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第五章 悪霊退散
33 サイモン・ブルーストーン
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「一体全体どうしたっていうんだ。マリアは何故あんなにも変わってしまったんだ。俺はこんなにも君を愛しているのに、、、。」
サイモン・ブルーストーンは名門ストーン家の一つである騎士団を統括するブルーストーン家の跡取りだった。
昨年学園に入学してから同じ年で平民の特待生マリアととても良い付き合いをしていた、、、はずだった。
マリアは初めて会う貴族ばかりの学園で心細そうにしていたので騎士道精神に則り声をかけたのが始まりだった。
マリアはとても聡明で美しく、可愛らしい素晴らしい女性だった。サイモンが剣の大会で負けた時には優しく慰めてくれたし、勉強で困っていると必ず助けてくれたりした。その後、二人はたまに街にデートに出かけたり、愛の証明にアクセサリーをお揃いで購入したり、マリアお薦めのカフェに行ったりと二人の愛情は深まっていたのだ。そう思っていたのだ。
それがある時からマリアは変わってしまった。
段々とサイモン以外のストーン家の男とも一緒に出かける様になっていった。
サイモンは内心嫉妬に駆られていたが表面上は笑って許した。その方が余裕のある男だと思われると考えていたのだ。
マリアは次々他の男との仲を深めていったがそれでも二人でデートする時は可愛らしく甘えて来てくれた。
でも流石に頻繁になると我慢できず理由を問いただしたのだ。
マリアが言うには他の男と出かけているのは賢者の石が必要だからとの事だっだ。なんでも願いが叶う賢者の石があるのなら両親の宿屋の役に立ちたいと涙ながらに語ったのだ。
サイモンは父からブルーストーン家に伝わる賢者の石についての伝承を教えてもらうための条件として厳しい騎士団の訓練への参加と入団テストの合格を提示され、学園に通いながら何とかクリアしたのだった。学園在学中に入団テストに合格したのはサイモンが初めてだった。
それなのに折角聞き出した情報をあんな風に蔑ろにされるとは思わなかった。
サイモンはマリアのつれない態度にショックを受けて思わず恨めしげにその後ろ姿を見てしまった。
その後サイモンは学園に行く気にもならず鬱憤を晴らすかのように騎士団の訓練に参加する日々を過ごしていた。
そんな時に一つ年上の従兄弟の訪問を受けたのだ。
従兄弟とはいえルーカス・バイオレットストーンはそう簡単には仲良くできる相手ではなかった。
ルーカスはハロルド王子の側近として既にその地位を確立していて、妹はその王子の婚約者という将来を約束されたエリートだった。
「ルーカス様、ようこそお越しくださいました。」
緊張した面持ちでサイモンは突然訪ねてきたルーカスを迎え入れた。
ルーカスは普通にサイモンを年下の従兄弟として親しげに話しかける。
「突然訪問してしまって申し訳ないね。サイモンは元気にしていたかい?」
「えぇ、まぁ。」
「聞いたところによると最近学園を休みがちだそうじゃないか。
でも、元気そうで良かったよ。」
「ご心配をおかけしてすみません。私は今は騎士団の訓練に参加させてもらっておりまして、、そちらを優先しております。」
「あぁ、そうだね。ブルーストーンと言えば騎士団だもんね。
伯父上から入団テストにも受かったと聞いたよ。学園に在学中に受かるなんて中初めてだと嬉しそうに仰っていたよ。凄いじゃないか!」
「あ、あ、ありがとうございます。」
サイモンは突然始まったルーカスの誉め殺しに恐縮しつつも目的がわからず首をかしげた。
侍女によりお茶の用意がすべて整ったのを見計らってサイモンはルーカスに話しかけた。
「ルーカス様、、して、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「要件かぁ。まあ、サイモンにお願いがあってきたという感じかな?」
「お願い?」
「そうなんだ。もちろん君の気持ちを第一に考えるということは約束するが、私達の計画に協力してもらいたい。」
「、はぁ、、、。」
「単刀直入に言わせてもらうよ。君と同じ学年にいる平民の特待生であるマリア嬢をブルーストーン家管理の地方にある教会に連れ出して欲しい。」
「は?」
「正確には隣国との国境近くにあるハンス司教が管理する教会にマリア嬢を連れて行く計画に協力して欲しい。」
「えっと、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「すまない。それは詳しくは話すことはできないんだ。ただこの件に関してはハロルド王子主導で行なっており、国の命運がかかっているとだけ伝えておこう。」
サイモンは国の命運と聞いて、即座に姿勢を正して立ち上がった。
「ルーカス様。未だ半人前ではございますが騎士団に入団する予定の私はハロルド殿下が国の危機と仰っているのでしたら命をかけて協力させて頂きます。」
そう言ってサイモンは騎士団の礼をビシッととったのだった。
「でも、マリア嬢とは懇意にしていたんだろう?ある意味騙し討ちに近いのだが大丈夫かい?」
「問題ありません。王家の方が必要とおっしゃるならそれは必ず必要ですし、その為に私の感情は考慮する必要はありません。」
サイモンは騎士団の訓練で叩き込まれた騎士団とはいかにあるべきかという教えをそのままルーカスに告げた。
そこには先程までのマリアの態度に対する不満は一切なくなり、ただ唯一残っているのは残念という気持ちだけだった。
理由はわからないがマリアはきっと王家に何かしらの害となる言動をしてしまったのだろう。それならは自分は騎士としてしっかりとマリアの行く末を見届けてなくてはならないと恋愛感情を全てその場で捨て去ったのだった。
ルーカスは一切の感情を消して協力に同意したサイモンを見て助かったと胸を撫で下ろした。
実はサイモンへの説得には多少の賭けに出なくてはならなかったのだ。
真面目な性格のサイモンは先日アカネが見た光景を考えると多少マリアに幻滅していると考えた。さらには騎士団の訓練に参加し入団テストにまで合格したのならば王家第一主義の騎士団精神をも叩き込まれたはずと今回の説得計画を立てたのだ。
なんとかサイモンの協力を取り付けたルーカスは細かい話はハロルドからしてもらった方がいいと判断して後日詳細は王宮にて話すと約束してブルーストーン家を辞した。
サイモンはルーカスを見送ると肩の力を抜いてソファにドッカリと腰を下ろした。そして先程まで恋い焦がれていたマリアとの日々を思い出し、そして、別れを告げた。
サイモンは騎士として王家の危機となるならばマリアとは相容れないという事実を静かに受け入れた。
「マリア、心から愛していたよ。」
サイモンの瞳から光るものがその頬を伝って落ちていった。
サイモン・ブルーストーンは名門ストーン家の一つである騎士団を統括するブルーストーン家の跡取りだった。
昨年学園に入学してから同じ年で平民の特待生マリアととても良い付き合いをしていた、、、はずだった。
マリアは初めて会う貴族ばかりの学園で心細そうにしていたので騎士道精神に則り声をかけたのが始まりだった。
マリアはとても聡明で美しく、可愛らしい素晴らしい女性だった。サイモンが剣の大会で負けた時には優しく慰めてくれたし、勉強で困っていると必ず助けてくれたりした。その後、二人はたまに街にデートに出かけたり、愛の証明にアクセサリーをお揃いで購入したり、マリアお薦めのカフェに行ったりと二人の愛情は深まっていたのだ。そう思っていたのだ。
それがある時からマリアは変わってしまった。
段々とサイモン以外のストーン家の男とも一緒に出かける様になっていった。
サイモンは内心嫉妬に駆られていたが表面上は笑って許した。その方が余裕のある男だと思われると考えていたのだ。
マリアは次々他の男との仲を深めていったがそれでも二人でデートする時は可愛らしく甘えて来てくれた。
でも流石に頻繁になると我慢できず理由を問いただしたのだ。
マリアが言うには他の男と出かけているのは賢者の石が必要だからとの事だっだ。なんでも願いが叶う賢者の石があるのなら両親の宿屋の役に立ちたいと涙ながらに語ったのだ。
サイモンは父からブルーストーン家に伝わる賢者の石についての伝承を教えてもらうための条件として厳しい騎士団の訓練への参加と入団テストの合格を提示され、学園に通いながら何とかクリアしたのだった。学園在学中に入団テストに合格したのはサイモンが初めてだった。
それなのに折角聞き出した情報をあんな風に蔑ろにされるとは思わなかった。
サイモンはマリアのつれない態度にショックを受けて思わず恨めしげにその後ろ姿を見てしまった。
その後サイモンは学園に行く気にもならず鬱憤を晴らすかのように騎士団の訓練に参加する日々を過ごしていた。
そんな時に一つ年上の従兄弟の訪問を受けたのだ。
従兄弟とはいえルーカス・バイオレットストーンはそう簡単には仲良くできる相手ではなかった。
ルーカスはハロルド王子の側近として既にその地位を確立していて、妹はその王子の婚約者という将来を約束されたエリートだった。
「ルーカス様、ようこそお越しくださいました。」
緊張した面持ちでサイモンは突然訪ねてきたルーカスを迎え入れた。
ルーカスは普通にサイモンを年下の従兄弟として親しげに話しかける。
「突然訪問してしまって申し訳ないね。サイモンは元気にしていたかい?」
「えぇ、まぁ。」
「聞いたところによると最近学園を休みがちだそうじゃないか。
でも、元気そうで良かったよ。」
「ご心配をおかけしてすみません。私は今は騎士団の訓練に参加させてもらっておりまして、、そちらを優先しております。」
「あぁ、そうだね。ブルーストーンと言えば騎士団だもんね。
伯父上から入団テストにも受かったと聞いたよ。学園に在学中に受かるなんて中初めてだと嬉しそうに仰っていたよ。凄いじゃないか!」
「あ、あ、ありがとうございます。」
サイモンは突然始まったルーカスの誉め殺しに恐縮しつつも目的がわからず首をかしげた。
侍女によりお茶の用意がすべて整ったのを見計らってサイモンはルーカスに話しかけた。
「ルーカス様、、して、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「要件かぁ。まあ、サイモンにお願いがあってきたという感じかな?」
「お願い?」
「そうなんだ。もちろん君の気持ちを第一に考えるということは約束するが、私達の計画に協力してもらいたい。」
「、はぁ、、、。」
「単刀直入に言わせてもらうよ。君と同じ学年にいる平民の特待生であるマリア嬢をブルーストーン家管理の地方にある教会に連れ出して欲しい。」
「は?」
「正確には隣国との国境近くにあるハンス司教が管理する教会にマリア嬢を連れて行く計画に協力して欲しい。」
「えっと、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「すまない。それは詳しくは話すことはできないんだ。ただこの件に関してはハロルド王子主導で行なっており、国の命運がかかっているとだけ伝えておこう。」
サイモンは国の命運と聞いて、即座に姿勢を正して立ち上がった。
「ルーカス様。未だ半人前ではございますが騎士団に入団する予定の私はハロルド殿下が国の危機と仰っているのでしたら命をかけて協力させて頂きます。」
そう言ってサイモンは騎士団の礼をビシッととったのだった。
「でも、マリア嬢とは懇意にしていたんだろう?ある意味騙し討ちに近いのだが大丈夫かい?」
「問題ありません。王家の方が必要とおっしゃるならそれは必ず必要ですし、その為に私の感情は考慮する必要はありません。」
サイモンは騎士団の訓練で叩き込まれた騎士団とはいかにあるべきかという教えをそのままルーカスに告げた。
そこには先程までのマリアの態度に対する不満は一切なくなり、ただ唯一残っているのは残念という気持ちだけだった。
理由はわからないがマリアはきっと王家に何かしらの害となる言動をしてしまったのだろう。それならは自分は騎士としてしっかりとマリアの行く末を見届けてなくてはならないと恋愛感情を全てその場で捨て去ったのだった。
ルーカスは一切の感情を消して協力に同意したサイモンを見て助かったと胸を撫で下ろした。
実はサイモンへの説得には多少の賭けに出なくてはならなかったのだ。
真面目な性格のサイモンは先日アカネが見た光景を考えると多少マリアに幻滅していると考えた。さらには騎士団の訓練に参加し入団テストにまで合格したのならば王家第一主義の騎士団精神をも叩き込まれたはずと今回の説得計画を立てたのだ。
なんとかサイモンの協力を取り付けたルーカスは細かい話はハロルドからしてもらった方がいいと判断して後日詳細は王宮にて話すと約束してブルーストーン家を辞した。
サイモンはルーカスを見送ると肩の力を抜いてソファにドッカリと腰を下ろした。そして先程まで恋い焦がれていたマリアとの日々を思い出し、そして、別れを告げた。
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