田舎者弓使い、聖弓を狙う

ふぁいぶ

文字の大きさ
20 / 63
第一章 旅立ち編

第20話 田舎者弓使い、《ステイタス》を知る

しおりを挟む

 ガンツパーティと生き残った王国兵士が必死に後退している頃、リュートとアッシュは互いに武器を構えて睨み合っていた。
 リュートはアッシュが動いた瞬間にいつでも射貫けるような体制にしていて、アッシュも同様に高速移動をする準備が出来ていた。
 が、アッシュは攻めあぐねていた。

(なんだこいつ、動いた瞬間射貫かれそうな予感がビンビンにしやがる……)

 そう、アッシュが感じているのは、リュートから発せられる嫌な予感。
 高速移動をすれば弓なんぞあたらないはずなのだが、何故かこの男だと頭を射られそうな気がしてならなかった。

(まさか、こんな田舎者も《ステイタス》を掛けていやがるのか? だが、《ステイタス》の気配が感じられねぇ)

《ステイタス》を持つ人間は、相手が《ステイタス》を施しているかが感覚的にわかる。しかし、目の前の弓使いは《ステイタス》を感じる事が出来ない。
《ステイタス》を施すには、五十万ペイという高額な金が必要となる為、田舎者であるリュートが《ステイタス》を施したとは信じられない。
 だが、そうでないとこの悪い予感の説明がつかない。
 
(そうだ、こいつは《ステイタス》持ちだ。じゃねぇと、俺様が街に入った時に正確に足を射る事なんて出来やしねぇ!! きっと俺様でも感じ取る事が出来ない程 《ステイタス》の気配が小さいに違いない!!)

 なら、こいつは油断出来ない。
 なら少しでも情報を引き出そうとして、リュートに話しかけた。

「てめぇ、田舎者の癖して《ステイタス》持ちだったとはなぁ。その腕前、恐らく階位レベルは二十前後ってところか?」

「……ん? すていたす、れべる? 何だそりゃ?」

「……は?」

「んなもん、オラは知らね。都会の言葉は色々あって覚えるのが大変だべ」

「……」

《ステイタス》も階位レベルも知らない?
 となると、あの芸当は全部こいつの素の能力という事なのか?
 いや、到底信じる事は出来ない。
 常人では目で追う事すら出来ない速度で走っていたのに、目の前の男は足元に矢を放った。
 そんなの《ステイタス》持ちにしか出来ない芸当な筈だ。

(……この優男自身の才能? ……そんなもん、認められねぇ!!)

 アッシュの人生は迫害されるばかりのものだった。
 そして縁があって《無限の渇望者の使徒》に入り、あの手この手を使ってのし上がり、ついには幹部となって《ステイタス》を得た。
 迫害され、奪われてばかりの人生だったのに、ついにアッシュは奪う側になれたのだ。
 だが、目の前には女性受けしそうな容姿を持っていて、《ステイタス》なしでアッシュの速度についてこれる才能あふれた男が一人。

(……天は二物を与えるってか? ふっっっっっざけんじゃねぇぞ、おいっ!!)

 そんな存在は許せない。
 アッシュは自慢の脚に力を入れる。
 どんな異常な目を持っていたとしても絶対に視認できない、限界の超速度で駆け抜けて、リュートの首を掻っ切る事にした。
 リュートも目の前の男の気配が変わった事を察知した。
 異様に脚に力が入っているのを見逃さなかった。

(……脚にりき入れてるんだべか?)

 そこでふと、とある獲物を思い出す。
 それは《ソニック・ラビット》という、脚に力を入れる事で神速とも呼べる速さで相手との距離を詰め、そして豪脚で蹴りを放つ。
 この蹴りは鉄製の鎧程度ならば陥没どころか砕いてしまい、運が良ければ内臓破裂、普通なら脚が突き刺さる威力を持っている。

(つまり、こいつは《ソニック・ラビット》と同じことしようとしてるんだか?)

 頭の中で《ソニック・ラビット》の事を思い出しながら、

(んなら、楽勝だぎゃ)

 リュートは一安心した。
 だが、アッシュは気が付いていない。
 アッシュは自分の勝利を疑っていなかったのだ。
 自慢の脚、自慢の速度は今までもどんな《ステイタス》持ちをも瞬殺してきたのだ。
 こんな田舎者なんて、一瞬で首を斬れる筈。
 アッシュは殺気を放ち、力を溜めていた脚で勢いよく地面を蹴った。
 蹴った地面は陥没し、その瞬間アッシュの姿は消えた。
 いや、消えたのではない。
 目視出来ない程の速度に達していた。

 そして、リュートの横を通り過ぎた時。

 アッシュは盛大に地面に転がっていた。
 まるで喜劇を見ているかのような光景だったが、アッシュの額には鉄の矢が刺さっていた。
 アッシュは、地面を蹴った瞬間に射貫かれ、リュートの横を通り過ぎた時は絶命していたのだ。

「ふぅ、こいつ《ソニック・ラビット》よりはええぞ。びっくりしたけんど、まぁ楽勝だったわ」

 リュートが行った対処方法は至ってシンプル。
 殺気を放っているアッシュからして、一直線に自分に向かってくる事は明白。
 持っているナイフを使って何かしら攻撃を仕掛けてくると予測したリュートは、アッシュが地面を蹴った瞬間に得意の速射を用いて矢を放っていた。
 アッシュが走ってくるだろうコースに、まるで矢を据え置くような形で。
 アッシュもこの矢に気が付いていたのだが、ここまで速度が乗ってしまうと急な方向転換は不可能だった。
 結果、リュートが放った矢は吸い込まれるかのようにアッシュの額に直撃し、後頭部まで貫通。アッシュは一瞬の痛みを感じてそのまま死に至った。
 これが《ソニック・ラビット》に対するリュートなりの対処法だった。
 どんなに目がいいリュートでも速度が速すぎる獲物を視認するのは出来ない。
 だが、高速移動をする前の全身の予備動作や殺気で、相手がどのように動くかを推測する事は可能だった。
 しかし常人で出来る対処法ではなく、長年弓一本で狩人をしてきたリュートだからこそ成しえる技だった。

 そして、世界は後に知る事になる。

《ステイタス》を持っていない人間が、たった一射で《ステイタス》持ちに打ち勝った初めての人間がリュートである事を。
 そして決して《ステイタス》持ちと一般人の間に、絶対的な壁は存在しないという事を。


---------------------------------------------
《ステイタス》
 超常的存在の力を借りずに人間が自力で放てる魔法は、無属性魔法である。
 大半が攻撃に使えないものばかりなのだが、とある高名な魔法使いが生涯をかけて完成させた《対・超常的存在用決戦魔法》が《ステイタス》である。
 これは生物が死ぬ際に発する《精魂》と呼ばれる不可視の物質を体内に取り込む事でそれを経験値とし、階位レベルという形で段階的に肉体を超人へと改造していく魔法。
 一気に肉体を強化すると、副作用として筋組織が崩壊するというものが存在していたので、段階的に肉体を改造する事で副作用をなくす事に成功したのだ。
 何故改造と表現しているかというと、《ステイタス》を施された瞬間に常人以上の力を発揮できるように脳や内臓を含めた全身を魔力によって作り変えている為である。
 また、《ステイタス》によって階位レベルを上げていくと《スキル》を得る事もある。
《ステイタス》が使える魔法使いは世界で十人前後しかおらず、魔力的に一日三回しか放てない為、予約必須で費用も超高額。その為世の魔法使いは《ステイタス》習得を目指しているが、習得できる者はかなり少ない。

《スキル》
 階位レベルを上げていく時に、どのような戦闘をしたかによって特殊な技能を授かる事がある。それが《スキル》である。
《ステイタス》の思わぬ副次効果なのだが、戦闘時にどのような行動をしたかが《ステイタス》に反映・施した魔力が反応を起こし、その行動をさらに補助するような《スキル》を与えるのだ。
 アッシュは高速戦闘を得意としていたので、実は《神速(中)》というスキルを得ていた。
 
 尚、《流れ人》は確実に生まれた時、もしくはこの世界にやってきた瞬間に《ステイタス》と聞いた事がない《スキル》を得ており、それも疎まれている要因の一つとなっている。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...