奥様は大剣豪

はぐれメタボ

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奥様は準備中

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「ねぇタバサ、ダーリンはまだ帰って来ないのかしら?」

  サマンサは辺境伯邸のテラスで午後の紅茶を嗜みながらタバサに問い掛けた。
  
「そうですね。
  隣国が国境を越えて攻め込んできたのが3日前、旦那様が国境の砦に向かわれて敵兵を押し返したそうですが、隣国はそのまま国境付近に布陣しているそうですから、旦那様がご帰宅なされるのはまだ先になるかと思われます」

「そうよねぇ……」

  サマンサはティーカップを机に戻しダーリンが居る国境の砦方角を見つめる。
  その姿はまさに恋い焦がれる乙女の様だった。

「よし、タバサ。
  ダーリンに会いに戦場に行きましょう!」

  …………気のせいかも知れない。


  そうと決まればサマンサは直ぐに行動を始めた。
  武門の名家、モンゴメリー伯爵家に生まれ、武道と騎士道の中で育ったサマンサは、当然戦場についての教育も受けている。
  そんなサマンサがわざわざ戦場まで赴いておいてダーリンの顔を見て帰るだけで良しとするはずがなかった。


「奥様、ご要望の物が揃いました」

  翌日、サマンサの指示を受けてタバサが用意したのは大量の食材だった。
  小麦に卵、ナッツやドライフルーツ、向日葵や南京の種だ。
  サマンサはダーリンから好きに使いなさいと、お小遣いを貰っている。
  しかし、サマンサには宝石やドレスを買い漁る趣味は無い。
  辺境に領地を構えるが故に王都の様に連日連夜パーティやお茶会に参加する必要も無い。
  趣味と言えば庭で剣を振るったり戦術書を読むくらいであまりお金は使わなかったのだ。
  そのお金を使い買い集めた食材を持って屋敷の厨房に赴いた。

「奥様、手の空いている料理人と使用人を集めました」

  料理長がキビキビと報告する。
  その隙のない動きを見てサマンサの背後に控えていたタバサは満足げに頷いたのだが、サマンサからは見えない角度だった。

「ありがとうございます。
  では今から国境に布陣している兵士の皆様への差し入れを作りたいと思います。
  作るのはモンゴメリー伯爵家伝統の焼き菓子です。
  栄養価が高く、保存がきく為、モンゴメリー伯爵家では戦場での携行食としても使われている物です」

  そう、サマンサは砦に差し入れを持って行くのである。
  モンゴメリー伯爵家伝統のレシピだが、別に秘密と言うわけでもない。
  モンゴメリー伯爵領では少し裕福な平民くらいならオヤツや携行食として作ったりしている物だ。
  その後、焼き菓子の作り方を説明したサマンサは自らも加わって次々と焼き菓子を作って行った。

  更に翌日、馬に騎乗したサマンサは差し入れを満載した馬車を率いて意気揚々と出立するのだった。
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