
(何故?)
「フルールさん、待っていたわ!」
馬車から降りると礼をとる前にアレクサンドラ様に手を取られて馬車に押し込まれる。
「え? アレクサンドラ様?」
「さあ、行きましょう。今すぐ行きましょう」
「あの、ちょっとお待ちください。あの」
「さあ、早く馬車を出して頂戴」
御者も慌ててドアを閉めようとするとガシッとドアが外から引っ張られた。
「アレクサンドラ!!」
凄い形相で乗り込んできたのは殿下だった。
「で、殿下?!」
「ああ、すまない。僕達も乗せてくれ」
「達?」
「フルール、おはよう。ごめんよ。騒がしくて、本当はお茶でもと思っていたんだけど、姉さんが僕達を置いて行こうとしたんですよ。ひどいですよね」
殿下の後ろからマルセルくんが額に青筋を浮かべて引き攣った笑顔を浮かべる。
「もう! 今日はフルールさんと女子会ですって申しました! マルセルも何故殿下に教えてしまうの!」
「町に初めて行く人の言葉ですか! 絶対にフルールに迷惑をかける未来しか見えないからですよ! 僕一人で姉さんを止められるはずがないでしょう」
「なによ! 人を危険物みたいに言わないで頂戴」
アレクサンドラ様はそれでも諦めたように私を見て小さく「ごめんなさいね」と呟いた。
「とにかく! 殿下もマルセルもわたくし達の邪魔はしないでくださいませ! よろしいですわね」
「ああ」
「わかりました」
ストンと腰下ろした三人はふんっと横を向いている。
私はため息を隠さずに出発の指示を出した。
「フルールさん、怒ってらっしゃる?」
アレクサンドラ様が私の隣でビクビクと訪ねてくる。その様子は学園で見られるものとは全く異なり小動物のようだった。
「怒ってはおりませんが、アレクサンドラ様はきちんと殿下やマルセル様にお話するべきです。お二人とも心配されたのでしょう」
アレクサンドラ様はシュンとした。
「特にお二人を置いていこうとなさったのはダメです。だって、殿下もマルセル様もきちんとお忍びの服装をしているではありませんか?」
殿下もマルセルくんもシンプルなシャツとスラックスで貴族というよりは裕福な商人風の服装をしている。
「そ、そうね。フルールさんはわたくしくを断罪なさる?」
「え? 断罪? なんのお話でしょう。とにかく今日は四人で町歩きを致しましょう。なるべく安全な場所を調べてきました」
そう言って私は今日行く予定の場所を書いた紙を殿下に差し出した。
「わかったわ。殿下との恋も始まるかもしれませんものね」
私は首を傾げる。アレクサンドラ様はたまに今のようにわからない言葉を話すのだ。
「ありがとう、フルール。突然押しかけてすまなかった」
殿下がしっかりと頭を下げてくれる。
「そ、そんな、やめて下さい。私は初めから殿下とマルセル様が来られるものと思っておりました」
「え? そうなのかい?」
「はい。ただ、アレクサンドラ様が殿下に仰っていないとは思いませんでした」
「ほらな?」
「そうですよ!」
「でも、せっかくですから四人で楽しみましょう! アレクサンドラ様」
私がにっこりして話しかけるとやっとアレクサンドラ様も笑顔になってくれる。
「わかりましたわ!」
その後は和気あいあいとみんなで行きたいお店などを話しながら町へ向かったのだった。
私は目の前でニコニコしているアレクサンドラ様とその後ろで苦虫を噛み締めたようなマルセルくんを見下ろした。
私は一旦立ち上がった椅子に腰を下ろす。
「ええ、フルールさんの淑女教育も進んだでしょう? 少し息抜きが必要だと思うの」
「えっと、それは私のために?」
「ほら、この前もパン屋さんが懐かしかったと言っていたでしょう? だから、わたくしもご一緒したいの」
「姉さんがただ単にそのパン屋に行きたいだけです」
ニコニコのアレクサンドラ様の後ろから冷め切った声が入る。
「マルセルはお黙りなさい。わたくしはちゃんとお父様にもお母様にもお許しをいただきました」
「それはあの二人は姉さんには甘いから!!」
「日頃の信頼度の差ですわ。フルールさんはどうかしら?」
「えっと、うちは大丈夫です。元々住んでいた場所ですし、アレクサンドラ様のご案内すると言えば行くように言われると思います」
私がアレクサンドラ様の勢いに押されながら答えるとマルセルくんが「あちゃー」と手の平で目を隠す。
「よかったわ! 町に行くのは初めてですの! 是非フルールさんに案内して頂きたいわ!!」
「えっと、いつになさいますか?」
「次のお休みはどうかしら?」
「わかりました。あの、マルセル様、すみません。私がアレクサンドラ様に町の様子をお話ししてしまったせいです」
マルセルくんは手をどけると微笑んだ。
「いや、いいんだ。最近まぁ色々心配事がなくなって暇になっていたんだ。だから遅かれ早かれ言い出したはずだよ。まだ、土地勘のあるフルールが一緒の方がいい」
「心配事?」
「あ、ああ、まぁゲームとかゲームとかゲームとか」
マルセルくんの言葉はよくわからなかったが私もワクワクしてきた。
何にでも興味を持つ好奇心旺盛なアレクサンドラ様に町を案内するのは楽しいだろう。話した時に興味を持たれていた場所を確認しないと!
「では、アレクサンドラ様はどちらに行かれたいのですか?」
「まずはパン屋さんでメロンパンが食べてみたいの。あと、屋台でクレープが食べたいわ。家のクレープは手には持たないのよ」
意外に食いしん坊なアレクサンドラ様に笑みが溢れる。
「では、服装は質素なものにしてお忍びで町歩きとかいかがでしょう?」
するとアレクサンドラ様は手を叩いて喜んだ。
「素敵!! どのようなドレスがいいのかしら?」
私はこの前の視察の時に見たアレクサンドラ様に似合いそうなドレスを紙に書いて見せる。
「こんな感じのものが今町では流行っているみたいです」
「まぁ、そうなのね。わかったわ」
「あと公爵家の馬車では目立ちますので、よろしければうちの馬車でお迎えにあがります」
「ありがとう。楽しみにしていてよ」
後ろでガックリと肩を落としているマルセルくんには悪いが私とアレクサンドラ様は一緒に出かけることになったのだった。
町歩き当日私は公爵家の門を馬車から見て驚愕していた。
伯爵家だって平民時代からすればお屋敷だったが、規模が違う。お城だ。
門を過ぎると森を抜けて馬車はひた走る。奥には湖も見える。そして、ようやく公爵家のお城に着いた。門から見えていたはずなのにかなり遠かった。
「公爵家って凄い!」
車寄せに馬車が入ると玄関扉が開かれてアレクサンドラ様が現れた。
「え?」
馬車から見たアレクサンドラ様が予想の何倍も上にいっていたのだ。
私は確かに町で流行っている服を教えたはず。確かにデザインはそうなっている。でも、アレクサンドラ様が着ると別物だった。
シンプルなラインのワンピースのはずなのに何故か妖艶な感じがしてしまう。
(何故?)
「フルールさん、待っていたわ!」
馬車から降りると礼をとる前にアレクサンドラ様に手を取られて馬車に押し込まれる。
「え? アレクサンドラ様?」
「さあ、行きましょう。今すぐ行きましょう」
「あの、ちょっとお待ちください。あの」
「さあ、早く馬車を出して頂戴」
御者も慌ててドアを閉めようとするとガシッとドアが外から引っ張られた。
「アレクサンドラ!!」
凄い形相で乗り込んできたのは殿下だった。
「で、殿下?!」
「ああ、すまない。僕達も乗せてくれ」
「達?」
「フルール、おはよう。ごめんよ。騒がしくて、本当はお茶でもと思っていたんだけど、姉さんが僕達を置いて行こうとしたんですよ。ひどいですよね」
殿下の後ろからマルセルくんが額に青筋を浮かべて引き攣った笑顔を浮かべる。
「もう! 今日はフルールさんと女子会ですって申しました! マルセルも何故殿下に教えてしまうの!」
「町に初めて行く人の言葉ですか! 絶対にフルールに迷惑をかける未来しか見えないからですよ! 僕一人で姉さんを止められるはずがないでしょう」
「なによ! 人を危険物みたいに言わないで頂戴」
アレクサンドラ様はそれでも諦めたように私を見て小さく「ごめんなさいね」と呟いた。
「とにかく! 殿下もマルセルもわたくし達の邪魔はしないでくださいませ! よろしいですわね」
「ああ」
「わかりました」
ストンと腰下ろした三人はふんっと横を向いている。
私はため息を隠さずに出発の指示を出した。
「フルールさん、怒ってらっしゃる?」
アレクサンドラ様が私の隣でビクビクと訪ねてくる。その様子は学園で見られるものとは全く異なり小動物のようだった。
「怒ってはおりませんが、アレクサンドラ様はきちんと殿下やマルセル様にお話するべきです。お二人とも心配されたのでしょう」
アレクサンドラ様はシュンとした。
「特にお二人を置いていこうとなさったのはダメです。だって、殿下もマルセル様もきちんとお忍びの服装をしているではありませんか?」
殿下もマルセルくんもシンプルなシャツとスラックスで貴族というよりは裕福な商人風の服装をしている。
「そ、そうね。フルールさんはわたくしくを断罪なさる?」
「え? 断罪? なんのお話でしょう。とにかく今日は四人で町歩きを致しましょう。なるべく安全な場所を調べてきました」
そう言って私は今日行く予定の場所を書いた紙を殿下に差し出した。
「わかったわ。殿下との恋も始まるかもしれませんものね」
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「ありがとう、フルール。突然押しかけてすまなかった」
殿下がしっかりと頭を下げてくれる。
「そ、そんな、やめて下さい。私は初めから殿下とマルセル様が来られるものと思っておりました」
「え? そうなのかい?」
「はい。ただ、アレクサンドラ様が殿下に仰っていないとは思いませんでした」
「ほらな?」
「そうですよ!」
「でも、せっかくですから四人で楽しみましょう! アレクサンドラ様」
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