神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

文字の大きさ
261 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第2部 《精霊の紋章》

66話 反乱の兆し

しおりを挟む
  アルッキさんから新たな戦斧、ピリオドを受け取ったわたしはナミさん達に挨拶して、リーブン王国を後にしました。
  国境で態度の悪い兵士に入国を許可され、ヤナバル王国に戻って来ました。
  このまま、来た時と同じ様に真っ直ぐグリント帝国を目指しても良いのですが、せっかくなので少しだけ王都によってみる事にしました。
  カタンの街でガラッドさんから聞いた話では街中では兵士が好き放題やっている危険な場所なのだとか……
  自国の民を食い物にするとか、バカなんじゃないでしょうか?
  レジスタンスの噂もあるそうですし、遠くない内にこの国は崩壊すると思います。
  ちょっと見物したらすぐに帰りましょう。
  革命なんかに巻き込まれたくはありませんからね。
  眼下に見えるヤナバル王国の王都を観察していると、王都を囲む防壁のすぐ外で武装した男達に15歳くらいの少女が追われていました。 
  男達は少女を捕まえると仲間の男達の元に連れて行きます。
  男の腕の中で少女は暴れていますが鍛えられた男の腕力からは逃れる事ができません。
  仲間の男達の方には身体中に痣を作った男が捕まっています。

「お父さん!」

「頼む、娘には手を出さないでくれ!」

「「「ぎゃはっはっは」」」

  必死で頼み込む父親をみて、男達は笑い声を上げました。
  
「バカか? お前は俺達に逆らった。
  この国の衛兵である俺達にだ。
  つまり、この国の国王、リア様に反逆したってことだ。
  国家への反逆は重罪だぞ?
  家族も咎を受けるのは当然だ」

「そんな、あんた達が飲み食いした代金を払ってくれと言っただけじゃなか!」

「黙れ!」

  男が父親を殴りつけました。
  
「お前はそこで娘が犯されるのを大人しく見てろ」

「娘を犯し尽くして殺したあと、お前も後を追わせてやるよ」

「「「ぎゃはっはっは」」」

  す、すごいですね。
  言い掛かりなんてレベルではありませんよ。
  そこらへんのなんちゃって盗賊よりもよほど盗賊らしいです。
  わたしが驚愕していると、新たな人物が現れました。
  鍛えてはいる様ですがクズ共に比べると線の細い男と、筋骨隆々なおじさんです。

「おい、何をている?」

  線の細い男が尋ねるとクズ共は慌てて居住まいを正し、男に臣下の礼を取りました。

「これはマクベス様」

「こいつらは……その……国に対して反意がある様なので少々取り調べをしておりました」

「ほぅ、こんな場所でか?」

「ええ、まぁ、へへへ、どうですマクベス様も一発?
  乳臭いガキでは有りますが父親の前で犯るのはなかなか乙なものですよ?」

「「はっはっは」」

  クズ共は新たに現れた2人に親しげに話し掛けます。
  どうやらあの、線の細い男はクズ共のボスの様ですね。
  マクベスという名前には聞き覚えが有ります。
  たしかヤナバル王国の王族の名前だったはずです。
  とにかく、あの2人を助けましょう。
  最悪、国境を無視して他国に逃せば良いでしょう。
  2人くらいなら、オリオンに運んで貰えば楽勝です。
  わたしは、男達がマクベスとやらに近づき、親子と離れた時を見計らいオリオンから飛び降り、男達と親子の間に着地しました。

「「え⁉︎」」

「え⁉︎」

  マクベスと連れのおじさんが驚き、そしてわたしも驚きました。
  マクベスは一瞬で抜き放った剣を振るいクズ共の1人を斬り殺していたのです。
  また、筋肉おじさんもクズを1人殺しています。
   仲間割れでしょうか?

「君は……」

  マクベスが何かを言いかけた時、最後に残っていたクズがわたしに向かって駆け寄ってきました。
  クズはわたしの首にナイフを突き付けると怒鳴り声を上げます。
 
「ぅ、動くな!
  ど、どういう事だ!
  なんで、あいつらを殺したのですか!
  マクベス様!」

「落ち着け、その少女を離すんだ」

「い、嫌だ!
  何なんだあんた!
  何を考えていびゃ」

  男は最後まで言い切る事なく地面に転がります。
  わたしは男の胸から生えている短剣を回収するとゴポッと血を吐き出した男を邪魔にならない辺りまで蹴り飛ばしました。
  時折ひゅーひゅーと煩いですが、その内静かになるでしょう。

  わたしは親子を庇いながらナイフを構えます。
  すると向こうも筋肉おじさんがマクベスを庇う様に立ち、剣を構えました。

「まて、マグタフ!
  剣を納めろ」

「しかし、若!」

「構わん、彼女がその気なら俺達ではあがらう事も出来んだろう」

  筋肉おじさん改めマグタフはマクベスの言葉に従い剣を納めました。
  相手が納めたのですからわたしが構えているのも礼を失しますね。
  ナイフを懐に戻します。

「初めまして、お嬢さん。
  俺はマクベス、この国の第3王子だ」

「やはり、貴方が女を片っ端から手篭めにして行くと言う噂のクズ王子でしたか。
  わたしはユウと言います
  何処にでも居る普通の女の子です」

「ははは、何処にでも居る普通の女の子は一応鍛えている兵士を一撃で殺せるはずがないよ」

「普通ですよ普通、普通の何処にでも居る女の子で普通のAランク冒険者です。
  それで、これは何の真似ですか?」
  
  わたしが何故手下を殺したのかを問うと、マクベスはわたしの後ろで戸惑って居る2人にチラリと視線を送ると答えを口にします。

「あの2人を助けるためさ。
  俺はレジスタンスのリーダーだからな」
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

処理中です...