10 / 11
騎士様は援軍
しおりを挟む
「今回の隣国の侵攻は、サマンサ達のお陰で何とか防ぐ事が出来たが、こちらの損害も大きくなってしまったな」
ようやく屋敷に戻って来たダーリンは、サマンサと共にテラスでお茶を飲みながら深いため息を吐いた。
兵はタダでは無い。
当然だ。
一人前の兵士を育成するには時間も金も掛かる。
人1人が生活できるだけの給金、訓練の道具や教官の賃金、行軍中の糧秣、支給する装備品など、兎に角金が掛かるのだ。
そうしてようやく一人前になった新兵の半数近くを殺されたのだ。
そして、兵士とは死んでそれで終わりでは無い。
死体を放置しては疫病の温床となってしまう為、回収し埋葬しなければならない。
更に戦死者の家族に見舞金も必要だ。
まだ若い新兵達の家族の気持ちを思うと気が重くなってしまう。
「兵の不足という事ですか?」
「ああ、負傷者も多く出たからな。
しかし、兵の育成には時間が掛かる。
しばらくは傭兵団でも雇うしか無いか……」
サマンサはポンと手を打つと、悩むダーリンに提案する。
「それでしたら、モンゴメリー伯爵家に協力を求めてはいかがでしょう?」
「成る程、それは名案だ。
早速、義父上に手紙を書くとしよう」
それから半月後、ダーリンとサマンサは辺境伯領の領都の前でモンゴメリー伯爵家からの援軍を出迎えていた。
整列した騎士団から1人の若い将が歩み出る。
「モーリス伯爵閣下の命により、騎兵100騎、歩兵500名を率いて参上致しました。
騎士アーサーと申します」
「おお、貴公が鬼神アーサーか!」
ダーリンは予想外の大者に驚きの声を上げる。
鬼神アーサー。
モンゴメリー伯爵家の精兵中の精兵の1人であり、既にいくつもの戦場を戦い抜いた猛者だ。
まだ24歳と若いが、その武勇はこの辺境の地まで聞こえている。
曰く、例え苦しい状況だろうとも恍惚の表情で剣を振るい、その身に数多の傷を受けようとも笑み浮かべる。
戦いと武勇を愛し、血と義を報じる鬼神……と言う噂だ。
「貴公程の手練れを送ってくれるとは……義父上には感謝せねばな」
ダーリンはアーサーとガッシリと握手を交わす。
「お久しぶりね、アーサー」
「おお、お嬢様。
お元気そうで何よりです!」
「ふふ、アーサーは変わっていないわね。
それと、もうお嬢様は止めてちょうだい」
「おっと、これは失礼しました。
サマンサ辺境伯夫人」
改まって慇懃に礼をとるアーサーにダーリンとサマンサは声を上げて笑った。
そこにタバサがやって来る。
「旦那様、奥様、兵舎の用意が整いました」
「ああ、済まないな。
サマンサ付きの君に雑務を頼んでしまって……」
「いえ、この程度大した事は有りません」
ダーリンとサマンサに軽く頭を下げるタバサに、アーサーが話を振る。
「久しぶりだな、タバサ殿」
「…………蛆虫の分際で人間様に馴れ馴れしく声を掛けないで下さいまし。
貴方と知り合いだと思われたら生きて行く事が出来ないではないですか」
「なぜに⁉︎」
ダーリンは思わず声が出てしまった。
辛辣すぎるタバサの言葉に驚きが隠せない。
それに遠方からわざわざ援軍に来てくれたアーサー殿に対してあまりにも礼を失した態度だ。
彼女の現在の主人として此処は注意しなければならないだろう。
ダーリンがタバサの態度を咎めようとした時、アーサーが口を開いた。
「ありがとうございます!」
「何を礼など言っているのですか?
頭沸いているのですか?
アルパカの方が貴方より数倍は賢いですよ?」
「ありがとうございます!」
アーサー殿は何故か少し顔を赤くし、息が荒くなっている。
「興奮しているのですか?
メイドに罵倒されて喜ぶなんて…………この変態!」
「あざっす!!」
アーサーは恍惚の笑みを浮かべながら礼を述べる。
「ふふふ、相変わらずタバサとアーサーは仲が良いのですね」
「…………………」
喉から出掛かった言葉を飲み込んだ。
最近はスルースキルがかなり高まって来ている気がするダーリンだった。
ようやく屋敷に戻って来たダーリンは、サマンサと共にテラスでお茶を飲みながら深いため息を吐いた。
兵はタダでは無い。
当然だ。
一人前の兵士を育成するには時間も金も掛かる。
人1人が生活できるだけの給金、訓練の道具や教官の賃金、行軍中の糧秣、支給する装備品など、兎に角金が掛かるのだ。
そうしてようやく一人前になった新兵の半数近くを殺されたのだ。
そして、兵士とは死んでそれで終わりでは無い。
死体を放置しては疫病の温床となってしまう為、回収し埋葬しなければならない。
更に戦死者の家族に見舞金も必要だ。
まだ若い新兵達の家族の気持ちを思うと気が重くなってしまう。
「兵の不足という事ですか?」
「ああ、負傷者も多く出たからな。
しかし、兵の育成には時間が掛かる。
しばらくは傭兵団でも雇うしか無いか……」
サマンサはポンと手を打つと、悩むダーリンに提案する。
「それでしたら、モンゴメリー伯爵家に協力を求めてはいかがでしょう?」
「成る程、それは名案だ。
早速、義父上に手紙を書くとしよう」
それから半月後、ダーリンとサマンサは辺境伯領の領都の前でモンゴメリー伯爵家からの援軍を出迎えていた。
整列した騎士団から1人の若い将が歩み出る。
「モーリス伯爵閣下の命により、騎兵100騎、歩兵500名を率いて参上致しました。
騎士アーサーと申します」
「おお、貴公が鬼神アーサーか!」
ダーリンは予想外の大者に驚きの声を上げる。
鬼神アーサー。
モンゴメリー伯爵家の精兵中の精兵の1人であり、既にいくつもの戦場を戦い抜いた猛者だ。
まだ24歳と若いが、その武勇はこの辺境の地まで聞こえている。
曰く、例え苦しい状況だろうとも恍惚の表情で剣を振るい、その身に数多の傷を受けようとも笑み浮かべる。
戦いと武勇を愛し、血と義を報じる鬼神……と言う噂だ。
「貴公程の手練れを送ってくれるとは……義父上には感謝せねばな」
ダーリンはアーサーとガッシリと握手を交わす。
「お久しぶりね、アーサー」
「おお、お嬢様。
お元気そうで何よりです!」
「ふふ、アーサーは変わっていないわね。
それと、もうお嬢様は止めてちょうだい」
「おっと、これは失礼しました。
サマンサ辺境伯夫人」
改まって慇懃に礼をとるアーサーにダーリンとサマンサは声を上げて笑った。
そこにタバサがやって来る。
「旦那様、奥様、兵舎の用意が整いました」
「ああ、済まないな。
サマンサ付きの君に雑務を頼んでしまって……」
「いえ、この程度大した事は有りません」
ダーリンとサマンサに軽く頭を下げるタバサに、アーサーが話を振る。
「久しぶりだな、タバサ殿」
「…………蛆虫の分際で人間様に馴れ馴れしく声を掛けないで下さいまし。
貴方と知り合いだと思われたら生きて行く事が出来ないではないですか」
「なぜに⁉︎」
ダーリンは思わず声が出てしまった。
辛辣すぎるタバサの言葉に驚きが隠せない。
それに遠方からわざわざ援軍に来てくれたアーサー殿に対してあまりにも礼を失した態度だ。
彼女の現在の主人として此処は注意しなければならないだろう。
ダーリンがタバサの態度を咎めようとした時、アーサーが口を開いた。
「ありがとうございます!」
「何を礼など言っているのですか?
頭沸いているのですか?
アルパカの方が貴方より数倍は賢いですよ?」
「ありがとうございます!」
アーサー殿は何故か少し顔を赤くし、息が荒くなっている。
「興奮しているのですか?
メイドに罵倒されて喜ぶなんて…………この変態!」
「あざっす!!」
アーサーは恍惚の笑みを浮かべながら礼を述べる。
「ふふふ、相変わらずタバサとアーサーは仲が良いのですね」
「…………………」
喉から出掛かった言葉を飲み込んだ。
最近はスルースキルがかなり高まって来ている気がするダーリンだった。
9
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる