奥様は大剣豪

はぐれメタボ

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貴族様は愚者

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  サマンサ達が敵軍を潰走させた頃、ダーリンもまた、敵軍を撤退させる事に成功していた。
  しかし、新兵を中心に構成された東側の部隊が大ダメージを受け、サマンサが少数の手勢を率いて迎撃に出たと報告されている。
  サマンサに怪我などは無かったと聞いてはいるが心配である。
  マクマーン砦へと帰還したダーリンはサマンサの無事をその目で確認し、胸を撫で下ろした。


  それから数日、砦にて隣国の動きに注視していたダーリンだったが、隣国が軍を引いた事で安堵の息を吐き出した。
  ダーリンが砦の外に出ると、ちょうどサマンサが戻って来た所だった。
  彼女は50名程の騎兵を率いて訓練を行っていた。
  何故だかはわからないが、この砦を任せていた騎士のラリーを筆頭に、東側の敵軍を迎撃した兵士達はサマンサを女神の如く信奉していた。
  また、何故かとても結束力が高まっていたので彼らを騎兵隊として編成する事にしたのだ。

「それではこれで訓練を終わります。
  しっかりと水分と休息を取って下さいね」

「「「「はい!サマンサ様!」」」」

  兵達は一糸乱れぬ動きで敬礼すると、馬小屋の方に向かって行った。

「お帰り、サマンサ」

「ただいま帰りましたわ、ダーリン」

  そう言うとサマンサが同行していたラリーに視線を送る。

「ほら、歩け!」

  ラリーは縄で拘束された男を連れていた。

「お前は……ポール⁉︎」

  その男はポール・リンデ、東側の新兵達の部隊の指揮を任せていた騎士だ。
  死体は見つからなかったが、戦死したか、敵軍の捕虜になった物と思っていた。
  ダーリンは正直この男が好きではなかった。
  ポールは悪い意味で貴族的な性格なのだ。
  しかし、リンデ侯爵家の4男で、リンデ侯爵から預けられたポールを無碍に扱う事は出来ず、仕方なく騎士の位に就けて、まず危険がないであろう東側の部隊長の役職を与えておいたのだ。
  
「閣下、この者が不正に国境を越えて隣国へ渡ろうとしていた為、捕縛致しました」

「……ほぅ」

  ダーリンの目が鋭く細められだ。

「ふん、俺にこの様な仕打ちを行うとは、覚悟はいいのだろうな辺境伯!」

「ポール殿、貴公は何故隣国へ渡ろうとしたのかお聞かせ頂きたい」

「貴様!辺境伯風情が侯爵家の俺に舐めた口を……」

「黙れ」

  ダーリンから向けられる殺気にポールは押し黙る。
  ダーリンが前線を離れた途端にタイミング良く隣国が攻め込んで来た。
  踏破し辛い東側に新兵が配置されていると言う情報。
  この状況で隣国へ渡ろうとするポールの行動で、ダーリンの中で全ての疑問が一本に繋がった。

「お前はこの国を隣国に売ったのだな」

「…………ふん!」

「お前のせいで何人の新兵が死んだと思っている?」

「平民の兵士など死ねば次の者を補充すれば良いだけだろうが!
  そんな事の為にこの俺に縄を掛けたと言うのか⁉︎」

「成る程…………36名だ」

「は?」

「36名の新兵が死んだ」

  ダーリンは剣を抜くと目にも止まらない程の速度で一閃する。

「ぎゃあ!」

  ポールの悲鳴を無視して更に一閃、ニ閃と剣を振る。
  そして、丁度36本の傷をポールの体に刻んだ後、ラリーに命じる。

「地下牢に繋いでおけ」

「は!」

  しかし、ポールは納得しない。

「なんだと!
  俺は侯爵家の人間だぞ!
  そんな事を父上が許すと思っているのか!
  この事を父上に報告する!
  貴様はもう終わりだ!」

  ダーリンは顔色1つ変える事なく告げる。

「ポール殿……ポール殿は部隊の指揮を任された誇りある騎士で有りますな」

「ふん、今更すり寄っても無駄だ!
  父上に頼んでこの辺境伯領を蹂躙してやる!」

「ポール殿……愛国心あふるゝポール殿。
  流石ですね。
  ポール殿は卑劣な敵軍を迎え撃つ為に自ら兵を率いて戦われた」

「辺境伯?何を言って……」

「ポール殿!
  ああ、

「は?」

「ポール殿はお御国の為に勇敢に戦い、名誉の戦死を遂げた。
  お父上もきっと貴方を誇りに思うでしょう」

「………………」

  ここでポールはようやくダーリンが何を言っているのかを理解した。
  つまり、ポールは騎士として隣国と戦い戦死したと言うのだ……表向きは。
  ポールが父に泣き付く事は出来ない。
  何故なら彼は既に死んでいるのだから。
  そう言う事だ。

「ま、待って下さい、辺境伯……」

「連れて行け」

  ポールを無視してダーリンはラリーに命じるのだった。
  
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