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第十六話 初恋エンゲージ!
しおりを挟む「川原さん、今日も綺麗だなぁ」
「相変わらずのクールビューティーだ。あぁ、美しい」
「三年の梶原先輩に迫られたんですって」
「何か誘っちゃうような行動を取ったのよ、きっと。絶対男慣れしてそうだもん」
「理想高いのかなぁ。梶原先輩、結構イケメンなのに」
私は学校では友達が全くいない。
というか、今までまともな友達は出来た事がない。
友達になりそうな事はあったんだけど、男性絡みで結局嫌われてしまったり……。
私は自分の容姿を好きだと思った事がないの。
男性からは迫られて来るし、女の子は影で色々言っているし。
今耳に入った言葉だって、私とろくに話した事がないのに勝手にレッテルを貼ってくる。
容姿で得をした思いをした記憶が、私には一切ないの。
現在はお昼休み。
私は教室の自分の席で、静かに自分で作ったお弁当を食べている。
玲音くんの為に作ったお弁当と一緒に、きまぐれで自分のも用意したの。
うん、美味しく出来ている。
指とか切っちゃったり火傷しちゃったりしたけど、頑張った甲斐があったって事だよね。
玲音くん、お弁当食べてくれてるかなぁ。
高校生である私はすっかり給食の習慣がなくなっていて、玲音くんも給食がないものだと思って作っちゃったんだよね。
玲音くんは大人びているけど、中学一年生だったのを失念していた。
お弁当を渡した時に気が付いて落ち込んじゃったけど、玲音くんが嬉しそうにお弁当を受け取ってくれたの。
あんなに嬉しそうな表情をしてくれて、私もすごく嬉しくなったの。
気持ちは上機嫌なんだけど、学校では無表情を貫いている。
経験上笑顔になるだけで「俺を見て微笑んでくれた」とか、訳のわからない超理論を言ってくる。
本当に男性は面倒なだけなの。
玲音くんとそのお友達の田中くんだったかな? この二人は違うって確信している。
玲音くんは体を張ってまで私を助けてくれた。今までそんな男性なんていなかった。
お父さんを除けば、玲音くんだけだったの。
素敵だったなぁ、玲音くん。
おっと、一瞬表情が緩みそうになっちゃった。
無表情無表情。
他の人に絡まれたくないから、無表情!
すると、私のスマホが震えた。
メッセージを受信したんだと思うんだけど、誰だろう。
《REO》
玲音くんだ!
私はお箸を置いて、速攻でメッセージを開く。
『美味かった、マジでありがとう!』
その文面の後に、画像が送られてきた。
空のお弁当箱を玲音くんの顔近くで手に持って、満面の笑みを浮かべている玲音くんの写真だった。
ああ、これはダメだ。
無表情を貫いてきているのに、こんなの嬉しくてにやけちゃうよ。
もういいや、面倒臭くなったから今は表情を意識しなくていいや。
ああ、玲音くんカッコ可愛いなぁ!
それにお弁当食べてくれて嬉しいなぁ!
私は嬉しい気持ちで心が弾んでいる状態で返信する。
『キレイに食べてくれて嬉しいな♡』
これは紛れもない本心。
するとすぐに既読が付いて返信も速攻で来た。
『だって本当に美味かったから! 毎日食べたい位!』
そんなになんだ。
玲音くんは給食があるから毎日は出来ないけど、また作ってあげたいなって思っちゃうな。
本当、玲音くんは素敵だなぁ。
玲音くんに対する好感度が、常に右肩上がりの状態なの。
それにずっと胸がドキドキしているし、こうやってメッセージしているだけでも楽しいし嬉しい。
初めての感覚だから戸惑っているけど、新鮮で楽しい気持ちでもある。
そういえば、周りが何かざわついている気がする。
どうしたんだろう?
視線を上げて周りを見渡すと、教室にいたクラスメイト全員が私を見ている。
これ、どういう状況なんだろう?
「か、川原さんが、笑った……?」
「俺、初めて見たんだけど」
「すっごく可愛かった……」
「どうしよう、同性なのに胸が苦しくなったの」
一部不穏な声が女の子から聞こえたような……。
とにかく、私がにやけたから起きてしまった騒ぎなんだろうな。
騒ぎになっちゃうかぁ。でも確かにこの高校に来てから一回も皆の前で笑わなかったし、クラスメイトからしたらちょっとした事件なのかもしれない。
とりあえず、お弁当を食べちゃおうと思った瞬間、誰かから声をかけられた。
「えっと、川原さん」
声の主は女の子だった。
男性じゃない事にほっとしつつ、視線を向ける。
「……何でしょう?」
「えっとね、川原さんがスマホ見て笑顔になってたから、気になって声掛けちゃった。あはは……」
そ、そうなんだ。
あまりにもびっくりして私が固まっていると、女の子の背後にいるもう一人の女の子が畳み掛けるように話し掛けてきた。
「私、ビビッて来たの! 川原さん、彼氏と連絡取ってたでしょ!」
『彼氏!?』
もう一人の女の子の言葉驚いて復唱しちゃったけど、同時に男性も私と同じタイミングで復唱した。
違う、玲音くんは私の彼氏じゃない!
彼氏ならいいなって思うけど、そうじゃないの!
とにかく上手く言葉に出来なかったから、首を横に振って否定した。
「ん~、違ったかぁ。私の勘、結構当たるんだけどな」
「いや、別の可能性があるじゃない?」
「別の可能性? ……ああ、なるへそ!」
なに、なに?
何で私、こんなに詮索されてるんだろう?
「好きな人とメッセしてたんだ♪」
好きな人。
その言葉が、自然と受け入れられた。
そっか、やっぱり私は玲音くんの事が好きなんだ。
昨日玲音くんに体を張って助けられただけなのに、それだけで好きになっちゃったんだ。
玲音くんの事を思い出す。
途端に心拍数が跳ね上がる。
私は思っていた以上に、単純な女だったんだなぁ。
でも、玲音くんの事を好きになれて嬉しいと思っている私がいる。
これが恋なんだね、きっと。
「うん。私の大好きな男の子だよ!」
私は羞恥心もなく、断言した。
これをきっかけで、興味を持った他の女の子も加わり、私を含めた五人グループでお昼休み中は恋バナをした。
他の子も好きな人がいるらしく、ただただお互いに出会いを自慢し合った。
やっぱり玲音くんは相当格好良いらしく、女の子達から滅茶苦茶羨ましがられた。
ちょっと鼻が高くなったのは内緒。
玲音くんがきっかけになったけど、私のメッセージアプリには、四人の女の子の友達が登録される事になった。
そして初めてグループにも誘ってもらった。
名前は《乙女同盟》。
恋の相談や愚痴等を言い合うグループになる予定みたい。
初めての経験だから、とても楽しみだ。
何か玲音くんに出会って、急に世界が変わった気がする。
玲音くんのおかげじゃないかもしれないけど、ありがとうね、玲音くん♡
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