田舎者弓使い、聖弓を狙う

ふぁいぶ

文字の大きさ
27 / 63
第二章 冒険者活動編

第27話 田舎者弓使い、有望新人として注目される

しおりを挟む

 実技の確認については、文句なしであった。
 リュートはあえて百メートルミューラ離れた場所から、的の中心を十回連続で射貫いた。
 それだけではない。
 構えて射るまでの時間が、一射につき一秒も掛かっていない程の速射で、命中精度も恐ろしく良い。
 更にリュートはパフォーマンスとして、的の足――太さは約二センチラミューラ程の太さが四本――を、三百メートルミューラ離れた距離でこれまた速射で的中させる。
 ギルド職員も、見学に来ていた冒険者達も、異常とも言える弓の腕前に驚愕し、開いた口が塞がらない状態となっていた。
 そして弓で射るリュートの姿はあまりにも凛々しく、矢を放つ度にまるでシルクの糸なのではないかと思わせる柔らかい髪が靡き、太陽が栗色の髪を輝かせる。

 絵に描いたような理想的過ぎる美少年が、目の前にいた。

 筋肉質なムサい男冒険者しか目にしない女冒険者達にとって、リュートの整った容姿に釘付けになってしまっていた。女冒険者達だけではない、ギルドの受付嬢達もうっとりとしており、完全に魅了されていた。
 そして男冒険者達からは非常に評価が高かった。
 容姿はぶっちゃけ気に食わない、だがそれに目を瞑れば弓の精度が恐ろしい程に良い。
 冒険者パーティとしては空を飛ぶ魔物や遠くにいる魔物を正確に仕留められるし、パーティの生存率もぐんと上がる。
 これはスカウトしなければと、思ったのだ。
 
 そして――

「これでよかっただか?」

 リュートから発せられる、美しすぎる容姿に合わない田舎者丸出しの訛り言葉に、全員がずっこけかける。

「は、はい! 申し分ない腕前ですね!」

「ありがとお。これでオラ、冒険者になれるけ?」

「勿論です! 優秀な新人さんが入ってきてくれて、私達冒険者ギルドもとても嬉しく思います!」

 ミリアリアは自分が精一杯作れる、男受け良さそうな笑顔をリュートに向けた。当然、リュートには全く意味がない。
 逆に、

「そうか、それならよかっただよ!」

 リュートの嬉しそうな笑顔で反撃され、ミリアリアはノックアウトされて気絶しそうになる。
 だがミリアリアも流石はプロの受付嬢、何とか持ち直してリュートを受付まで案内する。
 そこでリュートに、石で出来たネックレスのような物と、不思議な板に文字が刻まれた物が渡される。

「こちらのネックレスが冒険者の証である《タグ》です。刻まれている文字はリュートさんの名前ですね。そしてこの薄い板が冒険者の免許証となっています。これら二つを常備する事で、初めて冒険者と名乗れます。無くした場合は再発行に金貨五十枚を頂きますので、ご注意くださいね?」

 つまり、五万ペイ掛かるとの事。
 五万ペイは新人冒険者で稼ぐには、相当頑張らないといけない金額だ。
 リュートは大事に免許証を懐にしまい、石で出来たタグを首に付けた。

 今この時点で、リュートは冒険者となった。

 王国兵士になるまでの間、外の世界の事をしっかりと学び、学も同時に身に付けて、そして王国兵士の試験に挑む。
 冒険者は通過点に過ぎない。
 が、手を抜くつもりはない。
 冒険者になったからには《ステイタス》なしでの最上位である金等級を目指すつもりでいる。
 お金もがっつり貯めて生活の基盤も整えよう。
 最初は宿頼りになるが、いつかは自分の家を持とう。
 リュートはざっくばらんではあるが、直近の予定を組み立てていた。
 すると、リュートを取り囲むように、沢山の冒険者がやってきた。

「やぁ、パーティを探しているなら俺達の所に来ないか?」

「いやいや、こんな奴の所より俺達の方が待遇良いぜ! まるで実家のような安心感がするパーティだって評判なんだ!」

「嘘つけ! 俺達の所は歩合制だが、あんたの腕ならめっちゃくちゃ稼げるだろう! どうだ、思う存分俺の所で腕を振るってくれないか!?」

「歩合制とか阿呆か!? こちらはちゃんと均等に報酬を約束する! 教育制度もばっちりだぜ!?」

「ぉ、ぉぅふ」

 あまりにも凄い勢いに、リュートの口から変な言葉が漏れてしまった。
 どうやら自分をパーティに誘いたいらしい。

「み、ミリアリア。オラ、最初は一人でやりてぇんだが、それってええんか?」

「……正直最初から単独はいけません! しっかりパーティを組んで活動してください!」

「……わかっただよ」

 リュートは皆と話してどのパーティに入るかを決める事にした。
 大勢の冒険者を引き連れて、ギルド内部にある椅子に座って話を聞く事にしたのだった。

「……ねぇ、ミリアリア。何でパーティ結成を無理矢理勧めたのよ」

 リュートが去った後、同僚の受付嬢が耳打ちでミリアリアに訪ねてきた。

「……だって、単独だと死亡率上がっちゃうじゃない。私、リュートさんには死んでほしくないもの」

「あんた、めっちゃ私情挟みまくってんじゃん……。ギルド長にばれたらやばいわよ?」

「わかってる……。でも、死んでほしくないんだもん」

「……だめだこりゃ、私以上に彼にお熱だわ」

 絶対後で痛い目を見るだろうなと、同僚の受付嬢は確信をする。
 しかしミリアリアの気持ちはわからんでもない。
 何故なら、ギルドの仕事は好待遇だが非常に忙しく、出会いなんていかつい容姿ばかりの冒険者のみ。
 良い年頃である自分達にとって、リュートは天から舞い降りてきた天使にも等しい存在なのだ。
 それなりに恋愛経験豊富な同僚の受付嬢でも、容姿だけで心を鷲掴みされてしまったのだ、ミリアリアがぞっこんになってしまっても仕方ない。

(……まっ、しーらないっと)

 ミリアリアの行動に呆れつつ、自分の仕事をしながらたまにリュートの姿を見て、ほぅと思わずため息を漏らしたのだった。

「オラ、そんなにいっぺんに話し掛けられてもわからねぇだよ!! 順番、順番に話してけろ!!」

 一方リュートは、あまりの大人気さに非常に戸惑っていたのだった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...