田舎者弓使い、聖弓を狙う

ふぁいぶ

文字の大きさ
54 / 63
第二章 冒険者活動編

第54話 《黄金の道》メンバーの不穏な会話

しおりを挟む

《黄金の道》リーダーのラファエルは、不満を抱えつつメンバーが待つ宿への帰り道で溜息を付いていた。
 正直、《超越級》以外のパーティが悪い訳ではない、全てはこんな人選をした冒険者ギルドが悪いのだ。
 わかってはいる、わかっているのだが……。
 仕事を受けた以上、一時的とはいえ仲間となる。
 それ故に《ステイタス》を持っていない冒険者に安心して背中を任せられる訳がなく、不安が募る。
 今から依頼をキャンセルしてもいいかと思ったが、せっかく高くなった名声が下がる恐れがある。
 
 冒険者にとっては名声も非常に大事で、名声次第で指名依頼の増減が決まる。
 今回の依頼をキャンセルしたとなったら、大なり小なり評判にダメージが来るだろう。
 今、《黄金の道》は乗りに乗っている。
 この勢いを殺す訳にはいかない。

(しかし、他のメンバーに何て言われるかなぁ)

 きっと少なからず文句は言われるだろう。
 それもリーダーの仕事だと思うが、どのような罵詈雑言が来るかわからないから憂鬱で仕方ない。
 
「まっ、なるようになれ、だな」








「おいおいリーダー、そりゃないっしょ!」

《黄金の道》のアタッカーである、女性ながら筋肉質の《キンバリー》が、額に血管を浮かべて激怒していた。

「あたしらは《超越級》以下の奴らのお守りをしないといけねぇんかい!?」

 男性さながらの巨体と筋肉の量が関係しているのか定かではないが、キンバリーはガラス窓が振動しそうな程の声量でラファエルに怒りをぶつける。

「超常的存在はさぁ、《ステイタス》がないと確実に殺されるって言われる程の存在なんだよ!? それがなんだい!! 蓋を開けてみりゃ《超越級》は半分しかいないし、《ステイタス》を持ってないパーティが一つとソロ一人って、意味不明過ぎないかい!」

「キンバリー、少し声量を落としてくれ」

「無理に決まってるだろう!! ちょっとギルマスの顔面ぶっ叩いてくる!!」

「静まれ、キンバリー」

 怒れるキンバリーを静止させたのは、副リーダーの《ゴーシュ》だ。
 前髪を中央で左右に分けた長い金髪をしており、一目で理知的な性格をしているというのがわかる容姿をしていた。
 
「ラファエルも本当は断りたかったのだろう。だが、今の俺達は勢いがある。依頼を断って、勢いを殺したくないという苦渋の決断だったんだと思う」

「わかってるけどさぁ、副リーダー! あたしらだってタマ張るんだよ、文句の一つや二つ、言ってもいいだろう!?」

「文句を言っても現実は変わらん。なら、どうするかを話し合うのが今一番大事な事だろう」

「……くそっ」

「気持ちはわかる。俺達の代わりに怒ってくれて感謝する」

「おう」

 ゴーシュのおかげで、この場は話し合える雰囲気になった。
 が、メンバー全員から不満があるぞというオーラは駄々洩れである。
 一言余計な事を言ったら、下手すると不満が爆発して依頼どころじゃなくなるかもしれない。
 ラファエルは慎重に言葉を選んで発言する。

「とにかく、今回の討伐対象は《邪悪なる遊戯者》だぜ。きっと奴の事だ、性格が悪いダンジョンになっていると思う。出発は三日後の朝だから、各自入念に準備をしてくれ」

「……相当な曲者なんだろうな、きっと」

「ああゴーシュ、絶対にそうだろうよ」

「わかった。最大四日程ダンジョンアタックすると想定して準備を進めよう」

「頼んだぜ。何か質問はあるか?」

 ラファエルの問いに一人のメンバーが手を挙げる。
《黄金の道》のサポーターである《トリッシュ》だ。

「一応確認しておきたいのですが、《超越級》以外の冒険者がどのような人物だったかだけでも聞きたいです」

「まぁ、リーダーしかいかなったけど、オレの所感でいいなら言うぜ」

 ラファエル曰く、
竜槍穿りゅうそうせん》のハリーは、《ステイタス》を得たばかりでも力に振り回されておらず、非常に腕が立つ印象を受けた。
《ジャパニーズ》のショウマは流れ者の為、ユニークスキルに期待できる。
《鮮血の牙》のウォーバキンは、《ステイタス》を持っておらず、ラファエルの印象にはほとんど残っていない。
 そして《孤高の銀閃》と呼ばれるソロのリュート。
 彼の中では恐ろしく、不自然な程に印象が残っていない。

「不自然な位に印象が、残っていないのですか? どういう事です?」

 トリッシュが首を傾げて訊ねる。

「ウォーバキンは強者の雰囲気がなかったから印象がないんだけど、リュートにおいては不気味な程なんだ」

「……余計わかりませんが」

「何ていえばいいんだ? なんっつぅか、こう、その場に溶け込み過ぎていて、全く目立ってなかったんだ」

「え、何でですか」

「わかんねぇ。実際あいつは自己紹介以外は発言は一切してねぇ。存在感が薄すぎたんだ」

 ラファエルの感想に、いまいち納得が出来ない《黄金の道》メンバー。
 何故その時リュートの存在感が薄かったのかというと、《超越級》から値踏みされているような視線に不快感を感じ、森の中で気配を消している時のように周囲に溶け込み、存在感を消したのだった。
 それ故に、ラファエル含め、他の《超越級》にも印象が全く残っていなかった。

「とにかく、オレの見立てじゃ使えるのは《ステイタス》持ちだけだな」

「わかりました。ありがとうございます」

 この言葉を聞いて、トリッシュは頭を下げて礼をする。
 が、トリッシュの表情には少しの不安が現れていた。
 それを見逃さなかったのが、斥候で小柄な男の《バーツ》だ。
 バーツは一瞬考えるような仕草をした後、手を挙げる。

「バーツ、何かあるか?」

「ええ、あっしの場合は質問というより、提案なんですがね」

「提案?」

「ええ。恐らくですが、《ステイタス》を持ってない《鮮血の牙》と《孤高の銀閃》が足を引っ張るのは目に見えてますでしょう?」

「……だな」

「そんな奴等に構ってたら、あっしらだって無事じゃないでしょう」

「……」

「でしたら、いざと言う時は、足手纏いを囮に使いましょう」

「……てめぇ、自分で何言ってるのかわかってるのか?」

 バーツの提案に、ラファエルは驚愕した後に怒りの表情を向けた。

「ええ、わかってますとも。こんな非人道的な提案、リーダーも思う所はあるでしょう。ですが考えてみてくだせぇ、そいつらのせいであっしらの誰かが死ぬのだったら、まだ若手に退場してもらった方がいいじゃありませんか?」

「確かにオレ達の被害は少なくなるだろうよ。だが、オレ達の評判が落ちる行為だぞ」

「そこは上手くやるしかありません。あっしは聖人君子じゃございません、あっしが最優先で考えるのは自分の事とこのパーティの事。他がどうなろうが知ったこっちゃありませんぜ」

「……」

 非人道的な行為である事は間違いない。
 だが、そこまで交流が深い面子ではない他パーティがどうなろうが、正直言えば構いやしない。
 バーツは自身と《黄金の道》を優先した上での提案なのだろう。
 内心、悪くないと思ってしまっていたラファエルだった。
 そこにゴーシュが発言をする。

「ラファエル、俺はバーツの提案に賛成だ」

「おい、ゴーシュ」

「俺達は《超越級》になってから、かなり良い生活を送れるようになっている。だから、足手纏いのせいでこの生活が壊れるのは許せないし許されない」

 元々貧乏な集落で育ってここまでのし上がったゴーシュは、格下のしくじりで死ぬなんて真っ平御免だった。
 ならば、しくじって巻き込まれる前に切り捨ててしまえばいい。
 ゴーシュはそういう結論に至った。

「隊長はお前になったんだろう?」

「ああ、オレになったぜ」

「……なら、ある程度の裁量は出来る筈だ。キンバリーも、トリッシュも、どうやら同じ意見みたいだ」

 ゴーシュに言われてラファエルはメンバーの表情を確認する。
 すると、メンバー全員が同意しているような表情をしている。

(ちっ、残るはオレ、か)

 ラファエルは一度溜息を付いた後、メンバーに宣言する。

「よし、俺達 《黄金の道》は、俺達の身を最優先として行動する!」

「……了解した」

 ラファエルは「格下を囮にする」と明言するのは避けた。
 だが、この発言は実質格下を囮にするとほぼ同じ意味でもあった。
 地獄の片道切符を購入してしまったような気分になったが、他の連中より自分のパーティメンバーの方が大事だ。
 
(俺達は絶対、何が何でも生き残ってやる)

 ラファエルは、そう決意したのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

霊力ゼロの陰陽師見習い

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...