36 / 66
迷宮都市の盾使い
ロニタスの幸運
しおりを挟む
その日、ロニタスはとても機嫌が良かった。
パーティメンバーが体調を崩し、少し長めの休みを取ることになったので、小遣い稼ぎにFランクダンジョンに1人で潜った時である。
初心者が潜るFランクダンジョンはCランク冒険者であるロニタスなら1人でも苦労する事なく最深部に到達し、往復する事ができる。
当然、大した稼ぎになる訳ではないが、今日、明日の酒代くらいの稼ぎにはなる。
そう思い、Fランクダンジョン【大地の裂け目】を探索していたのだが、ゴブリンやビックバット、一角兎などの雑魚を狩り、酒代にするには十分な額を稼いだので切り上げようとしたのだが、撤退中に、小石につまづくと言う熟練の冒険者にあるまじき失態を犯してしまったのである。
これが、普段、仲間と共に潜っているような上級ダンジョンであったなら命に関わるくらいの致命的なミスだ。
初心者用のダンジョンだと無意識の内に油断していたのだろう。
「くそ!」
ロニタスは、自らの愚かさに悪態を吐く。
いくら低ランクダンジョンとは言え、ここは常に命がかかっている場所なのだ。
気を引き締め、撤退しようとするロニタスの前の岩が少し動く。
「っ!」
命ある岩の類かと短剣を構えるが、どうやらそうではない。
岩が動き奥に小部屋が現れたのだ。
先ほどつまづいた時に手をついた壁がたまたま、小部屋に続く岩を動かすスイッチだったのだ。
その小部屋は、迷宮都市ダイダロスの冒険者として、長年活動し、当然この【大地の裂け目】にも何度も潜ったロニタスも知らない小部屋だった。
「マジかよ、こりゃぁ『新層』じゃねぇか⁉︎」
『新層』とは、ダンジョンが作り出した新しいダンジョンのことだ。
大きなダンジョンではある日、いきなり新たな階層が現れる事もあるそうだが、【大地の裂け目】くらいの小さなダンジョンでは、新しい部屋が出来るの程度だ。
なぜ、突然新たな階層や部屋が増えるのか、何百年も昔から学者が調べていたのだが、とうとう100年ほど前に大賢者イナミによって解明された。
まず、ダンジョンは2つの種類に分けられる。
1つは古代の遺跡に魔物が住み着きダンジョンと呼ばれるようになったもので、このダンジョンには、『新層』が現れる事はない。
もう1つ、『新層』が現れるダンジョンはなんと、『ダンジョン』と言う魔物なのだと言う。
ダンジョンは体内に魔物を集め、その魔物を倒しに来た人間や人間に、倒された魔物を養分として成長する。
その成長したものが『新層』なのだ。
そして、ダンジョンは、体内で死んだ冒険者などの装備などを宝箱にいれ、人間を誘い込む餌として体内に配置することがある。
そして、ダンジョンの体内で高濃度の魔力を浴びた装備は稀にマジックアイテムに変化する場合がある。
そして、そんな希少なアイテムの多くは新層に配置されるのだ。
長年、ダンジョンに挑んで来たロニタスだが、新層に出くわしたのは初めてだ。
新層が出現してと言う情報だけでもギルドが買い取ってくれる。
こんな一部屋だけの小さな新層の情報であろうとも、一晩の酒代くらいにはなる。
ロニタスは慎重に小部屋にはいる。
5メートル四方くらいの小さな部屋だが、奥には宝箱がある。
当然手付かずだ。
低ランクダンジョンなので、金銀財宝などは期待出来ないが、今晩の酒が、いつもの安酒から、高価な蜂蜜酒になるくらいは期待してもいいはずだ。
罠の類がないか慎重に宝箱を調べる。
特に、罠のような物は無いようだ。
意を決して宝箱をあける。
鍵など掛かっておらす、あっさりと口を開けた宝箱には一本の短剣が入っていた。
もう一度罠がないかを確認したロニタスは短剣を手に取る。
鑑定を使えないロニタスだが、長年の経験から大体の価値を測る。
短剣の材質は鉱石系の魔物の攻殻だと思う。
華美な装飾は無いが、品質はかなり良さそうだ。
ロニタスに口角が無意識の内に上がって行く。
どうやら蜂蜜酒での晩酌は今日だけでなく、数日続きそうだ。
ギルドで鑑定して貰った短剣はアイアンタートルの攻殻を使った短剣だったようだ。
マジックアイテムでは無かったが、上級品の逸品であり、ロニタスは小遣いと言うには多すぎる程の金額を手にする事が出来た。
その為、ロニタスは大変機嫌が良く、行きつけである土竜の巣穴亭の1階の食堂兼酒場で、パーティメンバーの1人、ロンダと共に蜂蜜酒を煽っていた。
「しかし、新層とはな、羨ましいぞロニタス」
「はっはっは、休みにもダンジョンに潜る勤勉な冒険者だからな俺は。
僻むなよ、こうやって幸運を分けてやってんだから」
「へへ~、ご馳になります」
「「はっはっは」」
ロニタスとロンダが楽しく酒を呑んでいると酒場の入り口から奇妙な奴が入って来た。
そいつは全身鎧を着込み、背中に大楯を、担ぎ、左手にカイトシールドを装備し、腰には刃の厚めのショートソードと2枚の盾を提げている。
重装備だ。
動きやすい革鎧を使う者が多い冒険者では、あまり見ない装備だ。
酒で程よく緩んだロンダの頭には疑問ばかりが浮かぶ。
「何だ、あいつ?」
「ん?…………ああ、盾使いか」
「知り合いか?」
「いいや、話したことはないよ。
この宿に泊まっている冒険者でいくつもの盾を装備している変わり者だ」
「ふーん、変わった奴もいるものだな」
「全くだ」
「「はっはっは」」
後にこの盾使いとロニタスは大きく関わる事になるのだが、この時は蜂蜜酒を味わうのが忙しく、ロニタスは盾使いの事などすぐに忘れてしまうのだった。
パーティメンバーが体調を崩し、少し長めの休みを取ることになったので、小遣い稼ぎにFランクダンジョンに1人で潜った時である。
初心者が潜るFランクダンジョンはCランク冒険者であるロニタスなら1人でも苦労する事なく最深部に到達し、往復する事ができる。
当然、大した稼ぎになる訳ではないが、今日、明日の酒代くらいの稼ぎにはなる。
そう思い、Fランクダンジョン【大地の裂け目】を探索していたのだが、ゴブリンやビックバット、一角兎などの雑魚を狩り、酒代にするには十分な額を稼いだので切り上げようとしたのだが、撤退中に、小石につまづくと言う熟練の冒険者にあるまじき失態を犯してしまったのである。
これが、普段、仲間と共に潜っているような上級ダンジョンであったなら命に関わるくらいの致命的なミスだ。
初心者用のダンジョンだと無意識の内に油断していたのだろう。
「くそ!」
ロニタスは、自らの愚かさに悪態を吐く。
いくら低ランクダンジョンとは言え、ここは常に命がかかっている場所なのだ。
気を引き締め、撤退しようとするロニタスの前の岩が少し動く。
「っ!」
命ある岩の類かと短剣を構えるが、どうやらそうではない。
岩が動き奥に小部屋が現れたのだ。
先ほどつまづいた時に手をついた壁がたまたま、小部屋に続く岩を動かすスイッチだったのだ。
その小部屋は、迷宮都市ダイダロスの冒険者として、長年活動し、当然この【大地の裂け目】にも何度も潜ったロニタスも知らない小部屋だった。
「マジかよ、こりゃぁ『新層』じゃねぇか⁉︎」
『新層』とは、ダンジョンが作り出した新しいダンジョンのことだ。
大きなダンジョンではある日、いきなり新たな階層が現れる事もあるそうだが、【大地の裂け目】くらいの小さなダンジョンでは、新しい部屋が出来るの程度だ。
なぜ、突然新たな階層や部屋が増えるのか、何百年も昔から学者が調べていたのだが、とうとう100年ほど前に大賢者イナミによって解明された。
まず、ダンジョンは2つの種類に分けられる。
1つは古代の遺跡に魔物が住み着きダンジョンと呼ばれるようになったもので、このダンジョンには、『新層』が現れる事はない。
もう1つ、『新層』が現れるダンジョンはなんと、『ダンジョン』と言う魔物なのだと言う。
ダンジョンは体内に魔物を集め、その魔物を倒しに来た人間や人間に、倒された魔物を養分として成長する。
その成長したものが『新層』なのだ。
そして、ダンジョンは、体内で死んだ冒険者などの装備などを宝箱にいれ、人間を誘い込む餌として体内に配置することがある。
そして、ダンジョンの体内で高濃度の魔力を浴びた装備は稀にマジックアイテムに変化する場合がある。
そして、そんな希少なアイテムの多くは新層に配置されるのだ。
長年、ダンジョンに挑んで来たロニタスだが、新層に出くわしたのは初めてだ。
新層が出現してと言う情報だけでもギルドが買い取ってくれる。
こんな一部屋だけの小さな新層の情報であろうとも、一晩の酒代くらいにはなる。
ロニタスは慎重に小部屋にはいる。
5メートル四方くらいの小さな部屋だが、奥には宝箱がある。
当然手付かずだ。
低ランクダンジョンなので、金銀財宝などは期待出来ないが、今晩の酒が、いつもの安酒から、高価な蜂蜜酒になるくらいは期待してもいいはずだ。
罠の類がないか慎重に宝箱を調べる。
特に、罠のような物は無いようだ。
意を決して宝箱をあける。
鍵など掛かっておらす、あっさりと口を開けた宝箱には一本の短剣が入っていた。
もう一度罠がないかを確認したロニタスは短剣を手に取る。
鑑定を使えないロニタスだが、長年の経験から大体の価値を測る。
短剣の材質は鉱石系の魔物の攻殻だと思う。
華美な装飾は無いが、品質はかなり良さそうだ。
ロニタスに口角が無意識の内に上がって行く。
どうやら蜂蜜酒での晩酌は今日だけでなく、数日続きそうだ。
ギルドで鑑定して貰った短剣はアイアンタートルの攻殻を使った短剣だったようだ。
マジックアイテムでは無かったが、上級品の逸品であり、ロニタスは小遣いと言うには多すぎる程の金額を手にする事が出来た。
その為、ロニタスは大変機嫌が良く、行きつけである土竜の巣穴亭の1階の食堂兼酒場で、パーティメンバーの1人、ロンダと共に蜂蜜酒を煽っていた。
「しかし、新層とはな、羨ましいぞロニタス」
「はっはっは、休みにもダンジョンに潜る勤勉な冒険者だからな俺は。
僻むなよ、こうやって幸運を分けてやってんだから」
「へへ~、ご馳になります」
「「はっはっは」」
ロニタスとロンダが楽しく酒を呑んでいると酒場の入り口から奇妙な奴が入って来た。
そいつは全身鎧を着込み、背中に大楯を、担ぎ、左手にカイトシールドを装備し、腰には刃の厚めのショートソードと2枚の盾を提げている。
重装備だ。
動きやすい革鎧を使う者が多い冒険者では、あまり見ない装備だ。
酒で程よく緩んだロンダの頭には疑問ばかりが浮かぶ。
「何だ、あいつ?」
「ん?…………ああ、盾使いか」
「知り合いか?」
「いいや、話したことはないよ。
この宿に泊まっている冒険者でいくつもの盾を装備している変わり者だ」
「ふーん、変わった奴もいるものだな」
「全くだ」
「「はっはっは」」
後にこの盾使いとロニタスは大きく関わる事になるのだが、この時は蜂蜜酒を味わうのが忙しく、ロニタスは盾使いの事などすぐに忘れてしまうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略
神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。
そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。
これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる