奥様は大剣豪

はぐれメタボ

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奥様は統率者

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  朝食後、サマンサがダーリン成分を十分に補給し終え、砦から街の辺境伯邸へと戻ろうとしていた時だった。
  伝令兵が砦の指令室へ息を切らせて駆け込んで来た。

「伝令!伝令でございます!」

「何があった!」

「敵軍が一斉に攻撃を開始!既に戦端が開かれております!
  現在、騎士ローガン様の指揮で防戦中!」

「何だと!」

  さっきまで和やかな雰囲気だった指令室は騒然となった。
  こちらは大部隊、それもダーリン辺境伯が直率している。
  そこへまさかの正面からの攻撃を仕掛けてくるとは予想外だったのだ。
  ダーリン辺境伯の巧みで鋭い用兵は、隣国でも……いや、隣国だからこそ有名であった。
  その為、今までは隣国が攻め込んで来ても、しばらくの間ダーリンが前線で睨みを効かせて居れば、諦めて引き返していた。
  まさかダーリンが前線を離れた、一瞬の隙を突かれるとは、予想外のできごとだったのだ。

「一体なぜ奴らは攻め込んで来たんだ!」

「まさか、閣下が前線を離れた事に気付かれたのでしょうか?」

「バカな!敵の斥候には細心の注意を払ってあった筈だぞ!」

  ダーリンとて、不死身の化け物では無いのだから、前線を離れて休息をとる事だってある。
  その隙を突かせない様に、ダーリンの動向の詳細は秘匿され、砦に戻った事も一定以上の階級以外には伝えられていない。

「理由を論じるのは後だ!
  今は迎撃する事が肝要、直ぐに前線へ向かう!」

  ダーリンは腰に剣を吊るしながら矢継ぎ早に指示を出しす。

「サマンサ、敵の斥候の動きが不明瞭だ。
  斥候が領内に潜り込んで居るのかもしれない今、外を移動するのは危険だ。
  君には不便を掛けてしまうが、もう暫くこの砦に残って欲しい」

「はい、承知しました……御武運を」

  ダーリンは砦の守備兵を残し、予備の兵力を引き連れて前線の特に攻撃の激しい西側へと向かって出陣して行った。



  その日の夕食後、砦に新たな伝令が飛び込んで来た。

「伝令!伝令です!
  国境の東側が突破ぱされました!」

「何だと!」

   砦の指令室は騒然となる。
  東側は若い新兵が多かったとはいえ、小高い丘になっており、余程の戦力差でも無いと負けようが無い場所だ。

「不味いぞ!
  このままでは中央と西側の部隊が横撃を受ける事になる!」

「ど、どうすれば……」

「狼狽えるな!東側へ戦力を回すんだ!急げ!」

「辺境伯閣下が前線を立て直すまで、敵兵を押しとどめるんだ!
  部隊の指揮を……」

「皆様」

  慌ただしく指示が乱れ飛ぶ指令室に、大声では無いが、不思議とよく通る声が響き、あれほど騒然としていた指令室に静寂が訪れる。

「私が征きます」

  サマンサの言葉には、誰もが圧倒される程の迫力があった。
  そんな中、砦の責任者であるラリーがなんとか声を絞り出す。

「し、しかしサマンサ様、サマンサ様を危険に晒す訳には参りません。
  部隊の指揮は私が……」
    
「では部隊の指揮を執る貴女様を、私が指揮します。
  時間がありません。
  ラリー様、敵軍の数と、砦の守備兵の数は?」

「は、はい、敵東軍は約500、この砦の守備兵は150と言った所です」

  ラリーはつい背筋を正して報告してしまった。

「砦の守備は100居れば良いでしょう。
  馬術が達者な者を50用意して下さい」

「し、しかし……」

「時間がありません。
  10分で用意して下さい」

  サマンサは毅然と指示を出すとタバサの待つ部屋へと向かって行った。
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