田舎者弓使い、聖弓を狙う

ふぁいぶ

文字の大きさ
22 / 63
第一章 旅立ち編

第22話 田舎者弓使い、夢を諦めかける

しおりを挟む

 ザナラーンの街での騒動の後、リュートは皆と別れて王都へと歩いていた。
 しかしその足取りは非常に重く、今のペースでは間違いなく王国兵士の募集締切に間に合わない程であった。
 本当は早く行かないといけないのはわかっている。
 だが、どうしてもあの騒動が頭から離れずにいた。
 リュートにはどのように考えても、やはり理解出来ない事だった。

 まず、街で助けた女性の事。
 村にいた頃は、全員が生きる事が最優先で、男は狩りの腕を愚直に磨き、女は良い男に選んでもらって支えられるよう、美容と家事習得に全力を注いでいた。
 その為、自ら死を望む女性の気持ちがこれ微塵も理解出来なかった。
 そして結果、自爆をして盗賊や王国兵士を相当数道連れにしたのだ。
 命を粗末にするどころか、助けに来た王国兵士すら犠牲にしてでも盗賊を滅ぼしたあの女性に対して「何故その執着を生きる事に使えなかったのか」と思ってしまうのだ。
 
 そして一番リュートの歩みを重くしている事があった。
 それは、皆と別れた際に、ガンツから言われた一言だ。

「リュート、王都を目指すならこれだけは言わせてくれ。お前が村でどのような生活をしていたかはわからないけど、お前が思っている程都会というのは煌びやかな世界じゃない。むしろ、人間の黒い部分が渦巻いている世界だ」

 人間の黒い部分?
 リュートはあまりよく理解出来ていないが、ガンツは構わず続ける。

「自分の利益の為に平気で他人を蹴落とす者、何かしらの理由で絶望して自ら死ぬ者、自分の快楽の為に人を殺める者。本当に様々な《もの》を抱えて生活をしている。都会になればなるほど、そういった人間の黒い一面を沢山見る事になるだろう。そしてそれに嫌気が差し、実家に帰る者も多いんだ。お前はそれでも、本当に王都を目指すのか?」

 リュートは、何も言えなかった。
 これから先、今回みたいな事に遭遇する可能性が高くなるのだろう。
 自分自身、それに耐えられるのだろうか?
 今でさえ自身との考え方の違いでショックを受けているのに、まだその先もあると考えると、リュートは何も言う事が出来なかった。
 ガンツはそんな落ち込んでいるリュートを見て、小さな笑みを浮かべる。

「……しっかりと考えてみるといい。理想と現実は大きく違うものだ。もしそれでも夢を叶えたいのであれば、王都で会って一緒に飯でも食おう」

 そう言って、リュートの肩に手を優しく添えた後、王都方面に向かって歩き出していく。
 その後に続いてリック、カズネも続いていく。
 リュートに言葉はかけない。
 だが、二人共無言でリュートにエールを送っていた。

「絶対に立ち直れ。そして王都で再会しよう」

 と。
 王国兵士達も何とか立ち上がり、王都に向けて歩き出してザナラーンを後にした。
 皆、あんな事があったのに立ち止まらず、歩き出せたのだ。

(都会の人間は、こんな事慣れっこだべか?)

 違う、慣れているのではない。
 辛い状況があったとしても、無理矢理に気持ちを奮い立たせる術を知っているだけだ。
 だが、リュートにはその方法がわからなかった。
 そしてとりあえず、王都に向けて歩く事にした。

 リュートは村にいた時代、比較的に何でも出来た。
 弓も自然と効率よく練習をし、身体も成長した頃には村一番の狩人になる事が出来た。
 故に、リュートは挫折を経験した覚えが一切なかったのだ。
 今まさに、生まれて初めて自分の進むべき道に対して、自信を喪失していた。
 この先もやっていけるのだろうか?
 弓の実力だけじゃだめなのだろうか?
 そんなの、誰も教えてくれなかった。
 
「オラ、どうしたらいいんだべか?」

 リュートは頭が混乱してしまい、まだ日が明るいのに足を止め、適当な薪を集めて野宿の準備を始める。
 もう、何が何だかわからなくなってしまい、歩きたくなくなってしまったのだ。
 空腹を満たしては考えに耽るが、答えは出ずに寝る。
 そして起きて朝食を取ってまた暫く考えて、余計に混乱してまた歩き始める。
 歩きながらもぼんやりと考えるが、答えは出ない。
 気が付いたら日が落ちていたので、急いで野宿の準備をする。
 適当に食事を取ってまた考え始めるが、結局は考えがまとまらず。
 こんな調子を三日間繰り返していたが、未だに納得出来る答えは出なかった。

 それでもゆっくりと王都への歩みは止めなかった。
 ただ、本能的に「とりあえず行動してみよう」と動いていたのだった。

 しかし、時間とは無常である。
 今から走っても、馬車に乗ったとしても、今年度の王国兵士募集締切には間に合うのは不可能だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...