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消えた手紙③
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新聞に軽く目を通しながら221Bの部屋に戻った私は、インバネスコートに鹿撃ち帽を身に付けた外出着姿のシャーロットの姿を見る事になった。
「シャーロット、外出するの?」
「ええ、犯人候補の調査に行くわ」
颯爽と部屋を出ようとするシャーロット。
しかし、先ほど買った新聞の文字が目に入った私はシャーロットを呼び止めなけれはならなかった。
「シャーロット、貴女が先ほど候補に上げた内の1人ってエドワルド・ルーカスだったわよね?」
「ええ、そうよ。今から会ってくるわ」
「もう会えないわよ」
私は新聞の号外を掲げて見せる。
貴族が購読する様な魔法の掛かった新聞ではなく、大量に印刷される大衆紙だ。
その紙面には大きな見出しで『ウエストミンスターで殺人』と書かれている。
「『ウエストミンスターで殺人。謎の人物による犯行、エドワルド・ルーカス氏独身34歳殺害される』って書いてあるわ」
「何ですって⁉︎」
「『遺体は自宅で発見された。執事は休みで外出中』」
「事件が起こる時はまるで判を押した様に何時もそうよ」
「『メイドは3階で寝ていて何も聞いていない』」
「それも何時もと同じ」
「『真夜中にウエストミンスター通りを巡回中の衛兵バレット氏が開け放たれた邸宅の扉を不審に思い室内に入り、心臓を突き刺され事切れたルーカス氏を発見』」
「見せて!」
シャーロットは私が差し出した新聞を受け取ると、目を皿の様にして、舐め回す様に読み始めた。
「『凶器は強化の魔法刻印が施された軍用短剣、室内に荒らされた様子はなく物取りの犯行ではないと考えられる』」
記事を読み上げながらもシャーロットの視線は新聞を上から下まで3回は往復していた。
「ジーン、これ、どう思う」
「偶然と考えるにはタイミングが良すぎるわね」
「同感よ。手紙の紛失事件とこの殺人事件には何か関連が有るに違いないわ」
「でも衛兵がもう全て調べているんじゃないかしら?」
「いいえ、衛兵が知っているのは殺人事件に関してだけよ。
例の手紙とこの事件を結ぶ付けて考えられるのは私達だけなの」
翌日、ウエストミンスター通りにやって来た私達は、未だに喧騒が残る邸宅の前に立っていた。
ちょうど現場となった邸宅の警備をしている衛兵とその上司らしき衛兵が話をしている所だった。
「しめた!レストレードがいるわ」
「あ、ちょっと!」
シャーロットは躊躇いなく上司の方の衛兵に声を掛けた。
「レストレード」
「ん?げっ⁉︎ホームズ嬢!」
「ご機嫌様、レストレード。ちょっと現場を見せて貰うわね」
そう軽く言って中に入ろうとするシャーロットを、レストレードと呼ばれた衛兵が慌てて止める。
「待て待て待て!ダメに決まっているだろう!此処はご令嬢が来る場所ではない!」
至極まっとうな事を言うその衛兵の名は聞いたことが有った。
「レストレードと言うと数々の難事件を解決して来たあのレストレード部隊長でしょうか?」
「それは…………君は?」
「申し遅れました。私はワトソン子爵家の娘、ジーン・H・ワトソンと申します」
「これはご丁寧に、私はグレナム・レストレード。王都衛兵隊第3部隊長を任されております」
やはりあの有名なレストレード部隊長の様だ。
彼の活躍は新聞で何度も読んだ事がある。
「彼女は私の相棒よ。一緒に入るわ」
「だからダメだと言っているだろ!」
「あらレストレード、貴方この前の密室殺人を見事解き明かした事で表彰されたそうね」
「…………そ、そうだな」
「今度第2部隊長に昇進すると聞いたわ。おめでとう」
「あ、ああ、ありがとう」
「金一封も貰ったとか」
「………………少しの間だけだぞ」
そう言うとレストレードは渋々通してくれた。
どうやら彼の活躍の陰には変わり者の伯爵令嬢の影が有った様だ。
部屋の中はすでに衛兵が調べ尽くした後の様で、遺体はモルグに運ばれており、血痕のみが生々しく惨劇の跡を残していた。
「シャーロット、外出するの?」
「ええ、犯人候補の調査に行くわ」
颯爽と部屋を出ようとするシャーロット。
しかし、先ほど買った新聞の文字が目に入った私はシャーロットを呼び止めなけれはならなかった。
「シャーロット、貴女が先ほど候補に上げた内の1人ってエドワルド・ルーカスだったわよね?」
「ええ、そうよ。今から会ってくるわ」
「もう会えないわよ」
私は新聞の号外を掲げて見せる。
貴族が購読する様な魔法の掛かった新聞ではなく、大量に印刷される大衆紙だ。
その紙面には大きな見出しで『ウエストミンスターで殺人』と書かれている。
「『ウエストミンスターで殺人。謎の人物による犯行、エドワルド・ルーカス氏独身34歳殺害される』って書いてあるわ」
「何ですって⁉︎」
「『遺体は自宅で発見された。執事は休みで外出中』」
「事件が起こる時はまるで判を押した様に何時もそうよ」
「『メイドは3階で寝ていて何も聞いていない』」
「それも何時もと同じ」
「『真夜中にウエストミンスター通りを巡回中の衛兵バレット氏が開け放たれた邸宅の扉を不審に思い室内に入り、心臓を突き刺され事切れたルーカス氏を発見』」
「見せて!」
シャーロットは私が差し出した新聞を受け取ると、目を皿の様にして、舐め回す様に読み始めた。
「『凶器は強化の魔法刻印が施された軍用短剣、室内に荒らされた様子はなく物取りの犯行ではないと考えられる』」
記事を読み上げながらもシャーロットの視線は新聞を上から下まで3回は往復していた。
「ジーン、これ、どう思う」
「偶然と考えるにはタイミングが良すぎるわね」
「同感よ。手紙の紛失事件とこの殺人事件には何か関連が有るに違いないわ」
「でも衛兵がもう全て調べているんじゃないかしら?」
「いいえ、衛兵が知っているのは殺人事件に関してだけよ。
例の手紙とこの事件を結ぶ付けて考えられるのは私達だけなの」
翌日、ウエストミンスター通りにやって来た私達は、未だに喧騒が残る邸宅の前に立っていた。
ちょうど現場となった邸宅の警備をしている衛兵とその上司らしき衛兵が話をしている所だった。
「しめた!レストレードがいるわ」
「あ、ちょっと!」
シャーロットは躊躇いなく上司の方の衛兵に声を掛けた。
「レストレード」
「ん?げっ⁉︎ホームズ嬢!」
「ご機嫌様、レストレード。ちょっと現場を見せて貰うわね」
そう軽く言って中に入ろうとするシャーロットを、レストレードと呼ばれた衛兵が慌てて止める。
「待て待て待て!ダメに決まっているだろう!此処はご令嬢が来る場所ではない!」
至極まっとうな事を言うその衛兵の名は聞いたことが有った。
「レストレードと言うと数々の難事件を解決して来たあのレストレード部隊長でしょうか?」
「それは…………君は?」
「申し遅れました。私はワトソン子爵家の娘、ジーン・H・ワトソンと申します」
「これはご丁寧に、私はグレナム・レストレード。王都衛兵隊第3部隊長を任されております」
やはりあの有名なレストレード部隊長の様だ。
彼の活躍は新聞で何度も読んだ事がある。
「彼女は私の相棒よ。一緒に入るわ」
「だからダメだと言っているだろ!」
「あらレストレード、貴方この前の密室殺人を見事解き明かした事で表彰されたそうね」
「…………そ、そうだな」
「今度第2部隊長に昇進すると聞いたわ。おめでとう」
「あ、ああ、ありがとう」
「金一封も貰ったとか」
「………………少しの間だけだぞ」
そう言うとレストレードは渋々通してくれた。
どうやら彼の活躍の陰には変わり者の伯爵令嬢の影が有った様だ。
部屋の中はすでに衛兵が調べ尽くした後の様で、遺体はモルグに運ばれており、血痕のみが生々しく惨劇の跡を残していた。
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