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第二章 冒険者活動編
第26話 田舎者弓使い、冒険者の仕組みを学ぶ
しおりを挟むやけに尻を振って歩く受付嬢に最大限の警戒をしながら、リュートは彼女に案内された一室に到着した。
今回講習を受ける人間はリュートしかおらず、広い部屋の中に受付嬢と二人きりという状況になった。
「それでは、今から講習をさせていただきます。今回担当させていただきますのは、受付嬢歴三年、現在彼氏なしの《ミリアリア》と申します。現在二十二歳です!」
「よ、よろすく」
随分と「彼氏なし」と自分の名前と年齢を強く言う女性だなと、より一層警戒心を強めてしまうリュート。
リュートは用意されていた椅子に腰掛け、ミリアリアは教壇に立つ。
「それでは、これから長丁場となりますが、冒険者になる上で大事な事をお伝え致します。もし途中で寝てしまっていた場合は、真面目に受講していないとして冒険者の証であります免許証は発行致しませんので、ご注意くださいませ」
「わかっただ」
そこから、ミリアリアによる冒険者の仕組みに関する講習が行われた。
まず冒険者は石等級から始めていく。
そしてギルドに募った依頼をこなすと、その依頼毎に《経験点》なるものが設定されている。
この経験点が一定数を超えると昇級試験が受けられ、それに合格すると次の等級に上がる事が出来るのだという。
昇級試験は普段の依頼態度、依頼者から見た冒険者の評価、ギルド上層部との面談が行われ、それらをクリアすると実技試験が行われる。
つまり冒険者も腕っぷしだけではなく日頃の素行もかなり重要になってきている。
何故このような仕組みになったかというと、数年前まではそこまで厳しくなかったようなのだが、あまりにも素行が悪い冒険者が増えてしまい、依頼者に横暴な態度を振るったりした事があったので現在の仕組みになったのだという。
そのおかげで冒険者も立派な職業として認識され、国民だけでなく王国兵士達からも認められた存在となったのである。
経験点は石等級から次の鉄等級に上がるには一千点必要となっていて、そこから三倍ずつ要求されるのだ。
つまり鉄等級から青銅等級に上がるには三千点、青銅等級から銅等級は九千点必要となる。
勿論等級が上がれば経験点が高い依頼も受けられるようになるが、その分危険度が増す。
そこで、ギルドが判断した依頼難易度というものが存在している。
依頼難易度に関しては、低い順からF、E、D、C、B、A、Sとリュートには聞き慣れない言葉で難易度付けされていた。
どうやら《流れ者》の世界で使われていたアルファベットなる文字を使っているようで、以前までは難易度を星五段階で表していたのだが、アルファベットを導入する事でより難易度がわかりやすくなったのだそうだ。
さらにこのアルファベットを魔物討伐難易度にも流用していて、冒険者に効率よく魔物の危険度を知らせるのに一役買っているのだとか。
また、冒険者には細かいルールが存在している。
依頼を故意的に横取りした場合、有無を言わさず等級を下げる罰を与えるのだそうだ。
ダンジョン内で同じ冒険者を正当防衛以外で殺害した場合、冒険者ではなく盗賊とみなされ、討伐対象とされてしまい冒険者ギルドから討伐依頼が貼り出される事もある。
後は簡単に国の法律を説明され、最後に金等級より上の等級の説明をされる。
金等級は《ステイタス》をかけていない冒険者の最上位となっていて、《ステイタス》を施して経験点を貯めて昇級試験に合格する事により、ギルドから更なる手厚い待遇がされる《超越級》となる事が出来る。
《超越級》は低い順から白金等級、魔法銅等級、魔法銀等級、魔法金等級、金剛宝石等級、そして最上位の伝説合金等級となっている。
この《超越級》自体になれる冒険者が非常に少なく、金等級と《超越級》の間には非常に高い壁が立ちはだかっているそうで、現在ラーガスタ内で《超越級》に至っている冒険者は百人弱と言われており、伝説合金等級となると二パーティ、人数にすると九人しか至れていないのだ。
当然ながら《超越級》の依頼は恐ろしく難易度が高くなっていて、人外の領域にいる彼らであっても油断したら死に至ってしまう程のものだ。
この説明を聞き、リュートは「目指すは金等級程度にして、王国兵士になる為の勉強をするか」と決意したのだった。
ミリアリアの説明にこれといった不備もなく、学がほとんどないに等しいリュートでもすんなりと理解できた。
まぁ二時間と長丁場だったので、固い椅子に腰掛けた尻がちょっと痛いが。
「では以上で説明は終わりますが、最後に何かお伺いしたい事はありますか?」
「うんにゃ、無い。またわかんねぇ事出たら、その時に聞くだよ」
「わかりました! あっ、そういえば《スポンサー制度》について説明を忘れてました!」
「すぽんさあ?」
「はい! 冒険者の収入は基本的に依頼報酬、魔物の素材、ダンジョン内で獲得した報酬や珍しい武器道具を売る事ですが、資金に余裕のある商人や貴族様から援助していただくのも有りなんです」
「ほうほう」
「例えば商人の場合でしたら、毎月いくらあげるからうちの賞品を使ってよ! とか、貴族様の場合はいくらあげるから、自分の依頼を優先してほしい! とかあったりしますね。あっ、でもギルドにスポンサー申請を通さないと賄賂扱いで逮捕されてしまいますから、必ずギルドに申請してくださいね!」
「わかっただ」
スポンサー制度に関しては本当にぼんやりとしか理解出来なかったが、まぁ自分にそんなのが付くとは思えないなぁと、お気楽に考えるリュートだった。
「はい、では講習の後に実技をやっていただきます!」
「へ、実技? 門番さんからは講習だけでいいって聞いたんだけんど?」
「ああ、すみません。数ヶ月前までは講習だけで登録出来たのですが、あまりにも駆け出し冒険者さんの死亡率が高くなってしまいまして……。なら実技を導入してギルドの方でも実力を把握・管理しておこうという話になったんです」
「ほう……。なしてそんな死んじまってるんだか?」
「簡単に言ってしまえば、実力が見合っていない依頼を受けて、勇み足で亡くなるケースが増えたんです。当ギルドとしましても、この難易度なら大丈夫だろうと許可していたんですが、それでも駄目な方もいらっしゃるんです」
「なるほどなぁ。んなら、ちゃっちゃと実技やろっか」
「はいっ!」
ミリアリアが先頭に立ち、演習場へと向かうリュート。
その時も彼女は、やけに尻を振って怪しい歩き方をするのだった。
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