神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

90話 旅立ちとわたし

  無骨な辺境伯邸に着いたわたしは、シルバさんに連れられて、応接室へと通されます。
  今回は待たされる事は有りません。
  シルバさんがドアをノックして、わたしの到着を告げます。

「ユウ様がお越しになりました」

「入ってくれ」

「失礼します」

  シルバさんがドアを開けてくれたので中に入ります。
  部屋にはフレイド様とミッシェル様、そして、わたしの姿を見て驚いているラクガン子爵の姿があった。
  わたしは勧められるままに椅子に腰を下ろす。

「お久しぶりです、フレイド様」

  取り敢えず屋敷の主人であるフレイド様に挨拶は必須です。
  
「ユウ殿、急に呼び出して済まない」

「いえ、お気になさらずに。
  急ぎの依頼があるとお聞きしましたが?」

「うむ、実はこちらのラクガン子爵がユウ殿に調薬を頼みたいそうなのだ」

「そうでしたか。
  こんにちは、昨日ぶりですね、ラクガン子爵様」

「あ、え? き、君が薬師殿だったのか?」

「はい、そうですよ」

「なんだ? ユウ殿はラクガン子爵と顔見知りだったのか?」

「ガストの街まで、数日だけ、護衛したのですよ」

「ああ、ラクガン子爵が言っていた強い冒険者とはユウ殿だったのか」

「ふふふ、ユウ様が一緒なら道中は安全だったのでしょうね」

「え、えぇ、奥方殿、ユウ殿は辺境の強力な魔物も物ともしない戦いっぷりでした。
  優秀な冒険者だとは思っていましたが、まさか薬師とは……」

「ははは、それで、調薬の依頼と伺いましたが、どの様な薬が欲しいのですか?」

「実は私の息子がオーガ熱に掛かってしまったのだ」

「オーガ熱…………守護者の雫ですか」

「そうだ! 調合は可能だろうか?」

「調合は出来ますが、材料の中にこの辺りでは入手が難しい物が含まれています。
  少し時間がかかりますよ?」

「材料なら我が領地で集めている。
  私がここまで旅をしている間に集める様に指示してきた。
  だからユウ殿、ミルガンの街まで来て頂きたい」

「ミルガンの街ですか…………遠いのですか?」

「この街から馬車で1カ月と言った所でごさいます」

  遠いですね。
  正直めんどくさいです。
  わたしのめんどくさい雰囲気を感じ取ったのかラクガン子爵が机にぶつかる程の勢いで頭を下げる。

「頼む、ユウ殿。
  どうか息子を治療してやって欲しい!」

「う~ん」

  わたしがどうするか考えていると、シルバさんが地図を持って来てくれた。
  そして、地図の端っこの方を指で示す。

「ここがガストの街、そして、ここがミルガンの街でございます。
  ユウ様のオリオンで向かえばそこまでの距離ではないかと」

  確かにミルガンの街からガストの街までは、大きな山や森があり、それを回り込む様に街道が通っている。
  空を飛び、直線で向かえば数日で着きそうです。
  しかし、問題は別にありました。
  わたしはシルバさんがミルガンの街だと示した場所をガン見します。
  この位置はまさか…………

「もしかして、ミルガンの街は港街なのですか?」

「ん? ああ、そうだ。
  私が住むミルガンの街は海に面した美しい街だ。
  交易などは細々としたもので、レブリック公爵領などとは比べものにならないくらい小さな規模だが、大きな漁港があり、新鮮な海の幸が食べられる」

「行きましょう!」

「本当か⁉︎」

「はい、是非」

「なんだ? ユウ殿は魚が好きだったのか?」

「私の故郷の大和は島国たったので、魚はよく食べていました。
  この国に来てからは、川魚しか食べていないですから」

「この辺りは内陸部で海はありませんからね。
  ユウ様も故郷の味が恋しいのでしょう」

「ミルガンの街に着いたら最高の魚料理をお出ししましょう。
  直ぐに馬車の手配をします」

「あ、待ってください」

  私は席を立とうとしたラクガン子爵を留めました。
  魚の為とは言え、馬車でノロノロと1カ月も旅をするつもりは有りません。

「移動はわたしにお任せください」

「ユウ殿に? そういえば先ほど執事殿がオリオンならば早く着くと言っていたが?」

「はい、ラクガン子爵様、オリオンは私の従魔です」

「おお、そうか!
  魔物ならば馬より速く走れるモノもいるからな」

「いえ、オリオンは飛びますよ?」

「飛ぶ?」

「はい、空を」

「その従魔は一体?」

「オリオンはサンダーバードです」

  ラクガン子爵は驚きの表情のまま固まってしまいました。

  そして、翌日、ラクガン子爵と供の騎士3人を乗せて(御者は護衛を雇って馬車に乗って帰る事になった)わたしは港街に向かってたびだったのでした。
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