21 / 63
第一章 旅立ち編
第21話 逃げろ!
しおりを挟むリュートがアッシュを仕留めた後、何やら郊外が異常なほどに騒がしい。
剣戟や争っている騒がしさではない。
何やら混乱しているような、そんな騒がしさだ。
リュートはその音源へ視線をやると、王国兵士達がこちらへ必死になって向かってくるのがわかった。
まるで何かから一心不乱に逃げているようだった。
(盗賊達に負けただか? ……王国兵士も大した事ねぇだよ)
盗賊達に負けて逃げてきていると思ったリュートだが、一拍置いて冷静に考えてみると、盗賊の方が人数は不利だった筈。
そんな状態で王国兵士が敗走するとは考えにくい。
(んじゃ、何から逃げてるんだべ?)
更に目を凝らして集団を見てみると、集団の先頭にはガンツ達がいた。
ガンツは盾などの重たい装備を捨てて、体力のないカズネを肩に担いだ状態で必死に走っている。
リックは元々身軽なので、先頭集団の中ではトップでこちらに向かってきていた。
事情が全く分からないリュートは、呑気に手を振る。
「おーい、ガンツ達ぃ! 何があっただか?」
するとリックが声を張り上げた。
「リュート、急いで逃げろぉ!! 出来るだけ遠くに、遠くに逃げるんだぁぁぁぁっ!!」
「え!? なしてそんな事せなあかん!?」
「いいから、説明してる暇がない!! 街を出る位に全速力で走って!!」
理由はわからないが、走らないといけないらしい。
リュートが今いる所は、ザナラーンの街の王都側出口だった。
反対側の出口は直線距離で約五百メートル以上はある。
とにかく皆必死に逃げている所を見ると、命の危険に関わる事なのだろう。
リュートは納得していないが、リックの忠告を守って全速力で反対側出口へ駆けていく。
王国兵士達も鎧や装備を外して少しでも身軽にし、必死になって走っている。
更に後ろに、まるで王国兵士達を追いかけるように盗賊も走ってきているが、その表情は必死だった。
訳が分からないまま走り続け、リュートが街の中心部まで来た、その瞬間だった。
自分達の背後から強烈な爆発音と共に、体が浮く程の爆風が襲ってきた。
そして、リュートの体は爆風によって吹き飛ばされた。
ガンツ達や王国兵士達も同様に吹き飛ばされたようで、爆音の中に小さな悲鳴が聞こえた。
リュートも不意に吹き飛ばされてしまい、体勢を正す事が出来ずにきりもみ状態となってしまった。
とにかく上手く着地か受け身を取らなくてはいけない。
リュートは空中で姿勢を正そうとするが、爆風が強すぎて上手く行かない。
ひたすら空中でもがいていたら、運よく片足が地面に触れたので、そのまま踏ん張ってみる。
だが、勢いは多少殺せたものの、爆風の威力は凄まじい。
こらえる事が出来ずに転倒し、地面を転がってしまう。
しかしそれも運がよかった。
頭上を外壁やら家の破片が高速で通過するのが見えた。
もう少し空中で飛ばされたままなら、体の何処かにその破片が当たっていたのかもしれない。
吹き飛ばされた地点は、ちょうど街の反対側出口の真ん前。
リュートは頭を上げずにそのまま這って街を出た。
何とか街を出ると、そこにはガンツ達と王国兵士達が息を切らしてへたり込んでいた。
リュートはガンツに声をかける。
「ガンツ、大丈夫だか!?」
「リュート! よかった、間に合ったか」
「何が起きただよ? 突然爆発したからびっくりしたべぇ……」
「……ああ、住人と思われる女が、《はた迷惑な自爆者》を使ったんだ」
「……《はた迷惑な自爆者》?」
「ああ、自分の命を引き換えに大爆発を起こす魔法さ。威力は使用者の魔力に依存していてな、ほら、後ろを見てみろ」
リュートは振り返ると、なんとザナラーンの街の半分近くが消滅し、クレーターとなっていた。
残っていた建物も爆風によって全壊、もしくは半壊となっていて、完全に人が住めるようなものではなくなっていた。
人一人が、こんな爆発を起こせるのか。
魔法の破壊力にリュートは戦慄した。
そして周囲を確認すると、あんなにいた王国兵士達の数が少ない。
どうやら《はた迷惑な自爆者》に巻き込まれ、消滅してしまったのだろう。
いや、形を残している者もいた。
が、恐らく飛んできた破片が頭に直撃したのだろう、首から上がない死体が転がっていた。
当然生きている者もいたが、木や石の破片が上半身全体に刺さっており、痛みに悶えていたり、片足が引きちぎられたかのように失っている者もいた。
五体満足な者も細かい怪我をしていたり、関節が曲がってはいけない方向を向いていたり、大なり小なりの怪我を負っている。
ガンツ達はかすり傷程度で済んだようだった。
「畜生が、このタイミングで最悪な呪いかよ……!」
「しかも街の生き残りが魔法使いだったとか……」
「俺、未だに忘れられねぇよ。別嬪なのに狂ったように笑いながら、《はた迷惑な自爆者》の呪文を唱えていたんだぜ……」
ふと耳に入ってきた会話。
その内容からして、あの助けた少女だろう。
つまり、命が助かったのに魔法で自爆して死んだんだ。
盗賊どころか助けに来た王国兵士も巻き込んで。
(なして、なして助かった命を簡単に捨てられるだよ!!)
リュートにとって、生きる事こそ至上だ。
死んでしまったら全てが終わり、生きていれば失敗しても反省して次に活かす事が出来る。
そんな信条で今まで必死に生きてきたリュートにとって、自爆だの自殺だのをする少女の心境が全くわからなかった。
故に混乱したし、せっかく助けたのに死んでしまった事に対する怒りで気が狂いそうだった。
「……ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああっ!!!」
理由はないが、叫びたかった。
何故笑いながら死ねる、何故容易に生きる事を捨てられる。
何故、何故!?
リュートは声を枯らしながら叫び、疲れて叫び終わると俯いて黙り込んでしまったのだった。
------------------------------------------------
〇名も無き村の掟
・男は狩りを行うべし
・女は狩りをしに行く男を支えるべし
・女でも腕に自信があるなら狩りに参加してもよいが、死を覚悟せよ
・狩りの成果を出せない者は、村の住民と認めず
・狩った獲物は村の共有財産。均等に村人に配るものとする
・年に一度、狩りの大会を行う。優勝者はどんな時でも優先的に獲物を配る
・獲物を横取りした者、もしくは村の貯蓄庫から獲物を盗んだ者は、獲物の生餌の刑に処す
41
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる